初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

能登町宇出津のあばれ祭りで「カンノジ松明」を撮りたい

2023年7月、能登町宇出津で「あばれ祭り」が行われた。

2日間にわたって行われる祭りなので見どころも多い。

数年に渡って足を運び、少しずつその見どころを撮ってきたが、今年は「カンノジ松明」を目標に行ってきた。

 

 

コロナ禍を越えて見に行った宇出津のあばれ祭り

2019年まで3年連続で足を運んで、神輿が川に放り込まれたり、地面に叩きつけられたり、神社の境内で焼かれたりしている様を撮ってきたけど、コロナ禍が始まってからは3年連続行けずにいた能登町宇出津の「あばれ祭り」。

今年2023年、久しぶりに見に行けた。

本当は昨年も行くつもりだったんだけど、当日の大雨と体調不良で見に行けなかったのよね。

でも今年は体調も整えて、多少雨が降っていようが行こうと腹を決めて、二日目に当たる7月8日(土)の夜に向かった。

宇出津のあばれ祭りは毎年7月の第一金曜日と土曜日に行われる。

初日は夜にキリコが乱舞し、二日目の土曜日は夜に神輿渡御がある。

その神輿渡御がかなりクレイジーで、叩きつけたり川に落としたり、火に放り込んだりと、とことん神輿を痛めつける。

川に放り込んだりしている様を撮ってきた過去の記事はこちら

火に放り込んでいる様を撮ってきた過去の記事はこちら

このあばれ祭りを皮切りに石川県の能登方面のキリコ祭りが各地で開始されていくんだけど、神輿を痛めつけるなんて狂ったことをする祭りは他にはない。

あばれ祭りはかなり特別な祭りだ。

でも、何度でも見に行きたくなってしまう、不思議な魅力の祭りでもある。

過去に3度足を運んで、痛めつけるさまを少しずつ撮ることができたが、唯一撮れずに残していた「カンノジ松明」の風景を今年は目標にした。

カンノジ松明そのものは一応見たことはあるのだけど、場所取りに失敗してまともに撮ることができずにいたので改めて撮りに行きたかったのである。

しかも、今年はその一点集中だ。

宇出津に到着

自分が到着したのは22時くらいだったと思う。

あばれ祭りの二日目は21時から始まるので、すでに神輿は渡御を開始していて、神輿の前後をお供している40基のキリコもすでに町中に出ていた。

いいですな、この景色

雨が降っていたのでみんな傘を持って追いかけていたけど、このあばれ祭りは台風が来ていてもやる祭りなので、雨なんか関係ない。

どうせ神輿は川に入って濡れるし、火に放り込まれる。

(キリコはそんな目にはあいません)

キリコをゆっくりと追いかけたいところだったけど、今年は目標がはっきりとしていて一点集中だったので、そんな悠長なことはしていられない。

いわゆる「カンノジ松明」が行われる場所へ速やかに移動して場所を確保する必要がある。

川(用水?)に放り込んで火の粉も降らせるので川べりに皆さん陣取るのだけど、最前列であるその川べりじゃないと、まともに撮ることができないのだ。

ということで先を急ぐ

脇道にそれ、キリコの列を迂回して目的の場所に急いだ。

「梶川橋」という見ものポイントではちょうど神輿が橋から川の中に放り込まれていたけど、それは以前に撮ったことがあるので今回はスルーした。

 

カンノジ松明を撮りたい

今回の目的のカンノジ松明は梶川橋からさらに北へ上がっていったところで行われる。

場所はだいたいこのあたり

更に北に行くと八坂神社があるんだけど、その道中の川(用水?)に松明が設けられているのでそれを目印にすると良い。

こんな感じで

この写真では暗くて分かり辛いが、川の左端には縦に長い大きな松明も設けられている。

それがいわゆる「カンノジ松明」というものだ。

渡御する神輿は2基あるので、カンノジ松明も2本ある。

写真の場所には2本目(厳密には最初に燃えるので一本目)の松明は写っていない。さらに少し北上したところに設けられている。

距離が近いと最初の神輿のときにカンノジ松明が二本とも燃えちゃう可能性だってあるのだろう。

なんにせよ、カンノジ松明の光景を撮るならチャンスは二回。

どちらかでも撮りたい、あわよくば両方撮りたいと考えていた自分だけど、この日、松明に火が入るより前に川(用水)にかかった橋から人が落っこちるという事故が起きてしまって、救急車が行き来するため、川(用水?)脇のキリコも神輿も通る道を一時的に通行を制限していたので、最初のカンノジ松明の場所取りに完全に乗り遅れてしまったんだよね。

救急車が無事、落ちた人を乗せていくところを見届けていたら…

最初の神輿(酒垂方神輿)の「カンノジ松明」が始まっていた

民家の向こうで火の粉が上がっているのが見えた。

もちろん、火事ではない。

その方向に一本目の「カンノジ松明」があり、それに火をつけ、神輿も水の中に落として、松明の火の粉を浴びせているのだ。

そう、ここではそんなことを神輿にするのだ。

 

カンノジ松明を撮る

最初の酒垂方神輿が火の粉を浴びていたのが23時半くらいだろうか。

予定では次の神輿(白山方神輿)が「カンノジ松明」を行うのは25時、つまり深夜1時くらいとなる。

1時間以上待たなければならないのだけど、ここで動いてしまうと場所が取れなくなるので二本目の松明の近く、正確には橋の脇で待つことにした。

1時間以上も前だと見物客もあまりいないんだけど、一本めが始まる前からこの辺りで待機している人も何人かいたので、いい撮影場所を確保したいなら早めに来るしかない。

そしてカンノジ松明に着火

このころにはキリコも通り過ぎて神輿を待つだけの状態になっている。

そうなると川べりに人が集まってくる。

このときまでに川べり最前列にいないと、水に入った神輿をまともに撮ることは難しくなってくる。

自分はこんな位置にいたけど、正直、ちょっと遠い。

望遠レンズが欲しくなる。

ちなみに川の右側は山なんだけど、その山側の細い川べりにもカメラマンが陣取っていた。

ほんとに細くて狭いところなので一つ間違えたら川に落ちてしまう。

より良い写真のためなら危険も顧みない。

すげえな… ただ神輿の担ぎ手さんたちも通るので、邪魔になりそうで自分はあまり真似したくはなかったが…

神輿、やってきた

担ぎ手さんたちも準備OK

川の中、そして反対側にもまわって待機している。

良識のある一般の方は何を言っているのかわからなくなるだろうが、これからその神輿を川に落とすことになる。

しかも落として火の粉をふりかけて、川べりに神輿を何度も打ち付けることになる。

なんでそんなことを?と思うかもしれないけど、これも神様のためだ。

より痛めつけてようやく奉納が許されるのだ、このあばれ祭りでは!

現代の常識や倫理観みたいなものが通用しないのである。

行っ

たっーーー!

ドバーーーンッ!!!とね。

このポジションでも結構衝撃が伝わる画が撮れた。

そして担ぎ手さんたちも飛び込む

この担ぎ手さんたち、誰でもなれるわけではない。

キリコ担ぎを何年も経験していたり、宇出津の出身者であったり(宇出津出身の縁者の人もOKなのかな?)、人間形成がちゃんとできているかなど、条件がある。

選ばれた勇者みたいなもので、その年に選ばれた者たちしか、この神輿を担ぐことを許されない。

火の粉も振りかける

火の粉シャワーだ。

これ、大松明を棒で叩いたりして意図的に降らしている。

このように

何が何でも神輿に火の粉で焼きたいのだ。

こんな状態なので、もちろん担ぎ手さんたちも焼けることに。

一つ間違えれば大火傷。

そりゃ、厳選されるわね。

担ぎ手さんたちも神輿を川べりの壁に押し付けてより破壊していて、手のあいている人たちは、火傷しないようにだろうか、川の水を手でかけまくっているんだけど、火の粉の量の方が多いわね。

ちなみに引くとこんな高くまで火の粉が上がっているのがわかる

まるで火事現場みたいじゃないか。

でも、空も燃えるようなこの景色を見たかった。

大松明の近くで撮影すると、より迫力のある写真が撮れるのだけど、近いとカメラマンも火の粉をかぶることになるので、迫力を取るか、火傷を避けるか、選択を迫られる。

今回、自分はちょっと遠目で全体を撮ることにしたが、近くで撮っていた人の画を見せてもらったら、やっぱりいい写真を撮っていたので、自分も来年以降は近くを狙ってみようかなと思った。

こうしてみると、ほんと格闘だな

いやぁ、いいものを見れた。

一般常識的には狂っているけど、この狂気こそがあばれ祭りであって、日常では得られない発散や快感があった。

 

感想

以上、あばれ祭りのカンノジ松明の情景である。

四年目で、さらにいうと間に3年も空いているので、七年がけでようやくまともに撮ることができた。

ただ、正直、いつ川に落ちるか危険と隣り合わせだし、担ぎ手さんたちやキリコの通行の邪魔になったりで、マナーや安全面は考慮しながら撮る必要があるとあらためて思った。

先述した通り、今年はこの現場で一人川に落ちて、救急車で運ばれるという事故が起きている。

その時の様子

いつ自分たちがこうなるかわからないのだ。

今回理解したのは、大松明のそばの橋の上で待っていては危ないということだ。

細い橋なのでキリコが通行するとき、ほんと、場所取りをしているカメラマンが邪魔になる。

撮る側も楽しく無事に撮りたいので、祭りの邪魔はしちゃいけないなと強く思った。

そんな話から、自分の隣で早くから場所取りをしていたお姉さん(大阪から来ていたと言っていた)と会話する機会があったのだけど、撮り方とか色々教わって、撮ったものを見せてもらったりして、かなり刺激を受けた。

というか、自分、ずっとカメラ初心者を名乗っていたけど、どこか甘えていたところがあるなと思ってしまった。

その人も、まだまだ初心者ですって言っていたけど、カメラに対する熱量だとか、大阪からやってきてくれる行動力だとかを目にし、耳にしていると、自分ももっとカメラの勉強をしないといけないなと思った。

撮っているもののレベルが違う。

花火の撮り方とかも教えてもらったんだけど、マジメに三脚が欲しくなった。

ちゃんとやることをやると、ここまで綺麗な写真を撮れるんだなと、理解したのだ。

ついでに写真で色んな人とつながるためにインスタグラムも活用したくなった。

今更かよ、とツッコまれそうだけど、のんびり屋の自分としてはかなりの進歩だと思う。

あばれ祭りでももっといい写真を撮りたくなったので、勉強してまた行きたい。