初心の趣

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奥能登国際芸術祭2023を地震に負けず回る第一日目その10(アレクサンドル・ポノマリョフ「TENGAI」)

能登国際芸術祭2023、前回記した弓指寛治さんの「プレイス・ビヨンド」の次に向かったのは同じ木ノ浦野営場にある「TENGAI」というアレクサンドル・ポノマリョフさんの作品だ。

2基あるのだけど、一つどこにあるのか最初わからなかった。

 

 

木ノ浦野営場にもう一つ作品

あの1時間以上も山の中を歩かされて鑑賞し、お昼ごはんを食べるのも忘れてしまう過去一ハードだった作品・弓指寛治さんの「プレイス・ビヨンド」がある木ノ浦野営場にはもう一つ別の作者の作品がある。

作品No.10のアレクサンドル・ポノマリョフさんの「TENGAI」だ。

弓指寛治さんの作品同様に同キャンプ場に、駐車場から見えやすいところに作品看板もあるので比較的見つけやすいかと思う。

このキャンプ場の看板の前に作品看板あり

道もあるし幟も立っているのでどこに進めばいいのかすぐわかる。

作品そのものがまだ見えないのでどこまで歩かされるのか不安だったが、弓指寛治さんの「プレイス・ビヨンド」で1時間以上も歩かされて歩くことに慣れてしまったからか、意外と自分は余裕があった。

まさかあんなに長く歩くようなインスタレーションが同じ場所で二度続くことはないだろう、そう思ったからだ。

人によっては、もう歩くの嫌だという人がいるかも知れないが、こちらの作品は思ったとおりそこまで歩かない。

少なくとも山の中に入っていくようなことはないので安心していただきたい。

 

10番 アレクサンドル・ポノマリョフ「TENGAI」

10番だ

いよいよ作品No.も二桁まできた。

でも全部で48作品あるのでまだ4分の一にも達していない。

スタンプもセルフなので屋外にある作品だ。

作品に触れてはいけないけど、作品の真下に入って鑑賞することはできるらしい。

ということはそれなりに大きさがあるということだ。

それでもこの時点では作品らしきものの姿を目にできなかったので、そこまでの距離が大分ありそうな、そんな気もしてきた。

とりあえずこの道を歩いていく

他の鑑賞さんたちがこの道を歩いていたので、自分もそうした。

山の中の獣道みたいなところと比べてキレイに舗装されているし、幅も広い。歩きやすい。

歩いているとこんな案内が立てられている

アレクサンドル・ポノマリョフ「TENGAI」の説明書きだ。

この道で良かったようなのだけど、ここからどこに向かえばいいのか、この看板の前で少しまごまごとしてしまった。

椿の小山があって、それを挟むように大きな柱が2基設置されているようなんだけど、木々やその枝のおかげで、それらしきものが見えづらかったのだ。

この道を進めばいいのだろうか?

往来するほかの鑑賞者さん達を見て、次はこの道を進めばいいのだなと察する。

歩いていくと、そのうち大きなものが見えてくる。

これか…

う~む、水平に撮れた。気がする。

作品の感想よりもいきなり自分の撮影の技術の自己満足で申し訳ないが、あまりにもバランスの良い構造物だったので、いきなりキレイに撮ることにやっ気になっていたのだ。

ちなみにこれ、三回目くらいの撮影で、やっと水平に撮れた(たぶん)。

自分は写真を撮ろうとすると「斜めになる病」がしばしば、いえ、かなりの頻度で発症してしまうので、水平になった(かな?)ときには顔がにやけてしまった。

なんでもこの構図物、黄金比の原理に従ってフィボナッチ数列を用いて構築されているという。

フィボナッチ数列とは「1、1、2、3、5、8、13、21、34…」というように、前の2つの数字を足した数が並んでいく数列のことだ。

黄金比」とは「9:16」(正確には「1:1.618...」)の比率のことで「神の比」とも呼ばれ、人間が最も美しいと感じる比率のことだ。

黄金比… ジョジョ7部「スティール・ボール・ラン」で学んだやつだ。

この比率で長方形を一つ作り、その中に線を引いて一つ正方形を作ると、残った長方形もほぼ黄金比、またその長方形中に線を引いて正方形を作ると、残った長方形もほぼ黄金比

というように螺旋を描くように黄金比の長方形が無限に作られていくというアレだ。

ダ・ヴィンチの「モナリザ」もその黄金比の長方形を構図に用いていることで知られている。

フィボナッチ数列黄金比と一致するとも言われているので、それらを駆使しているなら、なるほど、バランスがいいなと思ったのも納得だ。

近づいて見上げてみよう

天辺から伸びた帆綱と帆桁で構成された三角形がほんと美しい。

こうして下から斜めに撮っていてもバランスが崩れないから惚れ惚れと見てしまう。

これも黄金比によるものなのだろうか?

その三角形の辺の比率を知りたくなってくる。

それ以外の帆綱の長さだったり、比率だったりもたいへん気になる。

自分、文系の学生だったけど、左利きの右脳人間だからか「数学が好きなんだよな」と改めて思ってしまった。

見ていて飽きない。

この使用された酒タンクももしかして?

黄金比

なんてことを想像してその一辺の長さを測りたくなってしまう。

下から覗いてみる

上に上がるハシゴとかないかなぁ、なんてことも考えたが、もちろんそんなものはなかった。

説明書きにもあったように作品に触れてはいけない。もちろん登ってもいけない。

別の角度から撮ってみよう

全体的に船がモチーフとなっているそうで、確かにそのように見えてくる。

ところで2基あると書かれてあったのに、この1基しか見当たらない。

もう1基はどこにあるのか?

自分はこのあたりで少々迷子のような気持ちになった。

まさか海を挟んで遠くの対岸に?

なんてことも頭をよぎって、海の方を眺めてしまった。

そうして目を凝らして、同じような構造物が立てられていないか、だいぶ近視になってきている自分の目で探していた。

もちろん、海の向こうの対岸などにはない。

説明書きを思い出してみると、椿の小山を挟んで対となるように2基立てられていると書かれてあったはず。

 

2基め

ということで、説明書きの看板の方へと戻ってみて、看板を正面にしてみると、その奥にある小山こそが椿の木々でできていることに気づいた。

写真右手の緑色の茂みが椿の小山

その小山を正面にし、右に行くとそれまで観ていた1基のあるところに行ける。

逆に左の方へ目をやると、たしかに見える、マストの天辺のようなものが。

左の道を歩いていく

すると酒のタンクも見えてきた。

どうやら同じ形のものがもう1基あるようなのだ。

あった

こんなにデカいのに、椿の小山のせいで見えていなかった。

さらに近づいてみよう

やはり最初の1基と同じ形だ。

高さも同じだろう。

同じものが2つ近くに配置されているわけだけど、2基がどれくらいの距離で配置されているのかそれも気になった。

頑張って角度を変えると1基目の先端が小山越しに見える

もしかしてこの支柱の天辺までの高さと、2基の天辺の距離も、まさかと思うけど黄金比なんじゃないよね?

と、そんなことが気になってしまうのだった。

ドローンでも飛ばして海の方からこの2基を1枚の写真に収めたくなったよ。

もちろん水平にして撮影だ。

ドローンなんて持ってないし、それができないのが口惜しい。

2基目も下から撮影

この作品、酒タンクが共鳴器となって、風が吹くと鳴るエオリアンハープのような働きもするらしい。

この2基目の下に来ると、海からの風の影響を受けやすいのか何なのか、ハープのような音が鳴っているのがしっかりと聴けた。

「宇宙と交信しているような風の呼吸音」

そう表現したくなるような音だったので、それが聴けただけでも、今回は良しとしたい。

しばらく聞いていたくなった。

 

感想

アレクサンドル・ポノマリョフさんの「TENGAI」というインスタレーションを観ていると、その構図のバランスの良さから、自分が潜在的に数学が好きなんだろうなということを改めて思い知った。

自分、高校生の時に進路を間違えたと思う。

ただ、数学を好きなんだろうけど、それを写真等に活かせるようなセンスは、水平に撮れないことからもないようである。

この作品を見習って、バランスの良い構図の写真を撮れるように、もっと勉強して腕を磨かないといけないな、と反省もするのだった。

こうして撮ると戦艦のようにも見えた

うむ、自分の感性なんて、このように斜め上なものでしかない。

正当に、まっすぐに、王道で黄金比のような感性を手に入れれる日は、果たして来るのだろうか…

天蓋(TENGAI)の下で座する仏教の僧侶のように、この酒タンクの下で宇宙と交信するような風の呼吸音を聞いていたら、できるようになる…のかも?