初心の趣

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奥能登国際芸術祭2023を地震に負けず回る第一日目その15(杉谷一考「おもちゃ」)

能登国際芸術祭2023、旧粟津保育所で展示された2つ目の作品を紹介したい。

杉谷一考さんの「おもちゃ」は参加型のインスタレーションだった。

 

 

旧粟津保育所、2つ目の作品

前回のカールステン・ニコライさんの作品のほかに、旧粟津保育所では別の作家さんの作品も展示されている。

保育所の玄関に入って左手に曲がると、その作品がある。

いや、玄関入ってすぐにその片鱗を目にすることができる

玄関ではテーブルの上にカラフルな積み木のようなものが置かれていた。

置かれているだけではなく、一つ500円で販売されていた。

最初これが何なのかよくわからなかったが、ここから左に曲がって作品を見に行くとよくよく理解した。

 

15番 杉谷一考「おもちゃ」

あらためて15番だ

杉谷一考さんの「おもちゃ」という作品だ。

「ご自由にお遊びください」と書かれてあるが、この看板を目にした段階では意味がよく分からなかった。

玄関を抜けて左手に曲がると部屋があるんだけど、その手前にこんな文字が…

「さわってあそんでね」

ひらがなで、大きな文字で、小さなお子さんでも目にできる足元に書かれてあった。

その部屋には、さきほど玄関で販売されていたカラフルな積み木のようなものがいくつも置かれていた。

こんな具合に

カラフルな積み木のようなものと思われたものは、やっぱり積み木だったようで、すでにそれらを使って、何かしらの造形物がいくつか拵えられていた。

この内側の積み木たちだけを見ると、すでに最初から作者によってこういう配置に積み木が置かれ、鑑賞者は触れることも許されずただ見るだけの作品のようにも思えるけれど、自由に触っていいのだ。

窓にもこんな張り紙が

部屋の窓に張られてあった。

これによると屋外にも作品が置かれているのがわかる。

実際、中庭の方へ目を移すと…

でかいのがいくつも置かれていた

カラフルな積み木の、イスやテーブルクラスの大きなものが点在していた。

2023では中庭も賑やかだ。

張り紙によれば、触ってもいいけど、上には乗るなということらしい。

どうみても子供用のベンチか遊具のように見えてしまうので、乗るな!というのはキッズたちからするとちょっと酷なことかもしれない。

とりあえず自分も触ってみよう

カラフルな積み木に触れてみると想像していたものより軽かった。

石か何かだと思っていたら、これ、セラミックらしい。

これらを使って積み木遊びをして、独創的な何かを作り上げればいいんだな!

と、鼻息荒くなるんだけど、室内ではすでにいろんな形にして置いたり並べたりしてあるのを見ると、それらを崩して新たに自分で何かを作る気にはなれなかった。

もしかしたら、いや、十中八九、お子さんたちが組み立てたものだからで、子供の想像力を壊してまで大人がこれらで遊びたいとは思わなかったのだ。

むしろ画像として残しておこう

子どもたちが作ったものを壊すよりも、出来上がっているものを画像として保存することに、自分としては楽しくなってきた。

だって、これらもキッズたちの「作品」だから

作品好きとしては子どもたちの作品にも興味がある。

どんな想像力で、何を見て、何を感じて作っているのか、それらを想像しながら鑑賞して勝手に解釈するのが楽しいのである。

だいたい家やお城のような建物みたいなものが多い

おままごとをしているような、そんな世界観が広がってくる。

この場所はなになにで、この建物はどこどこで…

これらを見ていると、作品なんて、その鑑賞の仕方は子供の頃にやった積み木遊びやおままごとの想像力の延長のようにも思える大人の自分。

ああ、でも、これら配置が、実は杉谷一考さんが最初にデフォルトとして置いていたままの状態で、キッズたちが遊んで置いたものじゃないんですってことなら、作者にしてやられたな、とも思ってしまうけど、それでも杉谷さんの「作品は作者の手を放れ、誰かの手によって自由に広がり変化し続け、いずれは消えてなくなってゆく」(ガイドブック参照)という考え方にはとても共感できるので許せます。

作品なんて、世に出た瞬間から作者の手を離れるものなので、鑑賞者がどの様に受け止め、解釈するかなんて自由なんですよ。

 

帰り際にコメを購入

絵の販売もあった

振り返ると扉脇に画が並んでいた。

ネット上で買えるようだ。

これらの画を積み木で再現することも楽しいかも。

ところで買えるといえば、この旧保育所の玄関脇の一室でお米が売られていた。

能登粟津のお米だ

この旧粟津保育所がある粟津地区で作られたお米を、生産者の方とその子どもたちで販売していた。

この場所の駐車場にやってきたとき、その子どもたちに大きな声で挨拶されたものだから、帰り際に立ち寄ってみた。

3種類のお米が売られていた

右から「ひとめぼれ」「コシヒカリ」「能登ひかり」で、どれもとれたての新米だという。

自分は米が好きだし、一袋600円だというので、味見してみたくなった。

おすすめを聞いてみると生産者の方いわく、コシヒカリが味で言えば一番いいらしく、それでも能登ひかりも人気があるとのことだった。

しかもここの能登ひかり、最初に挨拶してくれた生産者さんの子ども(小学生高学年か中学生くらい)たちが作ったものなんだそうだ。

それは驚きだったし、挨拶してくれた子どもたちを応援したくもなったので…

一つ購入した、能登ひかりを

これは楽しみだ。

こういうお土産は、芸術祭の余韻を家に持ち帰るようでかなり好みだ。

後日、炊いていただきました

自分はむかし祖父が兼業農家をして米を作っていて、その手伝いを子供の頃に良くしていたし、コシヒカリをいまでもよく食べるので、コシヒカリの美味さは十分にわかっている。

それと比べると、確かに味にしろ香りにしろ、いろいろと抑え気味の印象のある能登ひかりであるが、こちら、食べてみると、たしかに控えめな感はあるものの噛むほど優しい味わいが広がって美味しかった。

特に雑味を感じないところが、ちゃんと丁寧に作っているなというのがわかって、食べていて嬉しかった。

米作りって水の管理が難しくって大変なんだけど、丁寧に作るとほんと美味しいコメになるので、あの子どもたちにはこれからも研究しながら美味しいお米をどんどん作って欲しいと思ったよ。

あと、能登ひかりはね、コシヒカリと比べるといろいろ主張が小さいので、実は梅干しだとか、佃煮だとか、「御飯のお供」と食べると、コシヒカリより食べやすかったりする。

粟津地区らしい「御飯のお供」があるなら、今度はそれらも一緒に試してみたくなった。

あの辺り、海、近いよね。

能登国際芸術祭2023での旧粟津保育所、子どもたちより刺激を受け、子どもたちのやることを見守りたくなった場所だった。