9月23日より始まった奥能登国際芸術祭2023、初日の鑑賞旅を終えた自分は、金沢にも帰らずその翌日にまた観に行ってきた。
第二日目だ。
今回も一作品ずつ紹介していきたい。
初日の翌日にまた珠洲市へ
9月23日(土)より石川県珠洲市で始まった奥能登国際芸術祭2023へ初日より足を運び、一日で17の作品を鑑賞することができた。
全部で48あるので、一日ですべてを回れ訳もなく、今回も数日かけるつもりである。
前回(2020+)、前々回(2017)は、ともに4日間かけてすべてを回っている。
だいたい毎週土曜日になると珠洲市に向かっていた思い出がある。
今回もそのような流れをイメージしていたが、有給を使って三連休にしていたので、翌日の日曜日も鑑賞旅に当てることができた。
芸術祭3回めにして、初めて連日で鑑賞することにした。
一日目を終えた段階で金沢には戻らず、七尾にある祖父母の家に一泊して、朝からまた珠洲に行ってきたのだった。
しかも、前日の第一日目で最後に観てきた三崎エリアの続きからではなく、宝立エリアから見て回ることにした。
三崎エリアは珠洲市の中でも最奥にあるので、行きに時間がかかってしまい、公開開始時間である9時30分にその場に居られる自信がなかったからで、七尾市から一番近そうな珠洲市最南の宝立エリアからリスタートしたのだ。
作品No.でいうと「42」から再開した。
初日はNo.1から順を追って行ったので、二日目は逆に後ろから順に追いかけていこうと考えたわけである。
ということで9月24日(日)の朝に宝立エリアに到着
9時30分前にNo.42の作品がある旧鵜島保育所に無事つけた。
朝一だったから建物左にある駐車場にも簡単に停めることができた。
では鑑賞旅第二日目、スタートだ。
42番 マリア・フェルナンダ・カルドーゾ「種のタイムカプセル」
42番だ
前日の第一日目がNo.17の作品で終えているので、そこから見るとこの数字は違和感でしかないが、逆から回ろうとするとこんなものだ。
実際、この宝立エリアから回る人も少なくない。
外浦側から見て回ろうとするとNo.1から始まり、内浦側から見て回ろうとすると宝立エリアからが回りやすいのだ。
なお、No.の最後である48から回らなかったのは、それが若山エリアにあるからだ。
若山エリアは珠洲市の中ほど、山の中にあるので、こちらも向かうとなると時間がかかるからである。
ということで42番だ。
マリア・フェルナンダ・カルドーゾさんの「種のタイムカプセル」という作品だ。
受付を済ませ、スリッパに履き替えて廊下を歩いていくと…
なにかの種が
保育所で使われていたと思われる可愛らしい蟹の絵の入ったタンスの引き出しに、それはてんこ盛りとなっていた。
これは… 松ぼっくり?
植物に疎い自分のボキャブラリーではそんな言葉しか浮かばなかった。
たしか松ぼっくりも松の種子だったはずなので、種であることは間違いないと思うが、これが何の種なのかは、わからない…
次の部屋が見えた…
と思ったら、壁にうじゃうじゃといる。
いや、あれも種だ。
松ぼっくりなのかなんなのか、わからないと思ったものと同じようなものが壁一面に、それこそなにかの生き物のように密集してそこにあった。
瞬間的に、なんか、怖っ!って思ったよ。
そう思いながらも入っていく自分
寄ってみよう
まつぼっくりだ。
じっくり観ると、アートだな、と思う。
形そのままのものを集めたレーンとぺしゃんこにしたものばかりを集めたレーンとが交互に続いている。
色の濃淡はその差で作っているのか。
よくぞこんなに集めたなと思うし、こんなに転がっているもんなんだなと、感心してしまう。
この壁の
これはなんなのさ?
植物への疎さがここでも露呈してしまう。
でもこうして撮っていると、形が美しいもんだなと、惹かれるものがあったりもした。
隣の部屋では床にも
壁に飽き足らず、次の部屋では床にも同じようなものが。
多い
刑事ドラマとかで、大量の所持品を並べているシーンがあったりするけど、あれを思い出したのは自分だけだろうか。
だから君たちはなんなのさ?
これ、後からボランティアの方が教えてくれたんだけど、なんでも「菱の実」なんだそうだ。
三角形だし「三菱」のロゴに似ているなぁ、なんてことを考えてしまう自分は、「菱」というものが植物のことだったなんてわかっていませんでした。
もちろん初めて見る。
いや、これまで生きてきた中で一度や二度はそれを目にしたことはあるかもしれないが、これを「菱」として認識して見るのは初めてだ。
菱って池や沼に生息しているものなんだそうで水底で発芽するんだとか。川から海に流れ着いたりもするから、珠洲の海岸には菱の実のこういったものがよく転がっているらしい。
これらを珠洲市の地元の人達と協力して珠洲市で収集したんだそうだ。
この数の迫力は、珠洲市の人たちのパワーですな。
奥の部屋ではまた違った雰囲気の展示が
それまで種が近未来的な展示をされていたと思ったら、奥の部屋では急に現実に戻されたような、なんなら懐かしさを感じるくらいだからちょっと昔に戻ったような、そんな空間が作られていた。
いえ、懐かしい
自転車に紙芝居って…
自分でも実際に経験したことない見世物ですわ。
この部屋ではその紙芝居も展示されていて、作者の紹介と、この珠洲で「種のタイムカプセル」というインスタレーションを製作した経緯が分かる内容となっていた。
その名も「珠洲のマフーと種のタイムカプセル」
右下に見える地図は、作者のマリアさんの出身地であるコロンビアのボゴタというところだそうだ。
紙芝居の画も展示されている
どんな内容なのか、自転車のものをめくる必要なく確認できる。
裏に書かれた文字の部分も展示されているので、物語を読み進めていくことができる。
これによると、作者のマリアさんって「ノミの調教」とかもやっていたらしい。
スゲェな。
種子って種を包んで守るという植物が作り出す特別な知恵なんだそうで、子どもたちを守ってきたこの旧保育所とも重なるものがあったんだとか。
うむ、温かい話だ。
10月28日(土)と11月4日(土)には紙芝居の朗読会も行われるそうだ。
感想
マリア・フェルナンダ・カルドーゾさんの「種のタイムカプセル」であるが、「種」の部分の意味はわかった。
では「タイムカプセル」とはいったいなんなのか?
これも紙芝居に書かれてあって、この旧保育所で学び守られ成長していった子どもたちと、一緒に過ごしてきた大人たちにとっても「思い出の場所」であることから「タイムカプセル」という文字を使っているとのことだ。
玄関前では実物の「菱」もある
瓶に水を張ってその中に菱をいれてあり、地元のスタッフの方々が「菱」がどんなものか説明してくれていた。
この土地の人達なら、おそらくこの旧鵜島保育所を卒園した方かと思われる。
「タイムカプセル」の言葉の意味のその一人なのだろう。
保育所が閉鎖された後も、こうして芸術祭の作品として使用され、その手伝いをして話を伝えている姿を見ていると「思い出」づくりは進行中だと思った。
このタイムカプセルはまだまだ強く大きくなっていきそうなのだ。