初心の趣

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志賀町の西海祭りで月と海とキリコと妨害を撮る

志賀町の西海地区で8月に行われる西海祭りを見に行ってきた。

夜のキリコを目的に足を運んだのでその写真を以下にまとめたい。

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女性も担ぐ珍しいキリコ祭り

西海(さいかい)祭りは志賀町の西海風無地区と西海風戸地区の合同で行われる。漁業の町らしく大漁と航海の安全が祈願されるまつりだ。

世の中がお盆やすみである8月14日の夕方18時頃から行われ、24時(正確には25時)くらいまで続くキリコ祭りだ。

珍しいことに女性の担ぎ手がいるという。

一人、二人いるのではなく、昔より女性も担ぐものなのだそうだ。

その珍しさに惹かれて、この度見に行ってきた。

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18時ギリギリに到着

西海地区に到着すると写真のように迂回路の案内がいくつもあって、車だとウロウロとすることになる。

駐車場の案内もあるので助かるのだけど、スタート地である神社(自分は風無地区の西海神社にむかっていた)からはその駐車場がちょと離れたところにあったので時間がかかった。

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海とは反対側の山の方にある…

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駐車場に停めた

見晴らしはいいけど、坂なので歩くのがなかなか大変であった。

もっと下の方で路駐をしている車の列があり、もうちょっと早めに来ればよかったかなぁと正直思った。

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町の人が向かう方向に一緒に進んでいく
駐車場から神社までの道のりもよくわかっていなかったので、とりあえず坂を下り、鉦の音を頼りに歩いて、人の流れに乗っかったような形で神社へと向かった。

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あ、道路にキリコがいる

と、遠くにキリコの姿を目にして、この道で正しかったのだと安堵したのだけど、道路にキリコがいるということはすでに神社を出た後だなとすぐに気づいた。

結局、最初の神事には間に合わなかったわけだ。

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西海神社は出払ったあと

キリコもすべて出立したあとで、人の姿もこうして参拝している人くらいであった。

ほんと、ちょうど神事が終わったあとに到着してしまったようなのだ。

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くやしさから狛犬

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撮影

西海神社の狛犬、なんか可愛かった。

潮風を受けているからか表面がザラザラしているようでどこかツルンっとして見える肌をしていて、それがまた可愛さを助長していたように思えた。

狛犬写真家を自称しようかと目論む自分なのでもっとじっくり撮りたかったけれど、目的はまつりなので、我慢してキリコの方に向かうのであった。

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キリコは待機中

神社前の細い路地から車道に出たところでキリコが置かれていた。

これから町内を担いで練り歩くことになるのだけど、それまで一休みといった具合だった。

ここのキリコはどれもそれほど大きなものではないものの、重いは重いのでずっと担ぎっぱなしでずっと移動ということはできるものではない。

どこのキリコ祭りも同じようにこうして休んではちょっと進み、また休んではちょっと進みを繰り返している。

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女性が何人もいる

浴衣に腰巻きをして白い前掛け姿の女性が何人もいる。

まつりに参加しているわけだけど、ただ参加しているだけじゃなくて、この女性たちもキリコを担ぐのだ。

漁に出ていて不在がちな男衆に代わって女性たちが担いできたという伝統があるという。

彼女たちはタスキみたいなもの(「おこし」という腰巻きの一種らしい)もかけているんだけど、その色が赤色だと未婚の女性、ピンク色だと既婚女性と、ひと目で分かるようになっているそうだ。

中には中学生っぽい子達もいた。

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男子のキリコの担ぎ手たちはこんな格好

白のYシャツに白のパンツ、そして黒のチョッキ姿だ。

男も女もその足には草鞋か足袋を装着していた。

担ぎ手は女性も多ければ学生みたいな若い子も多くて、働きざかりの男たちは漁に出ていないときでも行われてきた祭りなんだろうなということがうかがえた。

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神輿の担ぎ手たちはこんな法被姿

こちらも高校生や大学生くらいの若い男たちだった。

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太鼓や鉦はご老人たちが多かった

祭りによっては子供や女子が叩いていたり鳴らしていたりするのでいろいろと逆に見えた。

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日が沈み始めると動き出す

奉燈に明かりが灯り神輿渡御にあわせてキリコも町中を練り歩く。

ご覧のように女性たちも担ぐのだ。

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ゆっくり時間をかけて町をまわる

18時くらいから始まって、これから深夜0時くらいまでかけて地区をまわる。

約6時間くらいかかるので撮る側もなかなか根気がいる。

 

海と月とキリコと

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休憩ポイントになっていたバス停

夏とはいえ夜の7時過ぎになるとあたりは暗くなってくる。

写真を撮るうえで光量が足りない問題が発生してくるけれど、奉燈はやっぱり暗くなってきてからのほうがキレイだ。

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夜のほうがキレイ

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もちろん神輿も

こちらは休憩中の神輿。

光量が少ないので撮りづらいものの、街灯の下で休憩してくれたりする瞬間もある。

自分は基本的にフラッシュを使いたくないので、そういった時をよく狙っていた。

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この日は月も出ていた

2019年の8月14日は月齢13(二日後が月齢15の満月)だったので、ほぼ丸い形をしていた。

追いかけながら、この月もあわせて撮りたいなという、そんな衝動にもかられた。

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女性たちの力強さも撮りたくなる

追いかけていると、休憩ポイントあたりで女性たちでキリコを持ち上げたりもしていた。

男でも大変だろうなと思うことを女性たちでやっているのだからちょっとビビる。

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振り回したりもしていた

まあ、なにせが元気。

男勝りというより、徒党を組んだときの女子たちの怖さみたいなものを学生の時以来に感じた。

あまり女子には逆らわないようにしようなどと考えるようになった若かりし自分が懐かしい。

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男衆も負けじと持ち上げてましたけどね

学生ではなく、屈強な男たちが担ぐキリコも有り、みんなで元気玉を作っているみたいに軽々と持ち上げているように見えた。

こうして持ち上げたりするの、一つの見所のようになっている。町中をめぐりながら結構やっていた。

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担ぎながら坂を下る屈強な男衆

また、西海地区は海のそばなので夜の海と奉燈の明かりを撮れるチャンスがこの祭りにはある。

こうして坂を下っていくと…

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海の方にでる

港まわりをぐるっとそれなりの距離を進んだり休憩したりするので、水面に映る奉燈の画も狙うことができるのだ。

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月もあわせて海と撮影

上手い人が撮ればもっとうまく撮れるだろうなと思いながら撮影。

これ、構図的に月灯りの水面の反射は入れなくてよかったなぁと後で反省した。

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月とキリコ

休憩中、順番に太鼓を打ち鳴らしていたりもしていて、こうして人が写らない瞬間もあった。

あくまで一休みの瞬間なのでこれで終わりではない。

この祭りは後半になるほど少々荒っぽくなる。

 

神輿とキリコと妨害と

穏やかに月と海とキリコを撮ってきたのだが、そのうち風無地区と風戸地区の2地区のキリコが合流するポイントがあって、そこでは激しく神輿や奉燈同士をぶつけ合ったりしていた。

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海から再び坂を登った先の交差点にて

高々と持ち上げる、その魅せあいをしているのだろうと思っていたら、そのうち気分が高まりすぎたように割り込んで、結果的にこうして神輿や奉燈がぶつかり合っていた。

何をしているんだこの人たちはと一瞬思ってしまうけれど、これもまたこの祭りの一つの見せ場のようになっているようで、この交差点の周りには早くから人だかりができていた。

動画、静止画問わず、カメラを構えている人も何人もいた。

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女性だからと関係なし

これもまたマジか?!と思ったけれど、女子が担ぐキリコだからといって遠慮しているところがなかった。

屈強な男たちが意地をぶつけるように奉燈を振り回し、その圧でふっとばされそうになるところを踏ん張る女性たち、という光景もあったくらいだ。

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どう見てもぶつけようとしている

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というか、ぶつけている

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どう見ても…ね

そんなもので、ちょっと破損していたキリコもあった。

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見上げる女性

心配そうに見上げているだけの女性、なんて構図ではない。

彼女もまた戦った1人だ。

正直、すげぇなと思った。

しかし、この祭りの激しいところはこれだけではない。

最後、町を回り終えて再びそれぞれの神社に神輿が戻っていくのだけど、そのときにも悶着のようなことが起きる。

もちろんアクシデントではなく、毎年そういうものだと行っている事があるのだ。

それが「拝殿への神輿の納めをキリコが妨害する」である。

実は自分、女性がキリコを担ぐ姿も見たかったけど、その妨害も見たくてこの祭りにやって来ていた。

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ということで一足先に神社に戻る

神輿たちがまだ町内の渡御を続けている間に先にやってきた。

自分自身の休憩も兼ねている。さすがに6時間近く外にいると疲れもあった。

境内には同じように場所取りをしていたカメラマンがちらほらといた。

考えることは皆、同じだ。

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そのうち子どもたちが担ぐキリコがやってくる

ほんと、小学生くらいの子どもたちが担いでいた。

さすがにこの子たちは「妨害」には加わらず、このあと境内の隅で待機することになる。

それでも威勢よく拝殿の前でキリコを持ち上げていたからたくましいものだ。

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せいやっと

先生だろうか、大人たちの力も借りながら持ち上げていた。

一番声が出ていたんじゃないかと思われるくらい、元気に持ち上げていた。

もう夜中の0時だというのに。

子供は寝る時間だけど、さすが祭りだ。

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他の奉燈も続々と入ってくる

入ってきては乱舞して、入れ替わらずに留まって一緒になって乱舞するから境内がキリコでひしめき合うようになってくる。

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そう広くない境内あちこちでワッショイワッショイ

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女の人達もガッツリと持ち上げていた

こんな調子なので、ここでもキリコ同士でぶつかりそうになること多々ある。

そこに神輿も登場すると、拝殿へ納めようとするところを今度は露骨に妨害するので、ひっちゃかめっちゃかになってくる。

なんでも祭りをまだまだ終わらせたくないから、神輿の妨害をするというのが伝統なんだとか。

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神輿が拝殿に近づくとブロック

通させまいとこんなに傾けてくるんだから、もうアタックだ。

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「あ~ん?」と、もう、メンチ切り合っているようだよ…

ハチャメチャだけど、見ていて興奮してしまう。

ときに数基で止めることもある。

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ジェットストリームアタック敢行

なんだろう、もう笑ってしまう自分がいた。

男も女も関係なく、キリコをワッショイワッショイしながら、すきを見て拝殿に向かおうとする神輿を妨害するのだ。

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中学生くらいの子(男女)たちもこの輪の中にいた

おじいちゃんと呼ばれる人たちも担いでいたし、もう年齢も関係ない。

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もちろん神輿も負けていない

熱気凄まじく担ぐ彼らを見ていると、もうちょっと見ていたいという気持ちに確かになってくる。

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そして駆け上がる神輿

フィナーレはその時やってくる。

ギャラリーも一斉にスマホを掲げていた。

携帯電話が登場するまでこんな光景はなかったであろう。

いまどきだ。

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鳥(鳳凰)をゲット!

この瞬間をもって、神輿が拝殿に納められることに。

妨害という名の大乱舞は、これにて終了するのであった。

自分は担いでいたわけではないのに、やりきった感がドンッとあったのだった。

 

感想

以上、西海祭りを6時間近く追いかけて目にした光景である。

女性が担ぐ珍しいキリコ祭りで知られるが、女性らしくソフトな祭りかと思ったら、結構にハードであった。

男がやっても大変そうなことを女性も一緒にやって、未成年まで参加しているのだから開口してしまう(もちろんいい意味で)。

それでいて、渡御では海や夜空とキリコがマッチしてきれいな風景を作っていたのだから、硬軟一体として魅力に溢れたまつりであった。

長い時間追いかけただけあって、終わった後の達成感もひとしおで、多幸感まで味わえたような気がした。

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奉納後の最後の神事中

納められた神輿を撮っていると、終わってほしくはなかったという気持ちと、無事終わってくれた安堵が交錯して、最後にはしんみりとしてしまった。

想像以上に良い祭りであった。

現地で話しかけてくれたカメラマンが毎年撮りに来ていると言っていたがその気持もわかる。

月と海とキリコの写真をもっとうまく撮りたいという欲もあるのでまた見に来たいものである。