初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

珠洲市の正院キリコ祭り二日目の夜にて奴振りと奉燈を見てきた

珠洲市の正院地区にもキリコ祭りがある。

須受八幡宮の秋祭りで、そのお宮さんの方とちょっと知り合いになったのが縁で見に行ってきた。

奴振りでも知られるこのお祭りの二日目の夜の景色を撮ってきた。

f:id:seisyunsanka:20190922181712j:plain

 

 

 

二日目の夕方に須受八幡宮

正院キリコ祭りは奥能登珠洲市正院町にある須受八幡宮の祭礼なので、当日そのお宮さんを目指していくと町中で祭りと遭遇することになる。

ただ、駐車場がない。

神社にもなければ町中に臨時駐車場も、自分が見た限りではなかった。

ちょっと離れた道の駅に停めるか、近所の小学校の脇に止めさせてもらうか、はたまた迷惑にならないところに路駐するしかない。

自分が正院町に到着したのは夕方17時頃で、17時より少し前に到着すると町中では交通規制がかかっているため、停めれる場所を探すのも一苦労すると思われる。

17時から20時頃まで祭りの休憩タイムになるので、その頃なら町中をそれなりに車でウロウロできるはずだ。

f:id:seisyunsanka:20190921124000j:plain

ウロウロできる頃の道路の様子

正院キリコ祭りは二日間にわたって行われる。

一日目は夕方から明け方までキリコが町中を巡行。

自分が見に来た二日目は午後から「奴振り」が町中を行進し、夜から神社でキリコ乱舞となる。

自分は時間の都合上、二日目の夜にしか来れなかった。

本当なら昼過ぎからの奴振りの町中行進も目にしたかったが、奴振りの姿は夜からでも少し目にできるようなので、無理せず夜に集中したのだった。

f:id:seisyunsanka:20190921124533j:plain

お宮さんへの道中に目にした正院のバス停

このバス停、懐かしい。

2017年にこの珠洲市で奥能登国際芸術祭が行われていた際のアート作品の一つだ。

作品のいくつかはこうして今もそのまま残されているのだ。

能登国際芸術祭でこのバス停にやってきたときの記事はこちら

f:id:seisyunsanka:20190921125147j:plain

さらに道中、キリコを発見

この道路の突き当りを左に曲がるともう須受八幡宮だ。

その手前で休憩中のキリコ4基に遭遇した。

f:id:seisyunsanka:20190921130149j:plain

なかなかデカい

この町の奉燈は前方に提灯がいくつもつけられたタイプのものだ。

同じく珠洲市の宝立七夕キリコ祭りに行ったときにも同じような提灯がいくつもついたタイプのキリコを目にしたので、このあたりではそういった傾向にあるのかも知れない。

宝立七夕キリコ祭りを見に行ったときの記事はこちら

f:id:seisyunsanka:20190921130640j:plain

左に曲がった先でお宮さん

須受八幡宮に到着。

大きな幟があるので遠くからでもわかりやすいと思う。

ちなみにこう書いて「すずはちまんぐう」と読む。

f:id:seisyunsanka:20190921131132j:plain

境内にもすでに切籠が数基、待機していた

再び祭りが動き出すのは夜の9時頃だそうで、その頃には切籠もすべてこの境内に集合することになる。

その後、このように切籠もいる境内に「奴振り」の行列が戻ってきて八幡太鼓が奉納されることになる。

今回はその様子を目にすることが一番の目的だ。

f:id:seisyunsanka:20190921131702j:plain

なお、境内には能の舞台もある

この神社では鎌倉時代後期より金春流の神奉能があって、加賀藩の時代には宝生流の神事能となったそうだ。

その神事能のため毎年金沢より能大夫や警備のものが派遣されていたそうなんだけど、この迎送のため表敬の意味も込めて創設されたのが「奴振り」なんだとか。

そんなものでこのお宮さんには能の舞台があり、この舞台で八幡太鼓の奉納も行われる。

ちなみに舞台にいるのは「尉と姥」(じょうとうば)の人形だ。謡曲高砂」よりメデタイものとしてよく飾られたりするらしい。

f:id:seisyunsanka:20190921175929j:plain

ちょっと怖いですが…

自分も最初目にした時、ちょっくら驚いた。

 

日が暮れてキリコが揃う

f:id:seisyunsanka:20190921180226j:plain

夜の参道

日も暮れると神社の鳥居までの道もこのようにライトアップされていた。

のちほど、奴振りもこちらの方角からやって来る。

f:id:seisyunsanka:20190921182457j:plain

キリコも続々と入ってくる
奉燈は大きいので鳥居のあるところからは入ってこない。写真の境内右側より入ってきていた。

その境内に集まるキリコの写真も以下に羅列したい。

f:id:seisyunsanka:20190922112400j:plain

f:id:seisyunsanka:20190922112155j:plain

f:id:seisyunsanka:20190922112443j:plain

f:id:seisyunsanka:20190922112536j:plain

太鼓を叩く姿が印象的だった

境内に集い始めて奴振りの行列がやって来るまで時間があり、それまで奉燈の上で太鼓を叩いていた姿がよく見られた。

小さな子供も叩けば、青年も叩く。比較的、若い人たちが叩いていたかと思う。

f:id:seisyunsanka:20190922112306j:plain

「尉と姥」の人形も奉燈と

こうして人形と奉燈を夜に撮影できるのはこの時間帯がラストチャンスだったと思う。

というのも、のちほどこの舞台で太鼓の演奏が行われるため、このとき人形を片付けて舞台を整えていたところだったからだ。

こちらが片付いた頃に奴振りの行列もやって来る。

 

奴振りの行列をローアングルで

夜の21時くらいになってくると、鳥居のほうがザワザワとしてくる。

何かを待ち構えるように参道には多くの見物客、地元の人が集まってきていた。

f:id:seisyunsanka:20190922123122j:plain

奴振りの行列が到着していた

道を空けながら人だかりができている。

ドテラと化粧前掛けをして手などに鈴をつけて「シャンガ」と呼ばれる毛槍を持った奴振りが鳥居をくぐって拝殿へと行進するので、その邪魔にならないよう道を空けなければならないのだ。

参道のギリギリで見物を決め込みたいものだけど、人も多い。

運良くギリギリまでこれても後ろの人が見えなくなるのもなんだかアレだしで、結局自分はしゃがんで見ることになった。

ここからローアングルの写真が続くが、そういう理由だと思ってご容赦いただきたい。

f:id:seisyunsanka:20190922124336j:plain

下からなのですごい角度に

行列の前には鬼みたいな面をつけた何か(名前がわかりません)がいた。

f:id:seisyunsanka:20190922124540j:plain

振り返るとこんな顔

仮面ライダーの怪人を思い浮かべてしまった。

f:id:seisyunsanka:20190922124749j:plain

入ってくる奴振り

先導の方1人を抜かして、行列は2列になって入ってくる。

1列は毛槍を持ち、もう1列は腕を広げて踊るように、木遣り唄のような掛け声を出して、前進したり後進したりしながら少しずつ進んでいた。

f:id:seisyunsanka:20190922125126j:plain

近い

唄いながら踊りながら2列で進み、ときに反対側の列の奴に毛槍を手渡したりを繰り返していた。

その独特の世界観にグイグイと引き込まれてしまう。

f:id:seisyunsanka:20190922131222j:plain

装備を確認

瓢箪に笛。

脇差のような小刀かと思ったら、笛でした。

f:id:seisyunsanka:20190922131422j:plain

シャンガ(毛槍)を持つ手

持ち方も演舞の構えのようだった。

手首には鈴もつけられていて跳ねたりするたびに鳴っていた。

この鈴を撮りたいけれど奴さんは基本的にずっと動いているのでピントを合わすのが大変だ。

f:id:seisyunsanka:20190922160333j:plain

f:id:seisyunsanka:20190922161503j:plain

仕方なく背中ばかり撮る

とはいえ夜で光量も少ないのでよくよく見るとこれらもあまりピントが合っていないような気がする。

しゃがんで撮っていたからか、バランスとりながらだとどうしても手ブレをしてしまっていたようだ。

f:id:seisyunsanka:20190922161043j:plain

目の前で怪人同士が鍔迫り合いを始めるし

急にだったからこれまたピントも合わないしで、奴振りの撮影の難しさを痛感するのであった。

難しさといえば、この行列の後から神輿もやって来るのだけど、それがまた突っ走ってくるので、それにピントを合わすのも難儀であった。

というか、しゃがんでいた自分には無理でした。

f:id:seisyunsanka:20190922161646j:plain

みんな一斉にカメラを向けていた

しょうがなくこのときは立ち上がったのだけど、もうすでに拝殿前に到着したあとだった。

拝殿の方から正面に奴振りや神輿を撮影していたカメラマンが何人もいたけど、場所取りの重要性を改めて思い知った気がする。

f:id:seisyunsanka:20190922161959j:plain

人がはけたところで神輿を撮影

突っ込んでくるところを連続写真で撮りたかった…

 

奉納太鼓とキリコ乱舞

一番見たかった奴振りが神輿の到着にともなって終了すると、次には能の舞台で八幡太鼓が始まる。

八幡太鼓はこう書いて「はちまんたいこ」と呼んでいた。

八幡太鼓保存会というものもあって、若い子たちに継承しているようだ。

f:id:seisyunsanka:20190922170536j:plain

ということで叩く人たちも若い子たちだった

お面をしているから最初、大人かと思ったら、中学生か高校生くらいの若い男子たちだった。

f:id:seisyunsanka:20190922170741j:plain

f:id:seisyunsanka:20190922172751j:plain

叩けば大人顔負け

この八幡太鼓ってもともとは雨乞いの太鼓だったそうで、叩いているときの強弱に雷なんかを表現していたりとちゃんと意味があるらしい。

かっこいいものだった。

その奉納太鼓も終わると境内にいた奉燈が一基ずつそれぞれ帰路につくことになるのだけど、その際一基ずつ拝殿の前で乱舞していくことになる。

それもまた迫力があった。

f:id:seisyunsanka:20190922173927j:plain

キリコの見せ場再び

担ぎ手や太鼓に奴の人たちも加わって、これが最後の見せ場とばかりに盛り上がっていた。

f:id:seisyunsanka:20190922174137j:plain

月も出てたしね

満月の次の日だったので、ほぼ丸に近い月が出ていた。

きれいな月だった。

盛り上がらずにはいられないし、撮らずにはいられなかった。

f:id:seisyunsanka:20190922174709j:plain

持ち上げたり傾けたりも

一瞬ヒヤリとする場面もあったけど、それもまた楽しんでいるような乱舞。

f:id:seisyunsanka:20190922174455j:plain

太鼓も活気があった

f:id:seisyunsanka:20190922174418j:plain

こんな小学生くらいの女子が叩いていたりも

年齢、性別関係なしといった感じ。

f:id:seisyunsanka:20190922175020j:plain

そこに大人も加わったり交代したり

血が騒ぐというか、うずくものが、発散したいものがあるというのがヒシヒシと伝わってきた。

祭りだなぁと思う瞬間だった。

 

感想

f:id:seisyunsanka:20190922181248j:plain

帰っていくキリコ

今回、正院キリコ祭りの二日目の夜しか見れなかったわけだけど、熱気からか結局最後の奉燈一基が境内より出ていくまでずっと見てしまっていた。

奴振りという珍しいものも見れたし、想像以上に楽しかった。

その奴振りが神社に戻ってきて神輿も戻り、ほとんど間を開けずに太鼓が始まって、そうして奉燈乱舞へとテンポよく続いていたのも良かったと思う。

個人的に撮影には失敗したかも知れないけど、その分また来たいと思えた。

次には昼間の奴振りを目にしたいものである。