9月に開催し、延長もあって11月5日まで続いた奥能登国際芸術祭2020+へ、10月4日に四回目の鑑賞旅に行ってきた。
そこで目にしたトゥ・ウェイチェン(涂維政)氏による「クジラ伝説遺跡」を紹介したい。
実は9月にも行っている
今回紹介するトゥ・ウェイチェン(涂維政)氏による「クジラ伝説遺跡」は、石川県にまん延防止等重点措置が適用されて一部の作品のみの限定公開であった9月にも鑑賞できた(屋外にある一部のみ)。
9月に2回目の鑑賞旅を行っているときに、この作品も見に行っているので、屋外にあるものは基本的にそのときの写真を使わせていただきたい。
ということで7番を求めて日置ハウスへ
前回2017のときにもキジマ真紀さんの作品が展示されていたところだ。
急な坂を登って行くことになるので車のほうが行きやすいが、道が細いので車同士のすれ違いにはなかなか神経を使う。
矢印の案内板があるので、そう迷うことはないだろう。
到着
日置ハウスは旧日置小中学校のことで、現在は滞在交流施設として活用されている。
作品はグラウンドだったところに置かれているので、まずは建物の左側へまわる。
矢印も立てられているのですぐわかる
矢印に従って歩いていくとグラウンドに出る。
なんか見えてきた
グラウンドの奥になにか掘り起こした跡のようなものが見えてくる。
工事中とかそういうのではなく、その掘り起こしたような場所が作品の展示場所である。
なにせ、遺跡だから。
7番 トゥ・ウェイチェン(涂維政)「クジラ伝説遺跡」
7番だ
作者のトゥ・ウェイチェン(涂維政)さんは台湾の方で、考古学的発掘と現代生活を融合する作品で知られる。
今回の作品もまさに発掘だ。
作品名からもわかるようにクジラだ。
クジラ?
鯨っぽい巨大な海洋生物の化石らしきものが発掘されたようである。
鯨と言いながら、でもそれには後ろ足が付いている。
堂々たる後ろ足だ
デカい。
哺乳類のクジラじゃなくて爬虫類の恐竜の化石なんじゃないかと思えてしまう。
それでいて両生類のイモリが巨大化したらこんな感じになるんじゃないかとも考えてしまう。
頭部はクジラなんだけどね
くじらの骨格の標本とかを見るとだいたいこんな形をしているので、後ろ足以外はやはりホエールだ。
それにしてもよく出来た化石だ。
珠洲市には巨鯨魚介類慰霊碑なんてものもあり、クジラにまつわる伝説も多いことからこの考古遺跡を偽造したとのことだけど、口元に転がっているスコップだとか、石が入ったカゴだとかが臨場感ある。
そのディテールのこだわりが自分にはすごく好みだ。
たとえばこういうのとか
2020年3月3日に珠洲で発掘されたってことを示すものだと思われる。
こういう紅白のポールとか
こういう発掘に使う道具と道具袋とか
でかい物差しみたいなものだとか。
さり気なく置かれているのがツボる。
自分は写真でもメインの被写体よりも背景の細かいところに目が行きがちで、趣旨とは離れたところに興味を持ってしまったりするので、こういう演出は楽しい。
別に発掘をするわけでもないのに、こういう職人の道具をワンセット持っておきたいなんて思ったりもするから、我ながら困ったものだ。
全て見られるようになって
10月になると石川県内のまん防も解除されて、奥能登国際芸術祭2020+でもすべての作品が鑑賞可能になった。
「クジラ伝説遺跡」も、まん防中は「一部公開」扱いになっていたのだけど、はっきり言ってグラウンドの遺跡だけで9割は見たも同然だ。
すべて鑑賞可能になって、あと何が見られるのか確認するために、10月4日にもう一度やって来た。
旧学校の玄関脇にもう一つ7番の案内板が立っていた
9月に来たときには閉まっていた倉庫みたいなところの扉も開いていて、そこにモニターが設置されていた。
覗き込んでみると、なにやらワールドニュースみたいな番組が流されていた。
こういうの
ワールドニュースみたいな作りで、「石川県珠洲市で謎の生物の骨発見」とテロップが出ているんだから、どんな冗談だと思う。
グラウンドで目にした発掘現場の映像も
出演しているの、珠洲の地元の方だろうか?
学者なる人も登場
インタビュー映像も交えて報道ニュースのように仕立ててくるのだから愉快だ。
もちろんこれらはフェイクニュースだ。
考古遺跡を偽造して、その発掘現場のフェイクニュースまで作る、この学園祭を楽しんでいるような感覚が自分にはたまらない。
本来、偽造もフェイクもいけいないものなんだけど、これをアートに昇華させているんだから芸術って奥深い。
学園祭をするだけでいいので、学生時代に一時的に戻りたくなったよ。
(ちなみにこの映像はYou Tubeにもアップされていた。「珠洲 遺跡」とかで検索すると出てきます)
感想
旧学校のグラウンで学術的な偽造を行って、学園祭的なノリでフェイクニュースまで作ってしまう、そのセンス、ステキだ。
何でも、遺跡は作者の方がコロナ禍で来日できず、資料をもとに珠洲の地元の人達で組み立てたという話だし、フェイクニュースに登場している方々も珠洲の人たちではないかと思われるので、参加した人たち、楽しかったのではないかと思う。
自分が珠洲市民で関係者に近かったら、自分も参加したかったと思ったくらいだ。
そんなもので、自分にはもう、この作品が一つの祭りに見えて仕方がない。
ロケーションもいいし
自分は「日々、思い出づくり」をモットーに生きているのだけど、この景色も含めて、参加した方々がいい思い出を作れたんじゃないかと思えて、ちょっと羨ましくなった。