珠洲市で行われている「奥能登国際芸術祭2020+」で目にした作品の紹介、第四日目その3だ。
今回は作品番号21、クレア・ヒーリー&ショーン・コーデイロさんによる「ごめんね素直じゃなくて」を取り上げたい。
正院本町交差点の側の旧喫茶店
正院エリア内にあるNo.20~23は共通の駐車場が設けられていて、どれもそこから歩いていける。
今回紹介するNo.21の作品もその駐車場からすぐ近くにある。
駐車場から正院本町交差点へ
旗が立っているところが正院本町交差点だ。
この方向からだと、交差点を左に曲がるとNo.21の作品が置かれた建物がある。
左に曲がった景色
交差点から3件先にまた旗が立っている。
そこが目的の場所だ。
ぐるっと回って反対方向から
旧喫茶店「アンアン」だ。
正院交差点も奥に見える。
見てわかるように、「アンアン」の前にも駐車できるスペースがあるので、この作品だけを見に来る人は内浦街道からやって来て直接この旧店の前に停めてしまえば良かったりする。
そういう人も何人か目にした。
21番 クレア・ヒーリー&ショーン・コーデイロ「ごめんね素直じゃなくて」
21番だ
作者のクレア・ヒーリーさんとショーン・コーデイロさんはオーストラリアの方で、消費社会からこぼれ落ちたものを使ったり既存の建物に介入して彫刻やインスタレーションを展開している方々だそうだ。
この入り口の古さ
既存の建物感ありありだ。
いざ介入(入室)
喫茶店でありながらバンドのステージなんかも設けられていたようだ。
いまでもそういうステージがある喫茶店って金沢市でも何件か見かけるけど、ステージがあるだけで懐かしいと言うか、レトロなお店に思えてしまうのは自分が昭和生まれだからだろうか。
なんかいた
一歩踏み込むと巨大な何かがいた。
ステージがあるとはいえ決して店内が広いわけではない。
そんな広くない室内に、その半分は占拠していそうな巨大な丸いものが置かれていたのだ。
存在感ありすぎ
月だ。
でかすぎる満月だ。
案内板には作品に触れていはいけないと書かれてあったけど、部屋の奥の方に行くには体を平べったくして、僅かな隙間を抜けていかなくてはならないほど、デカい。
全体を撮ろうとすると狭い部屋の隅の方まで下がらないとフレームに収まらないほど、デカかった。
何故、月か?
ガイドブックによると、昔の漁師たちが月の満ち欠けを頼りに海に出ていたことに着想を得て「満月」を制作したとのことだ。
しかもこの満月、漫画雑誌の古本を材料に作られているという。
近寄ってアップに
本当に漫画雑誌が何枚も、何層にも貼られてあった。
遠くから見るとクレーターとかがちゃんと再現されていて、その質感は月の陸地そのもののように見えて仕方ないのに… 目の錯覚って不思議でならない。
もっと奥の方へ行くと、さらに月の陸地感が増す。
隙間を縫うように進んで奥へ
昭和レトロなカウンターがある。
こういう感じの喫茶店、子供の頃に近所にもあったなと、ここでも懐かしくなる。
一番奥には本棚が
漫画本が置かれた本棚がある。
その手前にワイヤーが張ってあったので本に触れて取り出して読むことは出来ないけれど、そのワイヤーのあたりまでやって来て、そこで反転して「満月」を見ると、明かりの具合からか、より月っぽく見えた。
ドンッと
月が部屋の中に転がっている。
ランプのような照明のせいか、特に左下のほうが影になって、陰影が満ち欠けにも見えるのだ。
色んな角度から撮ってみたけど、自分の中ではここから撮ったものが一番キレイに写っていた。
外からの光も関係していると思うので、その日の天気や入室しているときの時間によっても違ってくるだろう。
それにしてもクレーターがうまいこと作られているなとここでも感心する。
月に人が住むようになったら、クレーター部分が盆地のようになって居住区を作ったりするのだろうかと想像してしまった。
一つ前に見たNo.22「海図」に続き、宇宙を空想する作品であったので、やっぱり未来には宇宙に行けと言われているような気が個人的にするのだった。
浪漫が詰まった球体ではないか。
パカッと開いて武器とか出てこないよね(「GANTZ 」みたいに)、とも思ったけどね…
自分もマンガで育った人間だと改めて自覚する…
マンガが素材になっているその表面を再びチェック
最近はほとんどマンガを読まなくなっているので、主にどんな漫画雑誌の古本を使っているのかいまいちわからなかったけど、よくよく「満月」の表面を撮って観察していると、「これ、少年誌じゃないよね」という感想が湧いた。
艶めかしい表情のシーンの多いこと…
そういえばこの旧喫茶店の名前も…
これ以上はやめておこう。
少年少女にはあまり見せられないかもしれないけど、彼ら彼女らにはこれもある意味ロマンだろう。
感想
狭い旧喫茶店内の半分は占める月のインスタレーションはいろいろとロマンにあふれていた。
自分も子供の頃は漫画ばかり読んでいたので、あの存在感のある満月を漫画雑誌の古本で制作してくれているというだけで親近感が湧いたし嬉しかった。
マンガってそれこそ空想力、妄想力の塊みたいなものだから、巨大な満月がそれら想像する力の塊であって象徴のようにも思えたものである。
悔やまれるのは、この作品、外からだけだけど夜間鑑賞があることだ。
時間の都合で夜に見に行けなかったのだ。
夜っぽい雰囲気で一枚
この写真を見ていると月を探索してみたくなる。
やはり次世代は宇宙だ。月旅行、してみたいものである。
月で芸術祭が行われるような未来が来ることを楽しみにしたい。