珠洲市で行われている奥能登国際芸術祭2023、宝立エリアから回った第二日目の3つ目に向かったのは旧柏原保育所だ。
そこでの作品、本芸術祭の中で1番ホラーだと思った。
旧柏原保育所へ
奥能登国際芸術祭2023の鑑賞旅二日目は宝立エリアから回っているが、次に向かったのは旧柏原保育所だ。
到着
ここは前回の2020+でも作品の展示場所として使われていたので、迷子にならずに行けた。
前回は「かわいらしさ」をテーマにした作品だったと記憶している。
旧保育所らしい、子どもたちの遊び心や声が聞こえてきそうな作品だった。
今回2023では北山善夫さんの「人間は赤ちゃんから生まれる」という作品が展示されているという。
その作品名から今回も子供に関する作品なんだろうかと、そんな想像をしながら入っていった。
40番 北山善夫「人間は赤ちゃんから生まれる」
40番だ
注意書きを見ると、作品には触れてはいけないらしい。
ということは近い位置にあるということだ。
旧保育所は決して広くはないので、まあそうだろうな、とのアバウトな想像はつく。
入ってすぐ受付
室内なので受付がある。
受付を済ませて玄関を上がり、そこで左に曲がると突き当りに遊戯室がある。
このように
この廊下の左右にもいくつか教室があり、そこで作品の展示が行われている。
これも、2020+のときの記憶を参考に入る前から想像していた。
さて、どんなお子様向けな作品が展開されているのだろう?
まるでその想像の確認するかのように進んでみたんだけど…
え~と、子供向け?
確かに童な人形はいっぱいいるんだけど…
なんだろう、この違和感。
螺旋を描くように人形たちが寝かせて並べられているし。
怖っ!
寄りの画で撮るとちょっと怖い。
なんか、目があっているような気がするし、背筋に悪寒が走る。
なんか、引きずり込まれて行ってないかい?
螺旋を追うとこの子達がズルズルと中心(もしくは一番外)に引きずり込まれているようで、それを観ていると自分自身もこの異様な世界に引きずり込まれていきそうなのだ。
黒板にはなにか書かれているし
何か呪詛でも書かれてあるのかと思ったじゃないか。
顔を背けるように反対側の事務室の方へ振り返る
こっちは螺旋のような迫力ある人形の配置はないようだ…
さっきのあれは一時的な気の迷いみたいなもので、作品でいうとオープニング、そのオープニングでちょっと脅かそうと、そういう演出なんだろう…
そんなことを勝手に考えて安心した気になりながらコチラの部屋にも入ってみると…
ガスマスク、被せられてました
こっちも
これ、防具用じゃなくて、逆に何か吸わされていないかい?
子供の人形を使ってなかなか悪趣味なことをするじゃないか。
その部屋も出て廊下を進んでいくと…
こんな一角にも人形が
置かれ方がね、人体実験にされた後のようでおぞましいのよ。
薄暗いし。
「作品にはさわらないで下さい」
いや、触りたないです。
怖ッ!
近くで撮ると余計に怖い。
妙にリアルなところがまたね。人形だとわかっていても、動き出したりだとかホラーな想像をしてしまう。
その真ん前にはこんなシュールな世界が
世界じゃない、宇宙と言ったほうがいいだろうか。
ここでも黒板を見ておこう
宇宙の始まりから人類の誕生、その歴史を繋げて、これもまた螺旋で表現しているようだ。
もうちょっと俯瞰的な角度から見てみよう
中央から螺旋状に小石が広がっているのがわかるだろうか。
中央はこうなっている
アンモナイトの化石のようなものが置かれている。
そこが宇宙の始まりだとしたら、そこがビッグバンに当たるのだろう。
途中、仏の姿も
別のところでは小便小僧のような像も
これは宗教なのか、哲学なのか、いったいどういう螺旋なのか、不思議すぎて頭の中がグルグルと回ってしまいそうになる。
隣の部屋も見てみよう
いえ、失礼しました…
そのままそっと戸を閉めたくなる光景がこの部屋でも見られた。
何の「ままごと」かわからないが、ここでは人形たちが悪魔召喚のようなサークルをその身で描いていた。
こっちでもそっちでも
あっちでもこっちでも
「なにかごようですか?」
目が合うや、そんなことを聞かれているような感じがした。
目が合うんだよね、色んな人形と。
トイレの中も覗いてみよう
トイレの中もインスタレーションの場となっていた。
写真がメインのようだ
誰のいつ頃の写真なのかは不明なのだけど、おそらく地元珠洲市の方の誰かしらの子供の頃のそれだと思われる。
ここには人形はいないようだと思ったが…
天井にいた
吊るされたエンジェルたちがいた。
天使と記せば聞こえはいいが、胴体がハエやその他羽のある虫のように見えてくるから合成悪魔にも思えてくる。
最後に遊戯室も覗いてみる
この部屋は人形でゴリ押しするようなことはせず、それまでの部屋と比べるとまだマシなように感じ取った。
壁には過去の新聞
新聞は古いものが多く、昭和天皇とマッカーサーが写っている頃の記事もあった。
過去から現代へ時間が流れてきているのが伝わる。
さらには天井からは天使の羽を付けたイスも、飛ぶようにいくつから吊り下げられていた。
このように
これだけ見ると可愛らしいし、それまでの仏教でいう所の六道を示す様な偏屈な人形世界を見てきただけに、ここが六道最後の「天道」というものだろうかと、そんな想像までしてしまった。
でも、あるだんよね、この部屋にも、螺旋が
人形で、ではないが、枝と紙(和紙かな?)を使って、室内に大きな螺旋を描いていた。
中央にあるのは何かの木だ。
そこから時の流れが綿々と続いている様は、ドラクエの世界樹を思い出した。
また、これが螺旋であることを確認するため、一番外側の端っこを探してみた。
端っここそが現代なのだろう。
いまここ
あった。端っこを発見した。
なう。だ。
それまではホラーな印象でどこか距離を感じていたけど、この作品と、現代に生きる自分たちとがいま繋がった気がした。
感想
ガイドブックによると古代エジプトでは死んだ人がもう一度生まれ変わる時、赤ちゃんから生涯をスタートするらしく、墓の主が新生での生活に不自由しないように墓の埋葬品に幼児が遊ぶ手押し車や生涯使うであろうものも一緒に入れるとのことだそうで、北山善夫さんの「人間は赤ちゃんから生まれる」も、そのあたりから刺激を受けて、今回このようなインスタレーションとして作り上げたそうである。
輪廻転生(りんねてんせい)というものだ。
節々に、いや、そこかしこに子供の人形を使っていたのも、個人なり、世界なりが輪廻転生を繰り返していたことを表現するためだったのだろう。
ただ、やっぱりその演出はホラーでした。
自分がホラーだと感じ取っちゃったんだからホラーです。
それでも興味深いなと思った。
自分としては、転生し続けているのが個人なら螺旋を描く人形たちは「転生した印」みたいなものなのでわかりやすいんだけど、これが転生し続けているのが世界だとしたら、人形一つ一つは何を示しているんだろうと、そんなことを考えてしまった。
世界で歴史的に繰り返しているものといえば、やはり「戦争」だろうか。
螺旋を描く人形たちがそれぞれ過去の「戦争」であると見るなら、確かに「ホラー」であっても納得できるものである。
どこまで続くんだ…
現代でもウクライナやパレスチナのガザ地区で実際に戦争が起きている。
この螺旋を止めれる術は、果たしてあるのか、ないのか。
考える必要があるのだろう。