初心の趣

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廃駅の旅23 「松波駅」

え? 情報館、閉鎖?

廃駅の旅、23回めだ。

今回は能登町にある旧松波駅に行ってきた。

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旧松波城の足元にあった駅

のと鉄道廃線を中心に使われなくなった駅をめぐる廃駅の旅もこれで23回目だ。

今回向かったのは、のと鉄道の旧能登線にあった松波駅だ。

その駅名のとおり、石川県鳳珠郡能登町松波というところにある。

廃駅でよくある「駅名と同じ、もしくはそれに似た名前のバス停が近くにある」にも当てはまっていて、真ん前に北鉄のバス停もあるので行きやすい。

まずは地図

こんなところにある。

前回の九里川尻駅と同じように近くに海もあり、かつ背後に山もあるようなところだ。

周りに民家や商店もあるので、比較的町の中にある。

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コメリが近くにある

ホームセンターのコメリがある。

とりあえず自分はこの看板を目印に向かった。

写真では南側を向いて撮影しているので分かりづらいが、この位置から反転して北側へと振り返ると、目的の廃駅はもうそこである。

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振り返る

奥にバス停の待合所があるのが見えるだろうか?

その背後に旧松波駅があるのだ。

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到着

ここが旧能登線の松波駅だ。

コンクリート平屋建ての駅舎が今もこうして残っている。

急行が停車する駅だったので能登線の中では大きめの駅だったようだ。

恋人たちの名スポットとして人気ながら無人駅だった隣の恋路駅の入場券なんかをここで販売していたらしい。

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近寄ってみると情報館の看板あり

「奥能登トリビア蔵 松波城址情報館」と書かれ、真ん中の「蔵」の漢字が筆文字アートのように描かれている看板が掲げてあった。

どうやらこの旧松波駅、廃線後はその駅舎を情報館として再利用しているようだ。

この駅の裏にある山に、かつて畠山氏が築城した松波城の城址があり、その資料や畠山氏に関する情報が展示されているようなのだ。

開いていませんでしたが…

日が悪かったのか、自分が訪れた6月上旬のこの日には開いていなかった。

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窓から中を覗く

窓から中の様子をうかがえた。陶器やパネルが展示されているのがわかる。

荒れている様子はなかったので、いまも情報館として使われているような気もするが、詳しいことはちょっとわからない。

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トイレは完全に閉鎖されてましたけどね

駅舎のトイレがこのように入り口に板を張って入れないようになっていた。

ちなみに目の前のバス停の待合所には…

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こんな張り紙も

旧松波駅のトイレが平成31年4月25日に閉鎖されたと通知されていた。

平成最後、令和を前に閉鎖されたようだ。

これはトイレだけの話なのか、それとも駅舎全体、つまりは情報館も含めて閉鎖になったのか、よくわかっていない自分には気になるところであった。

 

裏にホームと待合室

情報館として再利用されていた駅舎が閉鎖されているかもしれないと思った途端に、今回の松波駅への旅もこれにて終了かと頭をよぎった。

でも、正面だけ見て満足するような性格ではなく、メインよりも背後のディテールなんかに興味を抱く偏屈な自分は、この駅舎の裏側なんかも気になった。

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ということで裏にも回り込んでみた

奥ではすんごく草は茂っていたけど、このように裏へと回り込む通路が残っていて、今も通過できるようになっていた。

実際、奥へと進んで見ると…

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プラットホーム跡がみえた

茂みの奥に待合室と併せてホーム跡が見えたのだ。

俄然、廃駅の旅っぽくなってきた。

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もちろん近づいてみる

草を掻き分けなければならないので近づくのも大変である。

この草の伸びっぱなしの姿、もはや草種が主役のような場所にも見えてしまう。

そんな中に窓も取っ払われて吹き抜け状態の待合室が残っていた。

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侵食っぷりがなかなかすごい

待合室の草木による侵食ぶりが廃駅の旅の中でも上位に食い込む有様だ。

放置されて随分と経っているのが伝わってくる。

ドアもないので一応、中にも入れるけど、待合室としてはもはや機能していないだろう。

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ホームの屋根も残っている

だいぶサビも付いて柱にはツタも絡まっているけど、ホームには現役時代の屋根も残っていた。

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ちょっと離れて見るとこんな形をしていた

海面から突き出たクジラの尾ビレみたいな形をしている。

1面2線だったホームならではの形であろうが、こうしてみると結構でかい。

形もいびつだし、柱2本で中央で支えているだけだし、よくぞ風雪にも耐えながら今でも残っているものだと感心する。

冬とか雪の多いとき、屋根雪って大丈夫だったのだろうかと、北陸の人間らしい心配をしてしまう。

もちろんここ能登町も豪雪地帯なので、そのあたりの除雪機能を備えている設計になっているものなのであろう。だからこそ今もこうして残っているわけなので、いらぬ心配というものである。

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ホームから駅舎を望む

表から見るといまでは情報館という印象がある駅舎だが、こうして裏から見ると能登線の昔の駅舎らしい姿をしている。

裏から見るとさらに使われていない感が出ていて、やっぱり情報館も現在やっていないのかなと、そう思えてしまう。

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駅舎裏の近くにはこんなものも落ちていたし

「撮りっきりコニカMiNi」の文字が入ったラックが見える。

駅が現役時代にインスタントカメラの「撮りっきりコニカMiNi」が売られていたのだろうか?

これって確か90年代の商品だと思うのですごく歴史を感じるし、懐かしい。

でもこういうのも目にすると、やっぱり情報館も閉館になったのかなと、なにか勝手に寂しい思いになってしまう。

 

まとめ

以上、旧能登線の松波駅の今の姿だ。

後ろの山にある松波城址の情報館として駅舎が再利用されていたと思ったら開いていなかったり、トイレは平成の終わりに閉鎖されていたり、裏に回ったら駅のホームが草伸び放題で残されていたり、そのホームが結構形そのままで残っていたり、かと思えば90年代に流行った使い捨てカメラの「撮りっきりコニカMiNi」のラックが捨ててあったりと、いろいろと現代との時間のギャップを感じさせる廃駅だ。

自分はよく「忘れられている感」といった表現を使うのだけど、それに近いものがある。

ただ、完全に忘れ去られているかと言えばそうでもなく、いまでも北鉄ならびに「うちうら線」のバス停があるし、自分が撮影中にもバスが駅舎前にやって来ているのを目の当たりにしている。

なにより民家や商店が近くにあって、むしろ町の一部として溶け込んでいるようであった。

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バス停側には「晩酌屋」という飲み屋らしいところもあるしね

あいにく、自分はお酒をほとんど飲めなくなっているし、車で来ているので立ち寄れませんでしたが、泊まる気満々で夜に来ていたらふらっと暖簾をくぐっていただろう。

夜に訪れる「廃駅の裏旅」というのもやってみたくなった。

まあ、旧能登線の廃駅は山の中だったり、海の側だったり、周りに何もなかったりしているところが多いので夜に訪れるとサバイバルみたいになりそうですけどね。

現代との時間のギャップを感じさせる廃駅だっただけに、妄想も膨らみやすいところであった。