初心の趣

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奥能登国際芸術祭2023を地震に負けず回る第三日目その12(泰然+きみきみよ「あかりのありか」)

能登国際芸術祭2023の鑑賞旅もついに最後の若山エリアへ。

第三日目の最後は3つの作品が一箇所に集まった旧上黒丸小中学校へ向かった。

今回はNo.43の作品を取り上げたい。

 

 

3つの作品が集まった旧上黒丸小中学校へ

能登国際芸術祭2023、最後のエリアは若山エリアだ。

ここはそれまでの海に接する外浦側でも内浦側でもなく山間部にある地区で、市外からだと一番行きづらい、到達するのに時間がかかる場所かと思う。

どう行っても先に外浦か内浦どちらかを経由するため、その日の鑑賞スケジュールを組むときに「じゃあ、若山から行くか」とはなりづらい場所だったので、こうして第三日目の最後にやってくることになった。

2023では若山エリアには計5つの作品が展示されていた。

そのうちの3つが旧上黒丸小中学校に集中していたのでまずはそちらに向かった。

到着

到着してみると校舎の玄関へと続く階段の前にさっそく作品看板が3つ並んでいた。

この旧上黒丸小中学校は2017のときも2020+のときも別の作品の展示場所になっていたんだけど、どちらも体育館が展示場所になっていたので、こんなところに作品看板が並んでいるのは、自分としては「?」であった。

そうして階段を上がっていって体育館を見下ろして、「あ、今回は体育館では展示がないんだな」とわかると、一気に腑に落ちた。

今回は校舎の中が3作品の展示場所になっていたのだ。

ここから入っていく

受付も玄関を入ったところで行われていた。

靴は学校の下駄箱へ

これ、懐かしくていいね。

大人になって小中学校の下駄箱を使うなんてことなかなかないからこれだけでちょっと高揚した。

受付横に作品会場マップあり

これによると玄関のあるこの階、2階になるんだね。

なんでも若山エリアは山間部だから珠洲市内でもかなりの豪雪地帯で、冬になると2メートル近く雪が積もることも普通にあるらしい。

そのため大雪の日は2階から出入りする家々も多かったそうで、学校の玄関が2階に設けられているのもそういった理由からだと思われる。

作品No.順に鑑賞していったので、今回はNo.43の作品を紹介したい。

43番は2階と3階それぞれに展示場所があった。

 

43番 泰然+きみきみよ「あかりのありか」

地図に従って廊下を進む

出窓になったところに置かれている小物がいいですな。

受付をしていたのが地元の老齢の方々で、その方たちがこうしておもてなしの装飾をしてくれたのかなと思うとほっこりする。

渡り廊下の先に理科室発見

ここがNo.43の1つ目の展示場所だ。

43番だ

造形作家の「泰然」さんと童話作家の「きみきみよ」さんの合作である「あかりのありか」という作品だ。

いろいろ注意書きがある。

暗いところでの展示のようでカメラのフラッシュの使用は禁止されていた。

撮影そのものはOKなようだ。

入ってみるとこのような雰囲気

理科室の実験台にLEDと積み木で拵えられた造形物が並んでいた。

説明書きによるとこちらの作品、童話作家のきみきみよさんが、紙飛行機の「こーき」が能登を旅する童話を書き、泰然さんが珠洲市の子供たちとワークショップで一緒に学び作り上げた積み木とLEDの造形物「読書感想光」として表現し、画のない絵本を造形物とともに完成させていくというインスタレーションなのだそうだ。

このように童話のお話の部分と

LEDと積み木の造形物とが

一緒に展示されている。

珠洲市内のあかりの行事や光にまつわる文化やスポットのお話を読みながら、そのイメージを光と積み木の造形物で味わうことができる。

ちなみに原案制作者の名前もあった

物語をもとに地元の子供達が造形物の原案を考えたのだと思われる。

暗いので撮影には難儀するが幻想的な画が撮れるスポットだ。

かなり数もあるので、一つ一つ写真を羅列していきたい。

「みつけじま」

言わずと知れた「見附島」だ。

そびえ立った感じがよく出ている。

「のとろ」

奥のとトロッコ鉄道「のトロ」だ。

以前、廃駅の旅でも紹介した恋路駅のあそこだ。

下から撮るとその世界に紛れこんだよう

乗れなかったトロッコにやっぱり乗りたくなってきた。

「のろしとうだい」

横から撮るとしっかりと狼煙の禄剛崎灯台っぽい

俯瞰の画だけじゃなく下から、横からだとまた景色も変わってくる。

人によって撮る角度は色々あるだろうから、どう撮るかが、この作品の楽しみの一つだったりする。

「とろやままつり」

飯田町燈籠山祭りだ。

自分、この祭りを見に行ったことがないので、この造形物でイメージを吸収したい。

「すずやき」

この形で珠洲焼か…

あ、窯か…

器ではなく制作現場だ。きっとそうに違いない。

出際にもう一度、滝

この角度から見ると、この滝、ウォータースライダーみたいで格好いい。

子供から見ると垂水の滝もこう見えるようだ。

大人としてはそういった発見も観ていて面白い。

 

3階へ

この作品はこの理科室だけでなく3階にもあるというので、もちろんそちらも観に行ってきた。

この階段を上がっていく

過去の芸術祭でこの旧小中学校の校舎の中をこんなに歩いたことがなかったので、ちょとした冒険をしているようで興奮した。

43番は右か

この手書きの黒板があったかい。

こっちか

突き当りの部屋がそのようで、上部のプレートには「家庭室 調理室」と書かれてあった。

中の雰囲気はこんな感じ

理科室と似ている。

水も使うし火だって使うし、似ていて当然か。

こちらも作品の写真を羅列していきたい。

「こいのぼりかわわたし」

5月に大谷川で行われるものだ。

自分はまだ見に行ったことがないので…

この子の感性に委ねよう

おお、登っていく感じがある

いいじゃないか。

こちらは「えんでんむら」

この螺旋は何だ?と考えたら、塩をまいた時の曲線か!と閃いたとき、この作品とシンクロした感じがあって急に好きになる。

「あおのどうくつ」

珠洲岬の青の洞窟だ。

自分、ここに入ったことがないんだけど、この淡い青色が特別感でていて惹かれた。

「らんぷのやど」

青の洞窟の直ぐ側の宿だ。

このアングルのランプの宿、見たことある。

右側の紫の明かりは海だ。夜の海だ。

よく出来ているなぁ。

「のとがわら」

能登の瓦は黒瓦なんだけど、その部分がちゃんと影になって暗いっていうのが上手い。

横から撮っても黒い(暗い)

光を扱う時の計算が巧みだ。

こちら「ごじらいわ」

右下の螺旋が渦潮のようにも波の花のようにも、サザエのようにも、ゴジラの尻尾のようにも見える。

ミニラ?

隣には小さいのもいる。

ゴジラの子供「ミニラ」だろうか?と思ってしまうのは、自分がそういう世代だからだろうか?

「きりこまつり」

切子灯籠が数本あるのがいいね。

それぞれで色が違うのも。

実際のキリコも、同じようで描かれているものが違ったり文字が違っていたりで、その地区の「色」が出ている。

そして最後「さかさすぎ」

自分はまだ観に行っていないが、珠洲市の上戸には樹齢900年の「倒さ杉(さかさすぎ)」がある。

お寺の門前にあるんだけど…

この配置で寺と杉を表現している

ちゃんと物語に沿って子どもたちがいろいろと考え、発想力をフル活用している様が目に浮かんでくる。

ワークショップに参加しているわけでもないのに、その場にいたような感覚があった。

 

感想

入口の前にはこのような説明書きも

7月に珠洲市内の小学校9校の児童たちを集めて「積み木であかりの特別授業」を実践していたようだ。

珠洲市に今現在住む子どもたちが自分たちの住む町がどんなところで、どのような魅力があるのかを知り、それを作品に乗せて発信していたんだとわかる。

泰然さんときみきみよさんの作品なんだけど、主役は珠洲の子どもたちで、珠洲そのものなんだろうなと気づく。

これをきっかけに、子どもたちの中からアートに目覚めたり、町の復興や再建、町おこしの重大さに気づき、実践していく子が出てくれば、この芸術祭に意味があったと言えるだろう。

珠洲の今の魅力を切り取りながら、未来へと繋がり育む素敵な作品であったとよくよく思う。

能登国際芸術祭はこういった作品が集まっているので、自分としても足を運ぶことをやめられない。

珠洲はいいところです。