鯉のぼりは羽はなくても空を舞う…
廃液の旅、17回目だ。
目印はうしつ荘の看板
のと鉄道の廃線を中心に使われなくなった駅、いわゆる「廃駅」を訪れる個人的な旅も今回で17回目だ。
現在、旧能登線を穴水方面から珠洲方面に向かっているところで、この17回目では能登町にある旧「羽根駅」に行ってきた。
羽根駅はそのとおり「ハネ」と読む。
能登町羽根地区にあり、前回の宇出津駅の次の駅になる。
行き方としては県道35号線を進むのが一番わかり易い。
県道沿いにあるわけではないものの県道近くにあるのだ。
ひとまず地図
能都内浦線こと県道35号線を進み、その途中で左に曲がって少し進んだ先にあるのが地図からもわかるだろう。
左折ポイントからそんなに離れておらず、その曲がり角から歩いていけるくらいの距離にある。
肝心のどこで曲がるかであるが、それも「羽根漁港」というバス停がその左折ポイントにあるので、まずはそのバス停を目指すと良い。
このようにバス停がある
「羽根漁港」の停留所だ。
漁港とあるように、海の側だ。
小さいながら待合室もある。
ただ、このバス停、穴水方面から向かっていると見えづらい。
この写真も珠洲方面側から撮っている。
待合室に隠れて「羽根漁港」の文字も運転しながらでは通り過ぎるまで見えないのだ。
穴水方面から向かっていると目印にするにはちょっと厳しいところがあった。
実際、自分も見逃して通り過ぎてしまっている。
この付近にはもっと目印になるものがあるので、それを写真で見せたい。
これだ
合宿なんかでよく利用される国民宿舎「能登うしつ荘」の看板だ。
看板の右に見える小屋みたいなのが羽根漁港バス停の待合室だ。
この大きな看板のためにバス停が見えづらかったわけなのだけど、この看板を目印にしてしまえばバス停なんかよりも目立ってわかりやすいかと思う。
その看板の下の方に「← 300m」と書かれてあり、写真でもわかるように左に入っていくちょっと坂になった道がある。
ここに入っていくと目的の羽根駅にたどり着けるのである。
坂を少し登ると右手に駐車場のようなところが見えてくる
坂道を更に進んで左カーブも進んでいくと国民宿舎「能登うしつ荘」の方に行ってしまうのだけど、その手前でこのように駐車場のような広場が見えてくる。
この画では分かりづらいが、ここが旧羽根駅だ。
近寄ってみるとこのような看板
「旧鉄道羽根駅周辺」と書かれてある。
海抜19メートルとちょっと高いところにあるからか、能登町指定津波避難場所となっていた。
さらにはこんな看板も
旧能登線を巡っていて能登町に入ってから各廃駅で目にしてきた「のと鉄道協力会」&「のと鉄道利用促進協議会」の看板だ。
この看板があるところ、そこは廃駅だ。
旧羽根駅のホーム
「のと鉄道協力会」&「のと鉄道利用促進協議会」の看板に近寄ってみると、その後方に駅のホームらしきものも見えた。
旧羽根駅はホームもちゃんと残っているのだ。
右に目を向けると待合室も
おそらく八重桜だと思われる木々に隠れて待合室もあった。
待合室は後ろ向いているし、木々に隠れていたりするし、そこが廃駅だって近寄って見るまで確信が持てない。
だって
こうですからね
この角度からプラットホームを見るとただの遊歩道に見えてしまう。
民家も近くにあるので、この敷地が誰か個人の駐車場かと思ったくらいだ。
ここからホームに入っていける
遠くから見るとホームへの入り口がわからなかったが、設置されている柵にはこのように隙間があって入っていけた。
出向いたのがGW中で、八重桜の花びらが足元にたくさん散っていた。
こちらが待合室
こうやって正面から見ることができるとようやく駅っぽい雰囲気が出てくる。
かなり年季が入っていてガタがきているのか窓には補強もされていた。
建物の足元が溝になっていて不安定なこともあるのか、鍵が閉まっていて中には入れなかった。
窓越しに中を覗く
照明なのか拡声器なのか、こんな形をしたものが窓際に置かれていた。
その脇のポーチのような入れ物の汚れっぷりを見ても、長年使われておらず、部屋に誰も入っていないというのがうかがえる。
ホーム自体は全体的に風情あり
待合室はだいぶ年季が入っているけど、まわりに八重桜が何本か植えられているからか、こうして角度を変えて見てみるとホーム自体はどこか風情がある。
また、ホームが真っ直ぐなのではなく少し湾曲しているのも、こちらの感性をくすぐるものがある。
だいたい真っ直ぐなので、こうしてすこし曲がっているプラットホームはちょっと珍しい。
少なくとも今まで目にした廃駅の中ではなかった気がする。
八重桜
だよね?
能登方面は桜の開花が遅いので季節的にそうかなと思っているのだが、間違っていたらごめんなさい。
自分、植物にはまだまだ疎い。
これが待合室なんかの上にあって木陰を作っていたりするからまた情緒が出てきているように思う。
この看板だってアンダー木陰
「夢運ぶ みんなの足だ のと鉄道」と、五七五のようで字余りに書かれたこの看板も木陰にあるからか、天気が良いと90年代の青春アニメのワンシーンのように見えてしまう時がある。
ちなみに端っこはこうなっている
ミラーも残っている。
線路は残っていないけれど、線路跡がまだ歩けそうな感じで残っているので、やはり遊歩道のように見えて仕方がない。
このホームの上も含めて散歩していると気持ちのいいところではないだろうか?
反対側の端っこはこんな感じ
草が茂りすぎていて、柵もあるし高さもあるしで、こちらは行き止まりのようになっている。
もっと先の方にはトンネル跡も見えたのだけど、さすがにそこへも行けそうになかった。
覗き込むとこんなものが
なんか芝刈り機のようなものが落っこちていた。
季節によっては草を刈っているのかもしれない。だとしたらその頃にはトンネルの方にも行けそうな気もした。
でも逆に、全部刈るのは面倒で無理なのでこうやって放置したという挫折の光景なのかもしれない、とも思った。
色々と想像できる放置っぷりだ。
最後に改めて情緒っぽく
芝刈り機があった方からこうして撮っても木陰がホームにかかって趣がある。
撮ったのは朝の10時頃だ。
太陽が海側にあるとこうして具合良くホームに八重桜の影が伸びるようである。
やはり天気のいい日に散歩したくなるところだ。
もちろん朝に、である。
帰り際に近所で鯉のぼり
以上、現在の羽根駅の様子である。
待合室などは鍵がかかって使われておらず、老朽化も進んでいるが、付近に民家も多いからか、ホームやその周りは忘れられているところではなく、この地域にまだまだ溶け込んでいるように見えた。
とくに少し湾曲したホームは八重桜の木陰もかかって遊歩道のようにも見えたので、日々の散歩コースの一部として使われているような趣もあった。
現在そのように使われていないのであれば、そのように再利用できないかと想像力がムクムクと膨らんでくる。
廃駅を利用した遊歩道、こういうのもアリのような気がするのだ。
県道に戻る坂からの景色
県道35号から上ってきた坂を戻ろうとすると、道中遠くに海を望める。
この、海を望みながら坂を下るというのが、青春映画のワンシーンのようでまた気持ちよくて、ここも含めて散歩コースにしたくなった。
さらには坂の途中で鯉のぼりも拝めた
この日がたまたま子供の日前日だったこともあって、付近の民家の方が鯉のぼりを上げているところを目にできた。
季節によってはこういう日本らしい風習を目にすることができるっていうのは散歩の醍醐味の一つでもある。
やはり散歩したくなる駅であったなと思うのであった。