初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

廃駅の旅28 「上戸駅」

「うつしみ」がまだ残っていた…

廃駅の旅、28回目だ。

今回は珠洲市にある旧能登線の上戸駅に行ってきた。

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能登国際芸術祭でも使われていたところ

のと鉄道の旧能登線を中心に使われなくなった駅をめぐる廃駅の旅も28回目だ。

能登線の残りも少なくなりラストスパートでピッチを上げて続けて書いてしまっているが、ひとえにもうじき奥能登国際芸術祭2020+が始まるからである。

芸術祭では廃駅もアート作品に組み込んだり展示場所になったりするので、当初の目的としては国際芸術祭が始まる前に珠洲市内の廃駅全てを回りたかったところだ。

思った以上に数も多く、また自分がのんびりマイペースなので芸術祭の事前に行けた廃駅は今回の上戸駅までである。

その上戸駅も奥能登芸術祭2017で作品の展示場所になっていたところである。

ちなみ「うえどえき」と読む。

場所は石川県珠洲市上戸寺社というところにある。

地図にも載っている

行き方としては素直に国道249号線を使うのが一番わかりやすいかと思う。

地図を拡大すると載っている「はっとり理容店」のある曲がり角で曲がって行くとたどり着ける。

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最終的にこんな道にでる

はっとり理容店で曲がってさらに右折するとこんな道にでる。

まわりは畑や民家ばかりで特に名前のある道ではない。歩いてみるとかなり静かな通りだった。

オレンジの車が止まっているところまで進んでいくと、そこがもう旧上戸駅になる。

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よく見ると鉄道らしい柵も

能登線でよく見られた柵が民家の裏に見られた。

そこに線路が走っていたのだろう。

これがあるということはもう駅も近い。

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到着

大きな木が並んでいることもあって、この角度からだとどこに廃駅があるんだと分かりづらいところであるが、その木々に隠れてホームや待合室が残っている。

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さらに近づく

それっぽいものが残っているのがわかるだろうか。

こちらは待合室の背中側になるのでちょっとわかりづらいのだ。

逆に反対側から見ると、遠くからでも「あ、そこに駅がある」とすぐに認識できてしまう。

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黄色の案内板あり

こちら側まで進んでみると奥能登国際芸術祭2017で見られた作品の案内板が残されていた。

先程も記したとおり、この駅は奥能登国際芸術祭2017で作品の展示場となっていたところで、自分も当時、2回くらい足を運んでいる。

ライトアップもされる作品であったので、昼と夜に2回観に行ったのだ。

芸術祭で観に行ったときの記事はこちら

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黄色の案内板

なつかしい。

作品番号とかはなくなっているけど、作品名と作者名が書かれたこの黄色の案内板のスタイルは当時を思い出させるものだ。

インドのアーティスト集団であるラックス・メディア・コレクティブによる『うつしみ』という作品が展示されていたのだ。

この案内板が残されていることから察する方も多いかと思われるが、実はその『うつしみ』、芸術祭2017以降もずっと残されていたようなのだ。

 

アートとして残る廃駅

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こっから入っていける

芸術祭のとき、プラットホームや線路跡には入ってはいけない旨が書かれてあったものだけど、現在ではこうして待合室の傍らの入口が開いていて簡単に入っていける。

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百年木、発見

柵の開いた入口手前の木が「百年木」として植えられていた。

1991年からのようなのでまだ30年くらいのものだろうか、幹の太さもまだまだ細い。

この木の脇も抜けて…

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ホームへお邪魔します

柵もバリケードもなにもないので、普通に入っていける。

向こう側は田畑になっていて、芸術祭のときはその田畑の方にまわって、正面から作品を鑑賞していものであるから、こうして待合室に近づくのはちょっと新鮮な心地がした。

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ホームと待合室

こんな感じで、いかにも古くなった廃駅といった印象がある。

その庇も剥がれていて骨がむき出しだ。

待合室には鍵がかかっていたので中に入ることも出来なかった。

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横の窓からこんにちは

入れないものの中はそれなりにきれいだった。

こうして見ると窓ガラスもちゃんと拭かれているのか透明度が強かった。

庇とは随分と差がある。

むしろ作品のために庇を敢えてさっぱり外して骨だけにしているのかも知れないと、そんなことも頭をよぎった。

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見上げると骨組みの作品

こうして見上げると待合室の屋根の上に骨組みの作品「うつしみ」が残っているのがわかる。

夜にはライトアップされてファミコンで描かれる街の夜景みたいな姿を浮かび上がらせていたのが懐かしい。

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壁には「電力」と書かれたものも

これを開けて何かしらのスイッチによって作品を光らせていたのかどうかは不明だけど、いまでも光ってくれるんじゃないかとそんな期待もした。

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正面に回って見てみよう

芸術祭のとき、この右端の方から正面に回るように促されて、田畑のあたりから作品を鑑賞したものである。

ここを通ると、あの頃の記憶が蘇ってくる。

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横から見た待合室とホーム

そうだ、そうだ、こんな感じだったと四年前の懐かしさがこみ上げてくる。

ついでに進入禁止のマークが描かれた小さな黄色の案内板にも見覚えがあった。

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「プラットフォームと線路には入らないでください」の文字

そういえばこんな文字が書かれていた。

もうすでにホームには入って写真を撮ってしまっていた後だったので遅い…

見なかったことにしよう…

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こんな感じに正面へと回り込んでいく

畦の上を歩けるようになっている。

芸術祭で夜に来たときは足元が暗くて、どこを歩いているのかちょっとわからなくなっていたので、昼にこうしてやってくると妙な安心感があった。

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真正面からドーンと

畦道を通ってこのように待合室を真正面にすることだってできる。

ここからだと作品の形がよく分かるが、なにを模しているのかはいまでもわからない。

わからないので勝手に想像する。

アートなんて出来上がったら作者の手を離れるものだと自分は思っているので、解釈は見る者それぞれの自由というものだろう。

やっぱりファミコンの8ビットで描かれた背景なんだよなと、自分の目には映ってしまう。

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個人的にはこの角度からの姿が好き

空の雲まで8ビットに見えてきた…

と思えたのは気のせいだろうか?

何度も言う、解釈なんて観る者の自由だ。

 

まとめ

以上、いまの上戸駅の姿である。

とはいっても、撮影したのは7月のことでこうして8月に記事にしているので前回の鵜飼駅同様にタイムラグは否めない。

9月からは奥能登国際芸術祭2020+も始まるので、いまもこの姿であるとは断言できない。

ただ、購入した2020+の公式ガイドブックによると、この『うつしみ』が今回も作品の一つとして数えられているので、芸術祭が始まってもこの姿は案外そのままなのではないかと思われる。

むしろ、夜には再びライトアップされる期待もある。いや、きっとライトアップされると思われるので、自分は芸術祭期間中に日が沈んでから再びこの廃駅へと足を運ぶことだろう。

今もこうしてアート作品が残っている廃駅は珍しいので、今年の芸術祭が終わったあとも、どうかそのままで残っていてくれないかと願うところだ。

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なんか近くに古いポンプがあった

味のあるポンプだ。これは昼じゃないとなかなか気づかない。

このポンプがもっと味わい深くなるまで、また百年木がもっと成長してそれこそ100歳になるまで残っていたら…

そんな妄想も膨らんだ今回の旅である。