怪しまれても路地を進む…
廃駅の旅、18回目だ。
最初、間違える
のと鉄道の廃線を中心に使われなくなった駅をめぐる個人的な旅も18回目だ。
今回は前回の旧能登線羽根駅の次にあたる「小浦駅」に向かった。
「小浦」は「こうら」と読む。
能登町の小浦というところにある。
まず先に言っておくと、この廃駅は車で向かうことができない。
前回に引き続き県道35号線沿い近くにあるのだけど、民家の狭い路地を抜けて高台のようなところを上っていく必要がある。
ちょっと小高いところにあるのだ。
まずは地図
グーグルマップにもちゃんと載っているものの、どれだけ拡大しても県道35号線から駅跡までの道路が現れない。
車が通れる道がないのである。
そんなもので車で行く場合は県道沿いなど、邪魔にならないようなところに一旦停車する必要がある。
自分はひとまずこの近くに停めた
お食事処「古民家 能登屋」の近くにひとまず停めた。
グーグルマップのストリートビューを事前に確認していたところ、このお店があるブロック塀がちょうど良い目印になったので、ひとまずこのあたりへ向かったのであった。
目的の廃駅へたどり着くには写真でいうと奥に見える山の方へと入っていく必要がある。
事前に調べたものの、どこの路地から入ればいいのか正直自分にはわからなかったので、このあたりに車を停めて、徒歩で探そうとしていたのであった。
写真のブロック塀のもう少し先に緑色のネットが張られているところがあるかと思う。
そのあたりの路地から入っていって探していた。
とりあえずこの路地から
すると遠方、坂状に山へと上がっていく白い手摺が目に入った。
写真にも映っているかと思う。
目的の旧小浦駅が高台にあるということから、これを上っていけば辿り着けるんじゃなかろうかと思い込んだ自分は、次にはその手摺のある坂の登り口を探していた。
一つ先の路地へ
県道をもう少し進んで隣の路地へ入った。
遠くに手摺のある坂の登り口が見えたので端まで歩いていった。
どことなく道幅が広く、車も入っていけそうな気がしたけれど、まあ気にせず直進していた。
階段発見
白い手摺があったのは坂ではなく階段だった。
傾斜も強くないのでもちろん上る。
上りながら高台の方を見上げて、あれ? 何もなさそうだなと不安になりながらも最後まで上った。
なんだったら駆け足で上っていたかと思う。獣や蛇が出ないかと、そんな心配もしてしまっていたからだ。
上りきった
何もなかった。
本当に、なにもなく、草ばかり生えている高台だった。
おそらく線路跡だったのであろう、遠くにトンネルらしきものは見えたものの肝心の廃駅っぽいものが何もなかった。
旧小浦駅って何もかも潰して跡形もなくなっているんだっけ?と疑ってしまったほどだった。
いや、違う。
自分は間違っていたのである。
階段の登り口が見えた路地が車も入っていけそうなほどそれなりに幅があったときに気づくべきだったけど、その路地は違っていたのだ。
正しい路地(道順)
道を間違えてしまったので再び県道35号線まで戻って仕切り直した。
県道をさらに珠洲方面へ歩いていくとバス停も見えてくる。
「本小浦」のバス停
廃駅の旅をしていると廃駅の近くにはだいたいバス停があるという法則のようなものがあるのを思い出す。
この近くの路地のような気がして、まるで不審者のように民家と民家の間の路地をウロウロしてみたところ、目的の旧駅を見つけることができた。
跡形もなくなっているのでは?とも先には思ったけれど、安心していただきたい、旧小浦駅はまだその形を残している。
ということで、その正しい道順から記したい。
本小浦のバス停から県道をもう少し進む
バス停から少し進むと電柱の影に隠れてゴミステーションのカゴが見えてくる。
それを横目にさらに歩いて白い壁の家の前まで進む。
白壁の家
白壁の民家と、さらにその隣の縦長の家の間に細い路地があるのがわかるだろうか?
車も通れないような細い道なのだが、今回に限ってはその狭さこそがいい。
広いと間違い。
旧小浦駅に関してはこれが鉄則だ。
曲がるとこんな景色
比較する自動車はないもののその狭さが伝わるだろうか?
バイクや自転車しか通れないような路地だ。
ここを真っすぐ進んで…
突き当りへ
まわりすべて民家なので説明しづらいけど、この民家(民家ばかり)の突き当りでさらに左に曲がる。
左に曲がるとこんな路地に
ちょっと坂になったこの道もやっぱり車では通れない狭さ。
民家の玄関の一部のようにも見えて、人んちの敷地に入っているような感覚がある。
ここも少し進むと…
この分かれ道に
T字状の分かれ道がすぐ現れる。
左は少し下り、右は上りになっていく。
目的の廃駅は高台にあるので上っていく右が正解だ。
右に曲がった先の景色
上の方に行くにつれ、だんだんと畑が見えてくる。
青いネットなんかも畑で使われているものだ。
さらに進むと…
見慣れた看板が
廃駅の旅にて能登町に入ってからというもの、旧能登線の廃駅の近くにはのと鉄道の良さを伝える看板が必ずと言っていいほど置かれていた。
この坂を登っていくとその看板が現れたので、いよいよこの道が正しかったと確信を持つのであった。
白と青のいつもの看板
のと鉄道協力会とのと鉄道利用促進協議会、そして能登町による看板だ。
さらには津波避難場所の案内板も
ここにしっかりと旧鉄道小浦駅周辺とも書かれてあるのだから、もう間違いではない。
旧小浦駅のいま
路地から畑の脇の小さな坂を登っていくと柵が見えてくる。
鉄柵と木柵の2つがあって、その間に挟まれる細い道が旧小浦駅のプラットホームへと続いていた。
こんなところだ
線路は撤去されているがホームがしっかりとあるので駅らしい形を残している。
ホームにかかる木の枝は、これ、桜じゃないだろうか?
出向いたのが5月のGW中であったから、もう花見の季節ではなかったものの、いい木陰を作っていた。
近寄ってみると木陰具合がよくわかる
花見のシーズンに来るのも良いところだなと、これだけで思う。
さらに進むと待合室も残っていたのだが、ここがまたちょっとすごい。
かなりガタきてる
襲撃にでもあったのかと見間違うほど、ヤラれている。
近寄ってみるとこうなってた
どうだろう、この壊れっぷり。
高いところにあるだけに、ここが山城で一戦(ひといくさ)した跡のように見えてくるのだ。
というか、いつ落下してもおかしくない状態ですな、これ。
どうやって支えられているのか、不思議だ。
側面もこうですもん
吹き抜けみたいじゃないか。
冬の雪用にママさんダンプとかも置かれていたんだな、ということがわかるけど、そのママさんダンプからしてこの破損ぶり。
何だったら内側に草なんかも生えちゃっているんだから、久しく人が立ち入っていないと推測される。
時計もあった
内側に時計もあった。
1時35分を指して止まっている掛け時計だ。
掛けられておらず窓際に置かれているところが、何かしらのSOSを発しながら窓際で朽ち果てたみたいでちょっと不気味だ。
反対側の壁もご覧の通り
こちらのほうがまだダメージは少ないが、よその廃駅と比較するとこれでも結構破損している方だろう。
トタン屋根も欠けているのがわかる。
ホームの上にも屋根の一部が落ちているしね
一体何があったと言うんだ?
RPGで山を越えて次の城や町に到着したらそこが魔王軍にヤラれて廃墟になっていたという展開は何度か経験したことがあるけど、それに似ている。
枕木、発見
ホームの下に使われなくなった線路の枕木が置かれていた。
ロールプレイングゲームを連想していたからか、こんなものもお宝発見、重要アイテム発見のように見えたりした。
ちなみにこっちから撮るとまだ生きている感じはする
ちょっとボロボロになっただけの廃駅の待合室、といった情景である。
もっとも、手摺とかを見ると、やっぱりひん曲がっていたりするし、柱もサビサビだし吹けば崩れるような状態ではなかろうか。
大きな地震とか来たら、待合室がそのまま斜面を転がっていかないかと心配になる。
あ、こっち側にも畑
上ってきた斜面とは反対側の谷の方にも畑があった。
畑、平和だ。平和に野菜が育てられている。
なんだろうか、このギャップは。
もう戦の時代は終わったと、そういうことだろうか?
まとめ
以上、廃駅の旅18回目、旧小浦駅の今の様子である。
もう待合室がボロボロになりすぎていて旧小浦駅が使われなくなって廃れた山城のように思えてしかたがなかった。
畑の方から撮るとなおそう見えた
古代の動かなくなった移動要塞の一部みたい。
これはこれで格好はいいのだがね。
ここに来るまで色々と迷ったので、道順も今回記してみたが、その行き方だけが正解というわけではない。
路地はいくつかありウロウロ、クネクネしているうちにこの畑の方に辿り着けてしまうこともある。
もっとも、人んちの敷地内を歩いているようなもので、またこの畑も所有者がいるわけなので一つ間違えると不審者として見られることを肝に銘じておかなくてはならない。
怪しまれたら即説明、即平謝りを推奨したい。
無事且つ迅速に旧基地(廃駅)へ到達できることを祈るばかりである。