まん延防止等重点措置解除後に「奥能登国際芸術祭2020+」へ行ってきた。
鑑賞旅の第三日目、その4だ。
今回は宝立エリアにある佐藤貢さんの「網の小屋」について記したい。
海の近くにある宝立エリア最後の作品
石川県内のまん防が10月1日より解除され、すべての作品が鑑賞可能となってから足を運んだ第三日目は宝立エリアから見て回ってきたが、同エリアの作品として最後に紹介するのが佐藤貢さんの「網の小屋」だ。
作品番号でいうと38だ。
前回No.40の作品が山の方にあったのに対して、こちらは海の近くにある。
検温したり、山に行ったり、海に行ったり、この宝立エリアはなかなか忙しかった。
海沿いにこんな駐車場の案内
国道249号線を走っていると駐車場の案内も見えてくるので近くに行けば迷うことはないかと思う。
曲がるとこんな空き地が
停め方として何が正しいのかわからないけど、先に停まっていた車に倣って停めた。
空き地に妙に長い網がレッドカーペット(茶色ですが)のように敷かれていたので、それは踏まないように停めると、こうなる。
駐車中は気づかなかったのだけど、すでに作品は見えているし、そのロングカーペットみたいな網も実は作品だったりしたので、車で踏まなくて正解だった。
38番 佐藤貢「網の小屋」
ついついその上を歩いてしまったロングカーペットのような網
レッドカーペットのように長く伸びているものだからついついその上を歩いてしまった。
このときはまだこれが作品の一部だと気づいていない時で、天気も良かったからか踏むとちょっとふかふかしているような感触があった。
砂利の上を歩くより足に優しいのだ。
なんか、この家に続いていた
遠くからだと町の中の古い家の一つにしか見えなかったこちら、近づくとその異様さに気づく。
伸びている網が家屋全体を覆っていて、まるで家の形をした網の化け物みたいにそこに佇んでいるのだ。
おどろおどろしい建物だ
妖怪じみているけど、その左脇には芸術祭の緑の案内板も置かれている。
間違いなく作品なのである。
38番だ
用を果たせなくなって人に捨てられた漂流物を使った作家活動で知られる佐藤貢さんの「網の小屋」だ。
この小屋に定置網漁で使う巨大な網が人から忘れ去られたように保管されていたそうで、その網とこの小屋に呼ばれて珠洲に来たのだと直感したそうだ。
そうしてできたのがこの「網の小屋」。
文字通り外観から網まみれになっている小屋だ。
なんならこの案内板から網が絡まっている。
ここまで作品に侵食されている案内板も他にない。
なんか注意書きがあった
雨水で漁網の色が溶け出して衣服を汚すことがあるそうで、雨だれには注意とのことだ。
黒茶色の汁が垂れてきて衣服のあちこちが汚れてしまう様を想像すると洗濯が絶対面倒なのでホラーより怖くなったりもしたけど、幸いにもこの日は天気がよく網もかなり乾燥していた。
なんというか、嘔吐しているみたいだな
網をまとった小屋の妖怪が口からさらに網を嘔吐しているようにも見るからどこかホラーだ。
でも、やはり汚れて洗濯が面倒になる怖さに比べるとこのホラー要素も可愛いものである。
いざ、侵入
外では乾いていたが中の方は果たしてどうか?
入ってみるまで安心できなかったので、忍びのように警戒しながら入っていった。
うむ、暗い
照明がほんのり点いていたのだけど、カメラのISO感度をかなり上げないと、光量が足りなくて何も写らないなんてことが起きるくらい、薄暗かった。
感度を上げて写ったものを見てみるとクラゲに似た巨大な深海生物が漂っているみたいだ。
ここが宇宙で、エイリアンっぽい存在にも見える。
はたまた世界中の負のエネルギーを吸収して大魔王に注いでいる管のようにも見えてくる。
色温度を変えて無駄に写真を赤くしてみた
禍々しさアップ。
照明が、巨大蜘蛛かなにかの光る眼のようではないか。
もっと明るくすると、こうなっている
屋根裏みたいなところから簾のように網が降りているんだけど、これくらいはっきり見えると何故だろうか、映画『グーニーズ』を思い出してしまった。
想像力が色んな方へ飛び火していく愉快な作品だ。
感想
服が汚れると面倒だなんてことも記したけど、実際に中に入って撮影していたときは、そういった憂いはすっかり忘れてしまって、必死に光量を集めて写しては、あれこれと勝手気ままな想像を膨らませてしまっていた。
小屋に網、それだけのシンプルさで出来ているから空想の裾野も広いようだ。
ただ、シンプルでもこの使っている網の量は常軌を逸している。
あまり見ないであろう後ろまで網
人知れず保管されていた網の怨嗟が具現化して化け物になったような作品で、作者の「網、使いすぎ」なこのこだわりがまさにアートで、見ていて楽しかった。
常人から見ると普通じゃないかもしれないけど、それゆえに見る側の解釈もまたたくましくなっていくのだ。
ちなみに自分はこの背後を見てドラクエの「わかめ王子」を思い出してしまった。
あしからず。