初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

中島町の「塩津かがり火恋祭り」を初めて見に行った

七尾市中島町塩津地区には男女の神様が海上でランデブーするキリコ祭りがある。

塩津かがり火恋祭りだ。

この度、初めて見に行けた。

 

 

明るいうちに現地到着

七尾市中島町塩津地区の「塩津かがり火恋祭り」を初めて見に行ってきた。

祖父母の家がある町でのお祭りなので、存在そのものは以前から知っていたのだけど、いざ写真を撮りに行こうとしても台風で中止になったり、コロナ禍で縮小したり、何より能登島の向田の火祭と日程が重なることが多く、能登島を優先してしまったりで、これまでずっと行けずにいたのだ。

毎年7月の第4土曜日に行われている(ちなみに向田の火祭は「7月最終土曜日」)。

今年2023年は7月22日だった。

キリコ祭りなので開始は夜だ。

だいたい19時半くらいに始まる。

場所は…説明するのが難しい。

神様たちは海上でランデブーするので、一番の見所は海の上となってしまう。

見物客は海沿いの陸上から見ることになるのだけど、地元の人によっては塩津海水浴場のあたりから見た方がいいだったり、または笠師保駅の裏の港から見た方がいいだったり、意見がバラバラだったりする。

自分は今回、のと鉄道笠師保駅」の裏に向かった。

地図だとこのあたり

聞くところによると、駅裏の港の桟橋からランデブーする神様が入った神輿が舟に乗るそうなのだ。

もう一柱の神様の神輿は唐島社のあたり(塩津海水浴場のあたり)から舟に乗るらしい。

2つの地点の距離は歩いて20分くらい離れているので、それぞれの神様が海上に出る瞬間を両方とも撮影することは、一人ではまず無理だ。よって、今回は笠師保駅裏のこちらに絞った。

明るいうちに笠師保駅に到着

自分が到着したのは18時半くらいだろうか。

この季節なのでまだ明るい。

駐車場問題があり、車で見に来ようとするとどこに停めればいいのか困ってしまう。

自分は駅の駐車場に停めさせてもらった。

人によっては、通りに路駐している人もいた。

到着する前は駅前の空き地に止めようかと思ったのだけど…

祭事で使用するようだ

すでにキリコが三基、停まっていた。

そんなもので駅に駐車した訳だが、交通整理に来ていた警官の方の話によると、祭りが始まると、このあたりの道路を通行止めにするらしい。

祭りが終わる23時半くらいまで出れなくなるかもしれないとも言っていた。

駅の駐車場で停める際は、そのあたり注意が必要だ。

国道249号線から駅へと入っていく際の踏切

この踏切から港や町の方に入ってこれないように、ここで車を通行止めにするそうなのだ。

振り返ると桟橋に続く道

この道を神輿が通っていくことになるので、そりゃ通行止めにしますわね。

進んでいくと海が見える

そして桟橋だ

舟がすでに待機していた。

これに神輿が乗って海上でランデブーすることになる。

 

19時半頃、動き出す

日が暮れ始めると動き出す桟橋近く

桟橋近辺では「流し火」の準備をしたりで地元の人が集まっていた。

その途中、なんの合図なのか、このように一回閃光系の花火に火をつけている。

それから少し経って…

遠くの岸にも明かりが

向こう側の岸には唐嶋社がある。

唐島の女神こと「唐島の神」の神輿が唐島の桟橋から海を渡って来るんだけど、蓮の葉を浮かべて火を灯す「流し火」が海上の道案内として海面に並べられていく。

このように

三脚を持たない自分の腕ではこのように光量が足りなく暗くて分かりづらいが、海上に光の点がいくつも浮かび上がってくる。

その途中、大きな火も見えた。

おそらく海上で篝火を焚いているのだと思われるが、そこがランデブーポイントなのかと察する。

一方、こちら笠師保駅側では山側の方から祭りの鉦の音も聞こえ始めていた。

山側に日面神社があり、そこから男神の「日面神」をのせた神輿がやってくるのだ。

音に反応して駅舎のほうに行ってみると…

キリコも点灯していた

むかしはキリコも船に乗って海上に出ていたそうなんだけど、今年はそれがなく、こちらでずっと待機していた。

担ぎ手不足だろうか?

でも、そこにいるだけでキレイだ。

駅のホームに行ってみると移動中の神輿も見えた

神社のある山の方から国道249号線を伝って笠師保駅の裏側の桟橋へと向かっている。

ちゃんと時間も計算されているのか、このときには電車も来ていない。

踏切を渡って桟橋へと向か神輿

提灯の明かりも幻想的。

写真としては、暗いので三脚があればなと悔やまれる。

 

海の上で男女の神々がランデブー

桟橋に先回りすると先導する猿田彦の姿が

中島町の祭りといったら猿田彦

この塩津かがり火恋祭りでもその姿を見れた。

この猿田彦に導かれて…

男神「日面神」の神輿も桟橋に

街灯があるわけでもない夜の港でこうして神輿を撮ることができるのは、祭りに合わせて現場に照明がいくつか設置されていたからだ。

照明がないと、たしかに神輿を舟に乗せるとき暗くて大変だ。

カメラを使う者にとってもありがたい話だ。

神輿、onボート

少し遠くの海面では光の粒が連なっているのも見えるだろうか。

神輿が海上に出るのに先行して、笠師保側でも小舟が蓮の葉の「流し火」を置いて行っていたのだ。

地元の方によると、蓮の流し火は合わせて2000個近くあるらしい。

蓮の葉って浮くんだよね。その上に籾殻みたいなものを乗せて燃やしているそうなのだ。

海の上に光の道

神輿を乗せた舟も岸を離れると、海上ではこんな景色が浮かび上がってくる。

舟の明かりも見えるので、今どのあたりを神輿が進んでいるのかも、ぼんやりとわかる。

あくまでぼんやりと、という点が幻想的だ(幻想的という名のエロスだ)。

 

逢瀬に打ち上げ花火

海上にて男女の神々がランデブーしそうな頃合いになると、花火が打ち上がる。

このお祭り、打ち上げ花火もあるのだ。

カメラを持つ者としては、もちろんその情景も逃せない。

あ、始まった

花火が上がるタイミングを自分自身よくわかっていなくて、光の道を撮ったあと、油断して駅の方に歩きだしていたら、突如として上がりだした。

海上のランデブー(逢瀬)と、花火、それぞれ独立しているのかと思ったら「ランデブーの演出の一つとして花火が上がる」かのように、たいした間もなく打ち上げられていた。

大きな花火大会ではないので、むちゃくちゃ凄いものではないものの「逢瀬に打ち上げ花火」なので、想像すると演出としてはかなりのエロスだ。

逢瀬に花火をキレイに撮りたい

夜の海に「流し火」に花火、これらをうまく撮れないかと頑張ってみたが、三脚を持たない自分としてはこれが限界だった。

このときが一番明るく広がった花火だろうか?

写真が手ブレしないようにシャッタースピードを限界の50分の1秒くらいに設定すると、こういう暗い画にしかならない。

ただ、自分が撮影していた笠師保の桟橋の周辺には海と道路を隔てる胸壁が続いている。

そこにカメラを乗せて三脚に乗せたのと同様に固定すると、手ブレを抑え、シャッタースピードをより遅く設定してシャッターを切ることもできる。

シャッタースピードを遅くすると、その分、光を取り込めるので、明るい画になるのだ。

明るく撮れる分、ISO感度(高く設定すると写真が明るくなるが写真にノイズがついてしまう)だって低く設定することができる。

試しに胸壁の上にカメラを置いてシャッタースピードを下げて撮ってみると…

うわぁ、花火がむっちゃキレイ…

上の方が切れちゃったけど…

花火を撮るには三脚が必要だって言われる理由、これでおわかりだろうか?

明るさがぜんぜん違う。見物客も見えるし、海上の流し火も明るい。

なんなら夜空の星すら写っている。

こんなに違うのだ。

三脚、心より欲しくなった。

 

駅前の広場にて二つの神輿で神事

花火も終わると海上でランデブーした神輿を乗せた舟が一艘ずつ戻ってくる。

この笠師保側の桟橋に女神「唐島の神」の神輿もやってくるのだ。

ご到着

先に男神「日面神」の神輿が着いて陸に上がっている。

海上での逢瀬では女神が先に行って待っていて、帰ってくるときは男が先…

昔の日本の男女の形を見ているようである。

これが現代だったら、女神の方から先に陸に上がってくることだって有り得ただろう。

レディーファーストの国ならなおさらだ。

2基の御輿が揃うと動き出す

神輿の明かりが点灯しないというアクシデントもあったけど、2基の神輿は陸に上がると、つんだって動き出した。

どこに行くのだろうと後を追いかけていくと…

キリコがいる駅前空き地へ

このあとこの場で神事が行われるようで地元の方々も集まってきていて、駅の方まで人々が屯していた。

2つの神社の氏子の方々が細い道に集っているわけだから、そりゃ通行止めになるわね。

神事が始まるまで人々は談笑していたのだけど、中には七尾市の茶谷市長の姿もあった。

最後の神事、執り行われる

このお祭りの最後の儀式だ。

無事、それも済むと…

神輿はそれぞれの神社に帰っていく

神主さんや氏子の方々にとっては神輿がそれぞれの神社に帰っていくまでがお祭りなんだろうけど、一般見物客からすると「塩津かがり火恋祭り」はこれにて終了となる。

 

終了後

終了したのは夜の21時半過ぎくらいだろうか。

空き地に置かれていたキリコも撤収を始め、地元の方々と談笑していた茶谷市長も帰っていった。

帰っていく様子

市長も車で来ていたようで、笠師保駅の駐車場に停めていた。

神輿も見えなくなり、人々もはけて行ったあとに、車を出していた。

警官の方の話では23時半くらいまでこのあたり通行止めにしているはずなのだけど、帰っていった。

もしかして通れるのかもと思った自分は、市長のマネをして車を出してみると、入ってきたときの踏切にて通行止めをしていた警官の方が通してくれた。

国道249号線側から町の方へ入ってくるのはまだ止めていたが、逆に出ていくのは許されるようであった。

通行止めが解除されるまでまだ2時間近くあったから、通してもらえてラッキーである。

 

感想

以上、中島町の「塩津かがり火恋祭り」である。

初めて見に行ったのでわからないことだらけだったが、神輿が舟に乗って海上でランデブーするってなかなかないので、珍しい祭りだった。

道案内の流し火も幻想的だし、逢瀬に合わせたかのような打ち上げ花火も隠喩が利いているかのようで、思いを馳せるとロマンチックやらエロスやらが去来するので、想像以上に愉快で、いいお祭りだった。

見物客はそんなに多くなかったが、隠れた名祭なんじゃないかとすら思う。

写真を撮る者としても、海上の光の通路と夜空に上がる打ち上げ花火の構図は撮り甲斐があったので、来年以降、また来たいと思った。

その時は三脚を手に入れてもっとキレイに撮りたい。

いえ、三脚買いました

永遠のカメラ初心者だから三脚はいいや、そうずっと思っていた自分ですが、ついに三脚を買いました。

買ってしまった…

自分にとって塩津かがり火恋祭りは、「三脚を使って改めて撮りたい」そう強く思わせた祭りでした。

担い手不足の問題もあるようだけど、これからも残って行ってほしい祭りです。