初心の趣

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廃駅の旅3「輪島駅」

のと鉄道廃線になった路線のかつての駅を訪ねる「廃駅の旅」第3弾だ。

昨年11月に書いた2回目に続き、通称「輪島線」の最後の駅「輪島駅」に足を運んできた。

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何度か紹介した輪島駅

のと鉄道七尾線のうち廃線になった区間、通称「輪島線」。

その区間のうち、能登三井駅、能登市ノ瀬駅に続き3つ目で、また最後の駅となるのが輪島駅だ。

この輪島駅に関しては、自分自身も何回か足を運び、当ブログでも度々紹介している。

現在、道の駅になっていて、輪島の朝市通りを散策するときなどに駐車場として使うことがよくあるからだ。

道の駅だけにそこでイベントなども行われていることもある。

以前「にぎわい市」も行われていた。そこでフグを食べたものである。

以前フグを食べた記事はこちら

そういったもので、廃駅の中では現在もよく知られている場所である。

地図

穴水から輪島方面へ県道1号線(七尾輪島線)を走っているとそのうちたどり着く。

近くには朝市通りや重蔵神社なんかもあるところだ。

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「道の駅 輪島」の看板

この看板が目印。

案内のとおり、ここを左に曲がるとすぐ旧輪島駅こと「道の駅 輪島」だ。

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到着

「ふらっと訪夢」とも呼ばれている道の駅だ。

この角度から見ると金沢駅もてなしドームの小さい版のようにも見える。

手前の建物にはお土産屋や観光センターが入っているが、これ、旧駅舎だろう。

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その名残

「輪島駅」と書かれたプレートが残っている。

使われ方が変わってもここが輪島駅であったとしっかりと、今でも主張してくれている。 

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現在ではわじま観光案内センターになっていたり

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お土産が売られていたり

輪島塗なども売られている。

自分は以前、輪島プリン用に輪島塗の匙(スプーン)をここで買ったりもしている。

輪島プリンと匙の記事はこちら

石川県輪島漆芸美術館のマスコット「わんじま」の存在を知ったのもこのショップでそのグッズを見つけてからだ。

わんじまを可愛く思った時の記事はこちら

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レトロな郵便ポスト発見

正面左手に置かれていた。

いつ頃から使われているものなのか不明だ。こんな縦長の円筒状のポストって、いま石川県内でもそう見ることはない。

飾り物のようにも見えるけど、サイドには取集時刻も、郵便局の電話番号も住所もちゃんと書かれてあった。

現役なのだろう。

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真ん中の通路の途中にトイレ

「漆の文化を世界へ。」と書かれた暖簾をくぐるとトイレ。

こちらは男性用で通路を挟んで反対側に女性用がある。

その間にある通路では以前、砂像クリエイターの古永健雄さんが製作した塩像が置かれていたこともあった。

塩像を見に行った時の記事はこちら

 

旧駅舎を抜けると旧ホーム

トイレのある通路を通り旧駅舎を抜けると、その先には輪島市文化会館と呼ばれる建物が続く。

その建物と旧駅舎の間には駅のホームが残っていたりする。

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奥の建物へ向かう手前に踏切警報機

こんなものがポンッと置かれていたりする。

ちなみにこれ、時々カンカンカンと鳴ったりするからちょっとビックリする。

その足元には線路が走っていた形跡もある。

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右側を見ると線路の端

線路が湾曲して盛り上がった状態で置かれていた。

ここが最後、これ以上はいけないとのメッセージが伝わる。

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アップ

いわゆる輪島線の最後がここにあったと、そう伝えているようでもある。

廃線になってしまったことを考えると「最後」という言葉が別の意味で胸に響く。

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そこから見える景色

端の湾曲から線路の跡を眺めるとこんな景色が見える。

在りし日の輪島線の列車の姿がすぐに思い起こされるように写真を使ったパネルが置かれていた。

写真の奥、右側に見えるのは駅のホームだ。

ホームも残されているのである。

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残っているホーム

駅名標掲示板も残されている。

いまでも現役かと思わせるくらい状態もすごく良い。

また、駅名標に書かれた「シベリア」という文字が大変気になる。

前の駅が「能登市ノ瀬」だったので「のといちのせ」の文字は納得するけど、その隣の「シベリア」の文字は眉をひそめてしまう。

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シベリア行きってこと?

輪島駅は輪島線の最終駅だ。「ウソつけ」と思ってしまった。

これ、駅が現役だった頃から書かれていたもののようで、なんでもむかし学生さんたちが空白だった部分に「シベリア」だとか「ウラジオストック」だとかイタズラ書きをしていたらしい。

それを目にした当時の駅長さんが、乗っかったのか、配慮したのか、敢えてこのように「シベリア」と書き記したそうなのだ。

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本来ならこのように一方は空白

子どもたちの笑いに付き合ってくれる懐の深い駅長さんだ。

もちろん輪島の次がロシアのシベリアなわけがない。

日本海が間にあるので鉄道が走るわけもない。

そんなもので、輪島の次にシベリア駅があったなんて口外しないでほしいと、掲示板に貼られた紙にも書かれてあった。

安心してほしい、輪島の次には宇宙に行けたと、自分は勝手に妄想しているので、シベリアなどと言うつもりはない。

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これを切り替えたら宇宙に連れて行ってもらえないだろうか

あり得ない話だが、そんなファンタジーが頭の中で膨らんできた。

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なんだろ、これ?

でっかいダンベルに見えてしようがない。

自分の頭の中なんて、このようにしょうもないことばかりである。

 

輪島市文化会館にも入る

道の駅なので、駐車場と物販コーナーだけ見れればいいやと思ってしまうところであるが、旧駅舎の奥には文字通りもっと輪島の文化を知れるような会館もある。

自分自身もあまり入ったことのないところだ。今回、少し覗いてみた。

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入り口

「世界一の漆芸パネル展示」との幕がいつも掲げられている。

なにか展示会でもやっているのかと思ってしまうけれど、展示会ではなく展示物があるというお知らせだ。

その世界一の漆芸パネルというのが…

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こちら

1階ロビーに置かれている「潮の奏」(「うみのうた」と読む)という作品だ。

見ての通り、全体が写真に収まらないくらい、まあでかい。

縦2.6メートル、横1.2メートル、厚さ3.6センチメートルのパネルが15枚つなぎ合わされているそうで、総長は18メートルもある。

輪島の漆芸作家63名が11ヶ月かけて製作したそうだ。完成は1981年(昭和56年)。

2010年に修復も行われているようだけど、来年2021年には作られて40年経つことになる。

今なおきれいなので漆芸って凄いもんだなと、大きさと合わせて感嘆してしまう。

輪島塗についてはマスコット「わんじま」のいる漆芸美術館に行くともっと詳しく知れるので、そこに行くのもありかと思われる。

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切子灯籠も飾られていた

能登方面では切子灯籠を担ぐキリコ祭りが盛んで、ここ輪島でももちろん行われている。

輪島のキリコは漆も使われているので黒光りした美しさがある。

輪島のキリコに関してはここからそう離れていないところにあるキリコ会館に行くともっと詳しく知ることができるので、ここで興味が湧いたらそこに行くのもありだろう。

キリコ会館に行った時の記事はこちら

観光案内所にはキリコ会館や漆芸美術館の案内ももちろんされている。

うまく観光の流れは作っているなと思う。

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御陣乗太鼓の絵も飾られていた

2階へと上がる階段の壁面に飾られてあった。

写真右手に写る扉と比べると伝わるかと思うけど、この絵もまたでかい。

輪島、色々とでかいものばかりだ。

ちなみに御陣乗太鼓とは輪島市名舟町が発祥の怪物の仮面をかぶった陣太鼓だ。

この奇抜さででかつて攻めてきた上杉勢をまともな武器もない中、追い返したという話だ。

石川県、並びに輪島市の指定無形文化財に指定されている。

生で何度か聞いたことがあるけど、迫力があって格好良かった。

文化財といえば…

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能登のアマメハギもユネスコ

このような認定証も展示されていた。

能登町と輪島にはアマメハギという来訪神の伝統行事が冬にあるんだけど、それが平成30年にユネスコ無形文化遺産に認定されたのだ。

民家に入っていく行事なので簡単にお邪魔しますとは言いづらいけど、一回見に行きたいものだ。

また、2階には展示室もあって、そこではいろいろな展示会も行われている。

自分が今回足を運んだのは夏で、そのときには広島原爆被爆絵画展というのが行われていた。

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案内のみ撮影

故・清水正明氏の作品が展示されていた。

実際目にしてきたけど(撮影していいのかわからなかったので撮ってはいない)、爆発したとき人間も宙に浮いた絵とか、なかなか衝撃的な作品郡だった。

 

なお、この文化会館、館内には市立図書館も併設されている。

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一階にある市立図書館

入り口ぬけて右に曲がると図書館。

左に曲がると漆芸パネルやキリコが置かれているロビーに出る。

観光客だけでなく市民も出入りしているところなのだ。

 

柱に段駄羅

再び外に出て旧駅舎の前までやってくると、その軒を支える柱に段駄羅と呼ばれる、この土地特有の言葉遊びの作品がいくつか並んでいるのに気づいた。

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柱というのはこれら

バスのりばの案内なんかも掲げられている柱だ。

この柱一本一本に…

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こんな作品プレートが

山状に折り曲げられたプレートの上に「五七七五」の言葉が並んで句や歌のようになっている。

これが「段駄羅」(だんだら)と呼ばれるもので輪島の漆芸職人たちの間でかつて流行した短詩型文芸なのだとか。

「五七七五」のうち七七のところの音が一緒で、でも意味が異なるという特徴を持つ。

訳のわからない方向に進んでしまうダジャレのような言葉遊びだ。

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一例

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一例

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一例

合理的な思考の人間からすると「どういう意味なの?」とついてこれなくなるようなもので、予定調和を壊した、考えるよりも感じろ的なセンスをより問われる文芸だと思う。

それでいてよくよく読むと前と後で意味や話がつながっていたりもするものだから、奥が深かったりもする。

結局考えてしまっているじゃないかということで、あなどれない。

恐るべし段駄羅。

 

飲食できる店もある

旧駅舎には観光案内や物販の他に食べ物屋も数件ある。

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こんな感じで

自分が見た限り計3件はあった。

その中には金沢カレーの「ゴーゴーカレー」もあった。輪島だけど。

他には「夢」という食事処と「器の実」という喫茶&食事処の店が並んでいた。

せっかくなのでどれかで食べようと考えた末、今回は「器の実」さんを利用させてもらった。

店内でももちろん食べれるけれど、簡単なものならテイクアウトもできるというので、ピラフをテイクアウトさせてもらった。

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こちら

エビピラフ。

バターかな?油の旨さが乗ったピラフでした。

もうちょっと量があればと思ったけどうまかったです。

 

感想

以上、三度目の廃駅の旅「輪島駅」編だ。

過去2つの廃駅に比べると、市の財政を使ってしっかりと道の駅として再利用されているので廃れた感じがまったくしない。

市の文化や産業の発信拠点のようでもあり、朝早く来ると朝市のように駅舎前で特産品を売っているおばあちゃんの姿を見ることもできたので、むしろ活気の残ったところだと思えた。

以前の駅とは別施設のようで、それでいて過去の駅の姿も少しながら残しているので、むかし利用していた者からするとノスタルジーを感じれるところでもあるかと思われる。

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突然カンカンと鳴る警報機、でも音には哀愁がある

いい感じで残しているなと感服する。

だてに市の名前を冠してない駅だ。

本来ならどの廃駅もこうして再利用できれば言うことないんだろうけれど、なかなか市の財政上、むずかしいものなのだろう。

再利用の可能性を感じると同時に、力を入れられるのは一つだけ、ないしは一つずつという現実を思い知った今回の旅でもあった。

一つ前の能登市ノ瀬駅のように駅舎も取り壊されてなんにも残っていないところもあるのだ。

道の駅となったこの輪島駅、ここはほんと恵まれているなと思うのである。

いつまでも昔のものにしがみついてばかりはいられないものかもしれず、能登市ノ瀬駅のように取り壊すのも、その町にとっては一つの正解かもしれない。

廃駅からその市や町の背景も見えるようである。

その点に関して、この廃駅の旅をやってみてよかったと思えてきた。

これでいわゆる輪島線は終了だが、のと鉄道にはまだ能登線の廃駅もあるので、また機会を見つけて、それらの現在の姿も目にし、撮影しに行きたいものである。