初心の趣

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廃駅の旅4「中居駅」

廃線となって使われなくなった鉄道の旧駅をめぐる個人的な企画「廃駅の旅」。

その4回目として、のと鉄道能登線にあった「中居駅」に足を運んできた。

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能登線の駅

のと鉄道廃線となった区間は、前回までの廃駅の旅1~3回で紹介した、いわゆる「輪島線」のほかにもう一つある。

穴水駅から能登町珠洲市を結び蛸島駅(珠洲市)まで伸びた「能登線」と呼ばれていた区間だ。

国鉄から1987年に第三セクターの「のと鉄道」に変わり、その翌年に「のと鉄道能登線」として運営されるようになったが、2005年には乗客減少や会社の赤字等から廃止になっている。

路線総延長は61kmあったようで、前回までの旧輪島線の計3駅に比べ、この旧能登線の廃駅は計29もある。

その最初の駅として今回選んだのが「中居駅」だ。

現在も営業している穴水駅の次の駅だったところで、やはり同じ穴水町に置かれていた。

所在地も鳳珠郡穴水町中居というところだ。

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ということで穴水町

穴水側の国道249号を北へ走っているとそのうちこんな案内が見えてくる。

能登中居鋳物館とあるように、中居はむかし鋳物の町として知られていたようだ。

中居といえば屏風が美しいキリコ祭りが行われるところでもあって、自分も以前見に行ったことがある。

中居のキリコ祭りの記事はこちら

看板の鋳物館へと続く道を右折すると、その祭りが行われる神社へと向かうことになるのだけど、今回の目的である「中居駅」はこの看板よりちょっと手前にある。

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ちょっと引いた図

この道路が国道249号。目印としてはわかりやすいが看板の方まで行ってしまうと行き過ぎになる。

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同じ場所から振り返ってみたときの図

分かりづらいかもしれないが、このポストのある家のところで曲がる(この写真の方向だと右折する)と、すぐそこに目的の旧中居駅がある。

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曲がってみた際の図

なんだか昔の線路ならびに駅のホームのようなものが見えてくるのだ。

正直、探すのにちょっと時間がかかったけど、ここが中居駅である。

 

旧中居駅の現在

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このちょっと坂になった道を進むことになる

道も広くないし、民家もあるしで駅らしい雰囲気はあまりない。

木がいくつも立っているし、駅名が書かれた看板もないのだから国道249号を走っているだけでは「あれ駅じゃない?」なんて気づくこともほぼないだろう。

でもそこに旧駅はあるのだ。

ちょっとした坂を登った先に…

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駅のホームが残っていた

線路もなく、木々にも隠れているのでひっそりとしているけど、たしかにホームがある。

さらには待合所も見える。

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待合所

古びてしまっているし、生い茂った蔦も絡まりまくって甲子園みたいになっているけど、形はしっかり残っている。

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建物財産標なんてものも残っていた

壁に釘打ちされていたものがこうしてまだ残っている。

これによるとこの待合所、昭和34年4月にできたようだ。

だとしたら自分が生まれるより前からある建物だ。先輩だ。

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鍵がかかっていた

閉まっていたので中に入ることはできなかった。

窓から中を覗いてみると額縁に表彰状みたいなものが入って飾られていたり、古い時計が止まったままかけられたりしていた。

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3時20分

いつからこのままなのだろうか?

能登線廃線となって以来、駅として過ごすことがなくなった建物だ。多くの人から忘れられているわけでもあり、社会の流れから見るとこの時計のように時が止まっていると言っても過言ではない。

なんか寂しい。

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待合所の前からの景色

長閑だ。

田畑が広がって、奥には山も見える。

典型的な能登の田舎の風景だ。

ホームの上を覆うように枝が伸びた木、これってサクラだろうか?

もしそうなら春にはこのあたり、すごくキレイなんじゃなかろうか?

とすれば季節を感じられるスポットでもある。

時が止まっていると例えたけど、それは間違っていて、ゆっくりと時間が流れているところなのではないかと、ふと思えてきた。

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点線(白線)も結構きれいに残っている

この線に沿って立っていると、在りし日の駅の姿を想像できそうな気もしてくる。

となれば、記憶だけでも過去に戻せそうなスポットでもある。

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ホームを降りて手前の農道から見た図

ここからだと全体が見える。

こうして見るとキレイに駅のホームの形を残しているとわかる。

花が咲いても、雪が積もっても絵になりそうだ。

その風景を見て過去を思い出すもよし、今を感じるもよし。

時計は止まっていても、なんだかんだ時間を感じることができる廃駅なのではないかと考え改めたくなった。

 

感想

以上、中居駅の現在の様子だ。

ここを見つけるのに鋳物館あたりで迷子になっていたので、見つけられたときちょっとしたカタルシスがあった。

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ちなみにこちらが鋳物館(休館中で中には入れなかった)

そうしてたどり着いて、ホームが結構そのままに残っていたり、そこからの景色がのんびり美しいものだったからその開放感がより大きくなった。

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再び廃駅ホームからの景色

この開けた感じがまたいい。

ちょっと土手になっているからか、軽い浮遊感のようなものもある。

加えてこの田舎の景色だ。

ゴザ敷いて昼寝でもしたらのんびりと時間を忘れられそうである。

桜を期待して、できれば春にまた来たいものである。

 

能登線の廃駅、残り28…

のんびり回っていきたいと思う。