廃駅が擬人化されていたらカフェの店員とかなんだろうな…
廃駅の旅、27回目だ。
今回は珠洲市にある旧鵜飼駅に行ってきた。
宝立小中学校を目指すと行きやすい
のと鉄道の廃線を中心に使われなくなった駅をめぐる個人的な旅も27回目だ。
旧能登線をたどっているところで、今回は珠洲市に入って3つめになる「鵜飼駅」に行ってきた。
鵜飼はそのまんま「うかい」と読み、石川県珠洲市宝立町鵜飼というところにある。
ネット上の地図にも載っているし、4年前に行われていた奥能登国際芸術祭2017にて作品の展示場所にもなっていたので、行ったことがあるという人も少なくないのではなかろうか。
かくいう自分もその一人だ。
4年前とどう変わっているのか、まだ再利用されているのか等々を確かめるべく、改めて足を運んでみたのだった。
早速その地図
奥能登国際芸術祭のときは町中に案内看板が設置されていて、それに従ってたどり着いていたからか、4ぶりにその駅へ自分の記憶一つだけで向かおうとしたところ、やはりというかちょっと迷子になってしまった。
前回の旅で訪れた南黒丸駅の流れで内浦街道を進んでいたのだけど、今回の鵜飼駅はその内浦街道沿いにないのだ。
一番近い道路は国道249号線になるので、内浦街道から向かうなら途中で左折なりをしなければならない。
それでいて249号線沿いにあるわけでもないので、途中で小道に入っていかなくてはならず、そのポイントがわかっていないと迷ってしまうのだ。
地図で見るとわかると思うのだけど、一番のポイントとなるのは宝立小中学校だろう。
こちらが珠洲市立宝立小中学校
真ん中を走る道路が国道249号線で、左手に見えるのが宝立小中学校だ。
横断歩道のあるあたりで右折して入っていく道が見えると思うのだけど、そこを入っていくと目的の廃駅にたどり着ける。
反対側から249号線をみた景色
矢印の方に入っていくとOK。
左手に見えるピンク色の建物は美容室「バンビー」だ。それも目印になる。
曲がって進むとこんな景色が見えてくる
屋根の形が斜めで、てっぺんに角みたいなものが生えている建物が旧鵜飼駅だ。
駅舎がいまも保存されているのだ。
4年前を思い出しながら
こちらが鵜飼駅
屋根がいびつな形をしているこの建物が旧駅舎だ。
形がきれいに残されている。
目の前にバス停があり、その待合室としても使われているそうで、今も現役なのだ。
こんな看板も残っていた
昔は緑地等管理中央センターとしても使われていたとわかる看板がいまも残されていた。
中に入ってみるとわかるのだけど、いまは管理センターとしては使われていないだろう。
中に入ってみる
駅舎の中はこうなっている。
バスの待合室として使われているだけあってベンチも残っているし、なんだったら座布団のようなものまで置かれていた。
この度この駅にやって来たのは今年の7月になるのだけど、4年前に奥能登国際芸術祭で来たときと中の雰囲気は殆ど変わっていない。
(4年前に芸術祭で訪れたときの記事は→こちら)
落書きの多さも相変わらず
柱にこうしていっぱい落書きがされていて、消される気配もない。
むしろ4年前より増えている気さえした。
見上げるとこんなところにまで
入り口の上にあった非常口の案内なんだけど、こんなところにまで落書きされていた。
いたずら心が溢れ過ぎだが、嫌いじゃない。
能登町最後の恋路駅でも落書きがいくつか見られたけど、このあたりで受け継がれる若者文化の一つのように思えてならない。
外に出るとホームの方へ
ここ、プラットホームも残っているのだ。
2017年の芸術祭のときにはこのプラットホームに作品が展示されていて、夜に行くとライトアップもされていた。
あれから4年経ったのでさすがに残っていないだろうと思いながらも、残っていてくれたらとちょっとだけ期待する自分もいた。
実際には残っていなかったのだけど
アートとして活用された列車一両が置かれていたんだけど、芸術祭が終わってから撤収されたようで、ご覧のような状態である。
とはいえ、ベンチもまだ残っているし、この日はグリーンの屋根と囲いがあるベンチでカフェタイムを楽しんでいる夫婦と思われるカップルもいたので、ホームの方もまだまだ忘れ去られていない場所のようである。
かつては相対式ホームだった
平成8年まで1面1線だったみたいで、増設工事によって相対式の2面2線のホームになったそうだ。
むかしの駅看板も残っていた
駅名が「能登鵜飼」と書かれた看板があった。
第3セクターののと鉄道になる以前の国鉄時代は「能登鵜飼駅」だったのだとか。
見るからに古い看板だし、これが残っているということはこちら側が昔からあるホームで、カップルがいた緑の囲いのあるベンチのある方が増設されたほうなのだろう。
ミラーからベンチの方をこっそりと
こういう天気がいい日には確かにカフェやランチを外で楽しみたいところだろう。
実際、駅舎の中にはバスの待合室の他にカフェもある。
芸術祭のときにも米粉を使ったハンバーガー屋があったが、いまはオーガニック食品のカフェが入っているのだ。
テイクアウトもできるので、店内ではなく、このホームのベンチで食べるという人も少なくないのではなかろうか。
自分の目にはこのホームも含めてカフェの敷地に思えたくらいだ。
ナチュラルカフェのサンドイッチをいただく
再び駅舎内にもどる。
こちらがその旧駅舎内にあるナチュラルカフェ
「natural cafe minanto」(ナチュラルカフェ ミナント)だ。
営業時間は11時~17時(ランチタイムは11時~14時)。
木曜、金曜日が定休日で、それ以外にも不定休があるそうだ(窓に貼ってある営業カレンダーを確認)。
ちょうど昼時で、この日は営業していたので自分も立ち寄ってみた。
扉がちょっと特殊なので開閉の際は優しくしたほうがよい。
ウェルカムボードにはこのようなことが書かれてあった
テイクアウト可能だけど、袋等テイクアウト資材は別途料金がかかるとある。
むしろゴミ削減のためにエコバッグやタンブラー、容器の持参の協力を呼びかけている。
昨今、SDGsという言葉も出てきているのでこの取組には自分も同意だ。
ただ、自分としては今回が初めてで知らなかったので次回から協力したい。
よく読まずに、この日はテイクアウトで頼んでしまったのだ。
入るとすぐレジカウンター
奥が厨房になっていて、右に進むと席になっていた。
駅舎を再利用しているので決して広いところではない。お客さんも4組くらいしか入れないのではないだろうか。
日替わりメニュー
こちらはブレッドメニュー
サンドイッチやトーストメニューもあるのだ。
ドリンクメニューは壁の黒板に
コーヒー豆もすべてオーガニックだって言うんだからすごい。
オーガニックのグラノーラも売られていた
ほかにもプレートランチもあったりして、それに使われている食材ももちろん体に良さそうなものばかり。
ほんと、オーガニックにこだわったお店なんだというのがわかる。
でも、それ以上にすごいなと思ったのは、このカフェ、女性一人で切り盛りしていた。
ワンオペのお店なのだ。
そんなものでたとえテイクアウトでも昼時だと注文から出来上がりまで30分以上かかってしまうそうだ。
自分としては時間的に問題なかったので、というか美味しそうでどうしても食べてみたかったのでもちろん待った。
ちなみにテイクアウトできる食べ物はプレートランチとサンドイッチの2種類だけであったので、迷った末にサンドイッチを注文することにした。
店内でランチ(土日限定の日替わりランチ)&カフェという選択肢もあったけど、ちょっと込み始めていたのでサンドの持ち帰りを選んだのだ。
こちらが箱(容器)
店内で待って、持ち帰ったサンドがこちら。
二つ入って1200円。
箱や袋などで+80円だった。
オープン
店内のメニューによると「蒸し鶏と有機クルミ味噌の米粉パンサンドイッチ」という名前のようだ。
見るからにボリュームありそうである。
いただきます
かぶりついてパンも鶏肉も野菜も一緒くたに口の中に放り込んでみると、あらびっくり!
変な雑味が一切ない。
クルミ味噌の甘酸っぱい、というかどちらかというか甘めのソースと鶏肉との相性がほんと最高。
一緒に口にしたレタスの優しさときたら、変な硬さがないからすんなり喉を通るし、オニオンは玉ねぎ特有の苦味がこれまた一切ないし、「これがオーガニックか…」と舌で味わいながらその舌を巻いてしまった。
ソースのクルミが小さな固形物として食感にアクセントを作っているし、それがまたほのかに甘く、食欲をさらにそそる。
これ、マジでうまいと、止まらなくなって立て続けに2個めも頬張っている自分がおりました。
オーガニックのものを食べだすとその味にハマって抜けられなくなる話を知人から聞いたことがあるけど、その気持ち、いまならわかる。
というか、わからされた。
1200円、ちょっと高めかなとも思ったけど、いえ、このボリュームでこの味なら納得だ。
ごちそうさまでした。
次は日替わりランチも食べてみたい。
まとめ
以上、今の鵜飼駅である。
といっても撮影しに行ったのは7月で、8月になってこうして記事にしているのでタイムラグがある。
しかも来月9月からは「奥能登国際芸術祭2020+」が始まり、前売り販売していたパスポートやガイドブックを買ってみた所、どうやら今年の芸術祭でもこの鵜飼駅が作品の展示場となっているようなので、来月にはその姿、その印象が変わっているのではないだろうか。
2020+でもホームでアート作品が展示されるらしい
芸術祭がないときは、その駅舎でオーガニックカフェが営まれ、ご飯も美味しければ、外のホームで食べれたりとロケーションも良いところなので、何度も足を運びたくなるところだ。
廃駅がこうして現役の何かとして再利用されているのは、旅をしていろんな廃駅を見てきた自分としては非常に嬉しい。
すべてこんな感じで再利用されていると言うことないんだけど、現実はそう甘くはない。
ただ、廃駅はそれぞれでいろんな顔があって、それはそれでそれぞれの個性として捉えてやればいいのではないだろうかと考える自分もいる。
誰もいいない廃駅でも愛おしさを感じさせるものがあったりするわけだ。
我ながら、随分と廃駅に愛着を持ってきてしまったものである。
最近ではそれぞれの廃駅の個性から擬人化したらどんな感じになるだろうかと、そんなくだらない空想までしてしまっている始末だ。
まあ、今回の鵜飼駅は間違いなく「カフェで働いている人」だろう。
「ナチュラルカフェ ミナント」のワンオペのあの女性の店員(オーナーだと思う)の方がそのモデルイメージだ(あくまで自分の頭の中の勝手な空想です)。
奥能登国際芸術祭が始まれば間違いなく作品を見に再びここにやってくるだろうし、そのときまたあのカフェでランチ等々を楽しみたいものである。