公民館が建っていてもそこも廃駅!
廃駅の旅、16回目だ。
今回は能登町にある宇出津駅に行ってきた。
かつてのと鉄道の本社があった駅
県内を中心に廃駅をめぐる「廃駅の旅」も16回目だ。
今回は、前回の藤波駅の次の駅に当たる「宇出津駅」に行ってきた。
宇出津と言ったら自分なんかは「あばれ祭り」がまっさきに浮かんでくる。
昨年はコロナ禍で中止になっていたけど、それまで3年連続で見に行って、そのやんちゃっぷりに毎回何百枚と写真を撮ってしまっている。
(あばれ祭りで神輿が川に放り込まれている様を撮った記事は→こちら)
(あばれ祭りで神輿が火に放り込まれている様を撮った記事は→こちら)
あばれ祭りもあって、能登町の中で自分が一番足を運んでいるのもおそらく宇出津だろう。
そんなもので今回の旧宇出津駅も「だいたいあのあたりだろう」と頭の中で地図をイメージして向かうことができた。
(相変わらずちょっと迷いましたが…)
さっそく地図
国道沿いにあるわけではないものの、穴水方面から向かうならやはり国道249号線を進んでいくと行きやすい。
「バイパス中央」の交差点で右折してグルっと回って県道35号線に乗ると、途中「宇出津駅前」という交差点も見えてくるので、そこで曲がるともう旧宇出津駅だ。
近くにAコープがあったりと町の中にある。
これまで巡ってきた廃駅のほとんどは山の中だったり海沿いだったりで商店が近くにあるところが殆どなかったので着いてみるとちょっと都会に思えて新鮮だった。
なんでも能登線がまだあったころは、のと鉄道の本社が宇出津駅にあったそうだ(現在は穴水駅に本社がある)。
到着
ここが宇出津駅跡だ。
あれ?駅らしいものがない、と思われるだろう。
現在、宇出津駅があったところには「コンセールのと」という施設が建っているのだ。
コンセールのとは公民館と図書館が合わさったような施設だ。
「ごいた」(宇出津が発祥のボードゲーム)の大会もここで行われていたりする。
(ごいたを初めて体験したときの記事は→こちら)
さらに隣には町役場も
廃駅跡に建ったコンセールのとの隣には2020年に移転してきた能登町役場も真新しい姿で建っている。
このことからも宇出津が能登町の中心のようになっているのがわかる。
のと鉄道の本社が置かれていたのも納得してしまう。
駅らしいものを撮る
駅跡に新しい公民館兼図書館のコンセールのとが建っているということは、駅の施設が解体されたということでもある。
前回の藤波駅のときにも少し触れたが、駅のホームや待合室、駅舎と行った鉄道施設がこの宇出津駅跡には残っていない。
後で調べたところ、廃駅になったのが2005年、コンセールのとが完成したのが2014年、それまでの間は解体されるまで残っていた駅舎が観光案内所として再利用されていたそうなのだ。
現在はコンセールのと内に観光情報ステーションがある
すっかり再開発されてここに宇出津駅があったという感じがほとんどしない。
ただ、まったく駅跡の香りがしないかといえばそうでもない。
この施設の裏側にはそれを示す「鉄道緑地広場」なるものが作られていた。
矢印の方に進む
建物のトイレがあるところのその裏のほうへ駐車場を縫うように進んでいくとその緑地広場がある。
ここが鉄道緑地広場だ
鉄道信号を模したのか利用したのか、それっぽいポールが立っていて、そこに鉄道緑地広場の文字が書かれてある。
その脇に「能登線・線路跡地」の文字も見える。
縦に長い緑地だ。
線路っぽい床
緑地なので芝生が敷かれていながら、その中央を線路を模した石タイルが敷かれていた。
枕木にあたるところは… これ本物の枕木を使っているのだろうか?
電飾が仕込まれているところを見ると、夜には滑走路のようにライトがつくようである。
広場にはベンチもあり、その間には駅看板も置かれていた。
宇出津の駅看板
これ、実際に使われていたものなのか不明だ。
でも、こういうのがあるだけでここが宇出津駅があった場所だとの実感が持てる。
なにせ、駅舎も残っていなければプラットホームも残っていないのだから。
小さな子供や地元以外の人なんかは、これがなければここがかつて宇出津駅だったとはもう思えないのではなかろうか。
裏側には能登線の歴史
これによると国鉄能登線(最初は国鉄だった)が1959年に開業したとき、まだ宇出津駅ってなかったみたいだ。
ここまで延伸開業したのが1960年だから約一年後… 結構早い。
その後、国鉄からJRになり、JRから第三セクターの「のと鉄道」になり、そして能登線の全線廃止までの流れがわかる。
さらには廃線によってのと鉄道の本社が宇出津から穴水へ移ったことも記してある。
勉強になる。
また、この駅看板の表に立って「はね」方面に目を向けると、線路跡の延長線上にトンネル跡も見えた。
遠くに穴発見
もう線路もなく、道路が走っていて鉄道の香りはあまりしないが…
近寄ってみたら鉄道トンネルっぽい雰囲気
地図的に線路跡の一直線上にあるので当時、線路が走っていたトンネルなんじゃないかと思われる。
そこのところを中に入って確かめてみたかったが、あいにく立入禁止となっていたので諦めた。
トンネルの方から見た鉄道緑地広場の景色
こうやって見ると緑地が駅のホームの形をしているようにも見えてくる。
ただ、広場はやっぱり広場であって、やはり廃駅っぽさは殆ど感じない。
廃駅の写真を撮ろうとしているものからすると少しさみしいが、この場所が再利用されていることを考えると良いことなのではないかとも、そう思えてきた。
感想
以上、旧宇出津駅の現在の様子である。
再開発のため駅に関するものが解体撤去され、コンセールのとという公共施設が建っているため廃駅らしい雰囲気はほとんどないところであった。
コンセールのとに設置されたバス停
バス停名が「能登町役場前」となっている。
役場が移ってくる前はバス停名が「宇出津駅前」だったそうだ。
廃駅の香りがこういうところからもなくなってきている。
ただ、廃駅感が殆どないにもかかわらず旧能登線の歴史を学べたのだからちょっと皮肉もあって面白い。
今まで見てきた廃駅で廃線の歴史を紹介していたところはなかったはずだ。
駅施設は撤去して新しい物を作りながらも、そこに何があったか、旧宇出津駅の記憶は残そうとする姿勢には共感するものがある。
そのうち数十年と経つと、今まで紹介してきたまったく使われていない廃屋となったような廃駅もいずれこの宇出津駅のように再開発されて跡形もなくなっていくのではないかと想像できる。
ちょっと寂しいがそれも世の流れというものだろう。
同時に、そう考えると、宇出津ってところは先を行っているなとも思う。さすが本社があったところだなと妙な感心もしてしまった。
願わくは、他の廃駅もいつか再開発されたとしても、この宇出津駅のようにそこが駅であった痕跡やモニュメントを少しでも残してくれていたらと、廃駅好きになりつつある自分などは思うのであった。