海と桜がきれいなのに春の手前にやって来てしまった廃駅の旅13回目だ。
国道249号線沿いにある廃駅
今回訪れたのは前回の七見駅の次にあたる「矢波駅」だ。
矢波という字はそのまんま「やなみ」と読む。
こちらも国道249号線沿いにあり、同道路を走っていると見えてくるので探すのは全然難しくない。
地図
地図を見るとわかるように海のすぐ近くにある。
近くには漁港もある。
そしていつものように近くにバス停もある。
バス停発見
「矢波弁天」と言う名の停留所がこのように見えてくる。
その待合室には「矢波駅前」とも書かれてあるのでここを目指せば間違いなくたどり着ける。
ご覧のように
「弁天」と「駅前」どっちが正式名称なのか謎であるが、こうまではっきり書かれてあるのだから安心する。
実際、もう少しだけ進むと駅のホームも見えてくる。
ちょっと中の様子ものぞく
中に入ってみると木のいい匂いがした。
写真右上に写っている説明書きによると、このバス停は県産能登ヒバやスギを活用して建てられているそうだ。落ち着く匂いだ。
中央の飛び出し注意の絵(おそらく小学生が描いたものと思われる)にもなんだろうか、郷愁のようなものを感じてしまって癒やされる。
ただ、車で来やすい国道249号線沿いにあるバス停ならびに廃駅であるものの、駐車場らしきものが国道沿いに無いのでどこに停車すればいいのか困ってしまった。
少し迷った末…
もうちょっと進んで
写る橋も渡って…
ここで左折した
それから最初の曲がり角でまた左折してUターンするイメージで小道に入っていくと…
集会所が見えてくる
廃駅になる前はこの集会所があったところまでホームが伸びていて待合室もあったようなのだけど、能登線廃止後、ホームの半分、ならびにその待合室を撤去してこの集会所が新たに建設されたそうだ。
写真左奥の土手を上がるともう旧駅のホームなので、車を止めてあるところは廃駅の駐車場とも言えなくもない。
集会所の駐車場とあわせると結構広い。
海の見える廃駅
ホームの方へ
この階段を上ると旧矢波駅のホームに出る。
階段は廃駅になってから設置されたもののようで、駅のこちら側と国道249号線側をつないでいた。ホームを横断できるわけだ。
ホームだ
半分しか残っていないものの、それっぽい形をちゃんと残している。
何より少し高いところにあることもあってそこからの景色も良い。
国道249号線を眼下に車の往来を眺めつつ、さらにその背景として海も眺めることができた。
海に近い廃駅なのだ。
別の角度から
このように海を眺められる。
いわゆる内浦というやつで、港もあることから漁をしている船もいくつか出ていた。
懸念としてはホームから海を眺めるにはちょっと木が邪魔である。
これまた別の角度から
階段がホームを横断しているため、段差の低いところからこのようにホームの地面スレスレから撮ることもできる。
この画からもわかるように駅と海の間に木がずっと並んでいるのである。
ホームの上からだとどこから撮っても海にカメラを向けるとその木が入ってくる。
ミラー越しに海を撮っても入る
この木、なんの木なのかなとマジマジ眺めてみてみると、どうやら桜っぽい。
後から調べてみても、このあたりの海沿いは桜を植えているという話もあったくらいだ。
これが桜なら、海とサクラでいい景色じゃないか…
このとき訪れたのは3月だったのだけど、結局来る季節を間違えたんだなと思うのであった。
さくら咲く4月に再び
ということで、サクラが咲いたころにまたやって来ることにした。
今年は石川県でも桜の開花が早く、ここ奥能登の方では例年なら4月中旬くらいに見頃を迎えるのだけど、今年は4月上旬頃だというので、それに合わせて行ってきた。
すると…
案の定、サクラだった
邪魔だなんて記した木々が思ったとおりサクラであった。
邪魔だなんて思って申し訳ない。
うむ、ホームから眺めると華やかな気持ちになる。
その後ろには晴天に海なものだから爽やかでもあった。
風を感じるのが気持ちいいのだ。
まだ満開ではなかったのがちょっと悔やまれますが…
兼六園ではもう散り始めているっていう時期だったのに、ここ能登町ではまだ五分咲きくらいだった。
満開時期の見極めは難しい。
それでも廃駅と海とサクラという景色を見れたことに興奮したもので、それらをどう撮ってやろうかとあれこれ思案したものである。
どう撮るか、この思案の時が結構楽しい。
こうやって撮ってみたり
海が入ってませんな…
こうして撮ってみたり
やっぱり海が入ってませんな…
無難にこの角度から
海は入ったけど、なにか足りない気もしますな。
やっぱりこれか
ホームは見えていないけど、ミラーと柵と線路跡で廃駅感はそれなりに出ているということで自分なりに納得するのであった。
感想
以上、矢波駅の現在の写真だ。
残されたホームの上から海が真正面に見えて、線路跡脇にはサクラが何本も植えられているので、春に来たくなるところであった。
満開の時期に合わせるのは地元民ではない以上ちょっと難しいけれど、日を改めて桜の咲く頃に再びやってきて、自分としても正解だったと満足している。
コロナ禍とかじゃなかったら、ここでお酒片手に花見をしたりする人もいるんじゃなかろうか?
とすれば、廃駅のいい再利用のされ方だと思う。少なくともまだまだ忘れ去られていない場所ということになるだろう。
コロナ禍がほんと残念だ。
ちなみにこんなものが作られていた
3月に来たときにはなかったのだけど、廃駅前の国道沿いのガードレールに小学生が作ったのか、個性的な注意喚起の板がいくつか設置されていた。
こういう手作りなものが付近に作られるところ、この廃駅は現在も町の人たちに愛されているんじゃなかろうかと推測してしまう。
個人的にこういうの好きだし、気になって仕方がない。
仕方がないからこうして撮ってしまう。
気になるといえばこんなものも
集会所の裏にこんな看板もあった。
この矢波、くじら伝説の里とも言われているみたいだ。
後で調べたことだけど、矢波の人たちがお世話した漁師が亡くなった後、クジラが矢波にやって来たかなんとか。生まれ変わって恩返ししに来たらしい。
実際、イルカやクジラを食べる習慣がこの地区にはあったようだしね。
しかも、矢波の他、隣の波並や藤波でも同じようなクジラ伝説がそれぞれにあるのだからなんか愉快だ。
ここで花見をしながらクジラ肉を食べたくなったではないか。
これぞ、廃駅と桜と海を同時に味わうことではないかと勝手に思うのであるが、いかがだろうか?