初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第四日目その8(カン・タムラ「珠洲(16mm)」「珠洲(デジタル)」)

能登国際芸術祭2020+で目にした作品の紹介、第四日目その8だ。

今回はカン・タムラ氏による「珠洲(16mm)」「珠洲(デジタル)」を取り上げたい。

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珠洲焼資料館の中へ

今回紹介する作品は蛸島町にある珠洲焼資料館の中に展示されている。

珠洲焼資料館といえば、県内にまん延防止等重点措置が適用されていて芸術祭も一部の作品しか鑑賞できなかった9月に目にしたNo.15の作品『漂移する風景』が展示されていたところだ。

No.15が資料館の外に展示されていたのに対し、No.14に当たるカン・タムラ氏の作品は中に展示されている。

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ということで珠洲焼資料館へ

約一ヶ月ぶりにやってきた。

まん防中だった9月は珠洲市立のこの資料館そのものも閉まっていて中に入ることが出来なかったものである。

もちろんオープンしているし、

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入口前には9月に見られなかった案内板も設置されていた

2つあるのはカン・タムラ氏の作品が2種類あるからだ。

両方とも映像作品なんだけど、デジタルのものと16mmのものとに分かれていて、16mmのものがこの建物の2階で見られる。

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入るとこのような案内

右手に資料館の受付があり、そこで芸術祭の受付も行っていた。

2階への進み方や、もう一つ「デジタル」のほうがどこにあるのかも説明してくれる。

また、2階に上る前に一階の珠洲焼資料館の展示物の鑑賞もどうぞと言ってもらえたので、自分としてもまずそちらから立ち寄った。

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珠洲焼の歴史なんかを学べる展示

中には撮影禁止のものもあるので、1階の写真はこの程度にしておくが、展示物は隅々まで見させてもらった。

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いざ、2階へ

このように矢印付きの案内が置かれているので迷うことはないだろう。

2階へは階段で上がることになる。

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丁寧なものだ

2階に到着するとまた矢印が置いてある。

親切にきっちりと奥能登国際芸術祭2020+の作品へと誘導してくれていた。

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第2展示室だ

常設展示されているものと一緒にカン・タムラ氏の作品も展示されているのだ。

 

カン・タムラ「珠洲(16mm)」

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あらためて14番だ

カン・タムラ氏はアメリカ合衆国デラウェア州ドーバー出身のアーティストであり映像製作者で映像人類学者でもある。

現在、金沢市に住んでいると言うから親しみを覚える。

今作品も映像ものなのでビデオでの撮影は禁止されている。

これまた丁寧に防犯カメラ作動中とも記してあるのだから、ガチで取り締まっているようだ。

映画館の映画泥棒と一緒でこういうの犯罪になってしまう。

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入ってみるとカメラなどが展示

16mmフィルムのカメラだと思われる。

16mmは、家庭用でよく使われていた8mmよりもフィルムの規格が大きいものだ。

本格的な映画だと35mmのものを使っていたそうなんだけど、簡易な映画やドラマでは16mmがよく使われていたようだ。

いまはデジタル化が進んでいるので、フィルムで撮影するということ自体少なくなっている。こういったカメラもなかなか見かけない。

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これ、編集機だろうか

カメラの奥にはこんなものも展示されていた。

おそらく16mmフィルム用の編集機だと思う。

自分は学生時代にVHSのテープやデジタルで映像編集をしたことはあるけど、フィルムの経験はないので、すごく新鮮に目に映る。

これ、かっこいいい。

映画『ニュー・シネマ・パラダイスごっこをやりたくなってくるではないか。

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映写機も置かれていた

16mm用の映写機ってまだあるんだね。

一見、古臭そうなものでもないし、現代でも素人が16mmで作品を作れるんじゃないかと期待を持ててしまう。

これ、もちろん動いていた。

この映写機から作者が16mmで撮って編集した「珠洲」の映像をスクリーンに流しているのだ。

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このように

白黒なので古い映像のようだけど、昔の映像ではないと思われる。

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きっと最近のものである

このハイテクそうな公衆電話は最近のだろう。

でも公衆電話自体が携帯電話の普及によってかなり減ってきているので、だいぶ過去のものになりつつあることを思うと、なんだかんだこの映像も侘しいものに見えてくる。

でも、いいものを見せてもらった。

また映像作品を撮りたくなったではないか。

 

珠洲(デジタル)」

カン・タムラ氏のもう一つの作品はデジタル映像である。

どこで見れるのかと言うと、珠洲焼資料館の外にある。

いったん館を出て裏手に回ると小屋が見えてくるので、そこへ向かうと良い。

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裏に回る

No.15、リュウ・ジャンファさんの作品「漂移する風景」を横目に館の裏へ。

斜面にエビ反るように建てられた小屋がそれだ。

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これ、復元古窯だ

13世紀前半に使われていた珠洲焼の古窯を復元したものだ。

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ちゃんと案内板も立てられていた

こちらはちゃんと作品名が「デジタル」になっている。

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とりあえず小屋の中へ

奥に長い窯があった。

これが復元された古窯というやつだ。

コロネみたいだ。

もしくはモスラの幼虫を思い出してしまった。

で、肝心のデジタル映像はどこに? 窯はあるけど作品が見当たらないのだ。

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イスのようなものがある

薪をくべるときに腰掛けるものなのか、丸太で作られた椅子のようなものが置かれていた。

座ってみると…

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窯の中にデジタル映像、発見

珠洲(デジタル)」だ。

古い窯の中で新しい映像を見せるって、ニクい演出だ。

映像は、主に珠洲焼の製造工程を撮影したもので、炎を扱っているシーンが多かった。

珠洲焼ってこんな感じで作られるのかとアカデミックな視点で楽しめるのと同時に、不思議とリラックスも出来た。

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窯の前で腰掛けながら炎を見る…

デジタル映像だけど焚き火の癒やし効果を獲得しているかのようだ。

これ、10分、20分とずっと見ていられる。

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没頭している自分がいた

いかん、立ち上がるの忘れてた…

そのうち、別の鑑賞客が数人やって来たのでイスを空けたけど、誰も来なかったらずっと窯の前を占拠していただろう。

これ、映像の内容は勉強になるものだけど、それについて語るような作品ではない。

ただ体感するだけで満たされる作品だ。

 

感想

2種類の映像作品、ともに作品名は「珠洲」ながらその趣向は全然違っていて、違っていながらそれぞれで自分の心を鷲掴んでくるからたまらなかった。

映像って映像の中の演出だけでなく映写する場の演出でもここまで見る者を没入させるのかと、特に「デジタル」で気付かされた。

没入その一点に限って言えば、VRとか別にいらないんじゃないかと思えたくらいだ。

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去るのが惜しくなる

もっと見ていたかった。

映像を作りたくなったし、陶芸をまたやりたくもなってきた。

興味や関心を刺激する作品だった。

映像の力を改めて思い知らされた気がする。

その「力」、この文章と初心者レベルの写真で伝えられたかは、不明だ…