初心の趣

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廃駅の旅11 「鵜川駅」

能登町に突入した廃駅の旅、第11回目だ。

今回は能登町にある鵜川駅に行ってみた。

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わかりやすい旧鵜川駅

のと鉄道廃線を中心に廃駅を巡る個人的な旅もこれで11回目だ。

それまで、のと鉄道能登線穴水町の方から下ってきたが、前回で穴水町を抜けて今回から能登町へと入る。

その最初の駅が旧鵜川駅だ。

穴水町の方では秘境と呼ばれていたような駅だったり見つけるのに苦労したところも多かったけど、今回の鵜川駅はそれらと比べるとたいへん見つけやすい。

主要な道路を走っていると鵜川駅前なんて交差点があるくらいだ。

そんな鵜川駅の行き方をまず記したい。

 いきなり地図

グーグルマップに載っているくらいなので、スマホをナビ代わりにするだけで行けてしまう。

地図にもあるように、向かうなら国道249号線を走ることになる。

それがいちばんわかりやすい。

その国道249号線を穴水方面から珠洲方面へ向かって走っていると…

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跨道橋の跡が見えてくる

2本ある道路のうち写真左が国道249号線だ。

走っているとこの跨道橋跡と思われるものが見えてくるので、これを通り過ぎると目的地もすぐだ。

そのうち…

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こんな交差点を見かける

交差点の名前も「鵜川駅前」となっている。

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このように

少し手前にバス停もあるのだけど、そこも…

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「鵜川駅前」だ

視覚的に目的の駅が近くにあると教えてくれるのである。

実際、写真の交差点を左に曲がったところに旧駅もあるのだ。

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左に曲がって見える景色

突き当りに建物が見える。それが旧鵜川駅の駅舎である。

これほど迷わずにこれた駅は、これまでの旅の中では道の駅になっている「輪島」以外ではここが一番かと思う。

というのも、数年前に鵜川の「にわか祭」を見に行った際に、ここが臨時駐車場のようになっていたので、自分自身、一度来たことがあるのだ。

にわか祭を見に行ったときの記事はこちら

  

忘れられていそうで忘れていなさそうな廃駅

道の駅や喫茶店として再利用されていないと廃駅なんてものは忘れさられているようなところである。

今回の鵜川駅も一見してそんな雰囲気はあるものの、周りに住宅があるからか、また小学校もすぐ近くにあるからか完全に忘れさられているようなところでもない。

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交差点を曲がるとこんな看板がある

鵜川小学校も曲がった先にあるのだ。

実際に左折した道を歩いていると…

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右手に小学校が見えてくる

写真右側に写っているのは交番だ。

この通り、子どもたちも通れば警官も通る道なのである。

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そして見えてくる旧駅舎

ここが今回の目的の廃駅である旧鵜川駅だ。

だいぶ年季を感じさせるがブロックづくりの駅舎がしっかりと残っている。

写真右の方のほうには誰のかわからないけど停車中の車も確認できる。

祭のときにはこの駅舎の前が臨時駐車場の様になっていたこともあったし、よく車が停まっている印象がある。

というか、右隣にアパートのような住宅が建っているので、人や車の往来が普通にある場所だ、こうして停まっていても不思議でもない。

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こちらがその住宅

車も数台停まっている。

この住宅へ遊びに来た人が旧駅舎前に車を停めるなんてことも普通に行われているんじゃなかろうか。

駅舎そのものは古くなってどこかもの寂しい雰囲気を表面上醸しているが、こうして住宅もあり、学校も近くにあるので忘れ去られているような廃駅ではないのである。

 

旧鵜川駅を撮る

鵜川駅の旧駅舎に近寄ってみると、その窓ガラスにはステンドグラスのような雰囲気の絵の作品が飾られていた。

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こちらがそれ

雛人形的なものだったり、五月人形的なものだったり、白鳥だったり、マリリンモンローだったりいろいろだ。

どれも結構上手いので、大人が描いたようで、それでいて題材が子供向けなものが多いことから近くの小学生たちが描いたようにも見える。

いずれにせよ、こうして状態のいい作品が飾られていると、やっぱり忘れ去られている感じがしないものである。

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側面から中を覗き込んで見る

中には入れなかったので窓から撮ってみた。

革張りのソファやパテーションなんかが置かれている。

駅舎として使われていたころからこのままなのか、廃駅となってからいろいろと置かれるようになったのかちょっとわからない。

散乱しているものもなく、廃駅の中では比較的きれいに残されている方だと思う。

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後方から撮ると外観はだいぶ古さを感じさせる

中はきれいな方だと思うが、線路やホームがあった駅舎後方から見ると、急に廃駅感が増す。

撮影したのは11月なのだけど、ススキ等々が生え放題、伸び放題。それらをかき分けてホームまで行くことになる。

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このような状態(駅舎から左後方)

手前に物置、奥にホームがある。

柵などは残っているが線路は撤去されていた。

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こちらがホーム

雨風にさらされ続けているからかだいぶ劣化している。

屋根の一部は剥がれ落ちそうだし、ベンチも板が破損している。

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まだ座れなくもないが…

トタンの一部だろうか足元にいろいろと散乱していて廃墟感が駅舎内と比べても高い。

鉄柱も、こうしてみるとサビが多くて手刀で折れやしないかと、そんな変な心配もしてしまう。

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なんだこれは?

ベンチの背後にこんな看板も転がっていた。

「名所案内」とある。

久田船長の碑の場所や、桜木神社大杉の場所を記してあったようだ。

後で調べたことだけど、久田船長というのはロシアの貨物船と衝突した青函連絡船の船長だった方で、100名近い船員を救命ボートに乗せ、自身は船橋に体を縛り付けてSOSの汽笛を鳴らし続け、船と一緒に沈んでいった方なんだとか。

鵜川の菅原神社に碑があるそうだ。

看板は、この駅内に置かれていたと思われる案内板だが、いまではお役御免である。

このホーム、今では誰も使ってはいないし、立ち寄りもしないんだろうなと察せられる。

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ホームの先には小さな待合所のようなものも

ここからの眺めだと左の方に小さな待合所のようなものも見えた。

せっかくなのでそちらのほうにも近寄ってみた。

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近寄ってみたらこちらもかなりの廃れ様

ガラス割れております。

中を覗いてみると、待合所というより物置のような印象がある。下駄箱みたいな棚なんかが置かれていた。

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中の様子

除雪用のママさんダンプや壊れたバケツも。

能登町もなかなかの豪雪地帯だから冬の備えが駅にあっても何ら不思議ではない。

それにしても部屋の中にまで落ち葉が入っていたり、ここもずっと使われていないのがわかる。

 

感想

以上、旧鵜川駅の現在の様子だ。

側に小学校もあるし、住宅もあるし、駅舎を正面から見た限りでは建物が町の中に溶け込んで忘れ去られているような場所ではなかったが、一度その背後に回ってみると、線路があったところや旧ホームなどは誰も手入れも何もせず長年吹きさらしにあって随分と廃れていた。

正面がきれいなのに後ろがボロボロって『おぼっちゃまくん』の貧ぼっちゃまみたいな印象だ。

後ろの方ももっと町の生活に溶け込んでいるようならいいのになと思う反面、いやあの廃れ具合こそが廃駅だと思う自分もいる。

なんにせよ、その表裏、面白い。

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後で知ったことだけど左の方に池があったらしい

国鉄時代の駅員さんたちが仕事の合間に作ったという池があったらしい。

またこの廃駅にやって来たらその池の跡も確認したいものである。