奥能登国際芸術祭2023、鑑賞旅第三日目に向かった蛸島エリアではリュウ・ジャンファ[劉建華]さんの「漂移する風景」も鑑賞。
2020+から珠洲焼資料館に常設展示されているそれをサラッと紹介したい。
2020+より珠洲焼資料館に
今回紹介するリュウ・ジャンファ[劉建華]さんの「漂移する風景」は、遡れば第一回目の奥能登国際芸術祭2017からある。
その2017では宝立エリアの見附島の海岸に展示されていて、次の2020+で蛸島エリアの珠洲焼資料館の庭に展示されることになった作品だ。
以降、その資料館の庭に常設展示されているので、奥能登国際芸術祭のとき以外でも見に行けたりする。
自分としても何度も目にしており、おそらく今回2023でも特別なことはしていないと思われたのでサラッと見て、スタンプを押しにいくつもりで現地に足を運んだ。
ということで珠洲焼資料館へ
この資料館の中も5月の大地震で展示物が大変なことになったと聞く。
目的の作品はこの建物の中ではなく、庭にある。
倒壊とか関係のない作品なので、無事であることは間違いないだろう。
20番 リュウ・ジャンファ[劉建華]「漂移する風景」
庭に回ってみると、なにやら「お願い」が
資料館の入口前から左に曲がって庭にやってくると、案の定作品看板が見えたのだけど、その隣に赤字で「お願い」と書かれた紙も接着されていた。
もしや、この作品も5月の大地震で被害が出てしまったのだろうかと、そんな心配が俄に胸を抜けた。
とりあえず20番だ
リュウ・ジャンファ[劉建華]さんの「漂移する風景」だ。
お願いは… 地震の被害とかではなかった。
作品に触れるだけではなく、動かしたり、持って帰ろうとする人が鑑賞客の中にいたらしく、それらは犯罪行為(窃盗・器物損壊)にあたることを伝えている。
そんな人いたの?
と自分などは思ってしまったけど、世の中は広いのでそんなことをしてしまう人もときどきいたりするのである。
防犯カメラも作動しているみたいだし「見つけた時は、しかるべき対応を講じます」とも書かれてあるので、さすがにもうそんなことをする人はいないだろうと思う。
この国は法治国家なので、法に触れることをすればその後の人生、損するだけだと思うから、皆さん、常識と良識のある行動を取るよう努めていただきたいものである。
ちなみに作品はこんな感じ
2020+のときと変わってないねぇ…
などと悠長な感想を抱いた。
地震の影響もなさそうである。
もとより、海に漂着した割れた陶器を足元に展示しているので、倒壊なんて言葉とも無縁なのだ。
勝手に動かされたりもしたようだけど、どこのあたりで動かされたのか、また窃盗されたものはどのあたりに置かれていたのか、そのあたりが気になったものの、2年ぶりに観に来た自分には仮に教えてもらっても違いも分からないだろう。
それくらい2020+のときと同じに見えてしまった。
反対側も見ておこう
資料館の正面を右手に曲がった先の庭にも、このように作品が置かれている。
ここでももちろん地震の影響などはまったく見受けられず、2年前と同じ風景に見えてしまう。
昔の写真と比べれば多少の違いなどは見えてくるんだろうけど、他人の犯罪行為に乗っかって被害者の傷を抉って楽しむようで、それをして一体何になるというものだ。
あらゆる作品に対して、受け止め方、解釈の仕方は十人十色、その人の自由だが、作品を物理的に移動させたり変えたりしてしまうのは、作家の意図するものを破壊している行為であり、犯罪であると言われても仕方がないだろう。
何より、そんなものは造り手への侮辱でしかない。
絶対にやめた方がいい。
自分としては楽しく作品を観たいものである。
感想
珠洲焼資料館の庭に常設展示されているリュウ・ジャンファ[劉建華]さんの「漂移する風景」は5月の大地震の影響もなく、しっかりと残っていてくれていた。
すでに倒壊したあとのような作品だから地震の影響を受けようがない?
代わりに不届きな鑑賞客のせいで犯罪に当たる行為を受けてしまっていたことは悲しいことであった。
あらためて、作家への敬意はなくしたくないものだと考えさせられたよ。
まったく余談だが、資料館裏の窯では火が入れられていた
おお、新しい作品が誕生しようとしている
地震で館内の昔の陶器といった展示物は相当な被害を受けたみたいだけど、そんな地震ニモマケズ、新しいものを生み出そうとしている景色に人知れず感動した。
「漂移する風景」の先に希望が見えた気がしたよ。