初心の趣

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「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第四日目その11(Noto Aemono Project「海をのぞむ製材所」)

能登国際芸術祭2020+で目にした作品の紹介、第四日目その11だ。

今回はNoto Aemono Project「海をのぞむ製材所」を取り上げたい。

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海沿いにある現役の製材所

三崎エリア2つ目の作品は小泊の海沿いにある新出製材所で展開されている。

その製材所に魅了された、沖縄、東京、珠洲のデザイナーや職人が手を組んで結成されたチームが「Noto Aemono Project」(のと・あえもの・ぷろじぇくと)だ。

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案内に沿って到着

道路に立てられている案内板を頼りに車を走らせていると迷うことなくたどり着くことが出来た。

到着してみると木材が普通に山積みにされていたりするので、営業感ありありだ。

これはこれで、そこが芸術祭の展示場所だとは思いづらかった。

矢印が示すように駐車したけど、仕事の邪魔にならないかと思え、本当に停めていいのか迷ったくらいだ。

なにせ、旧製材所ではなく、現役の製材所を作品の舞台にしているのだから。

ただ、あとで知ったことだけど、現役の製材所とは言え、芸術祭の会期中は休業していたそうなのだ。

会社経営的には思い切ったことするなとも思ったけど、御年70を超える社長の新出さんが地域への恩返しとして休業を決めたそうだ。

 

11番 Noto Aemono Project「海をのぞむ製材所」

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11番だ

「海をのぞむ製材所」だ。

案内板には注意書きが3つほど書かれてあった。

そのうちの2つ「材木に登らないでください」「展示中の機械に触れないでください」は危険なので絶対にやってはいけない。

材木ってすごく重いので、押しつぶされたりしたら人間なんてあっさりとやられてしまう。自分などは逆に「これ、転がってきたりしないよね」とちょっと距離をとって歩いていたくらいだ。

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まあ、転がらないように置いてあるんですけどね

楔みたいなものを差し込んで、下の方にもストッパーのような角材も敷いてある。

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横から見るとわかりやすい

こういう「材木の積み立て方」を見ているだけでも勉強になるし個人的に面白かった。

さて、こうしてすでに見えているように、本作は現役の製材所を舞台にした海をのぞむベンチの作品だ。

工場の前に木製のベンチがきれいに並んでいる。

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角度を変えてみるとその美しさがわかる

均整の取れた美しさがある。

ベンチの横のラインが、階段を登るように順に続いているのがわかるだろうか。

なんだったら、そのまま伸ばしていったら海の水平線にまで続いているんじゃないかと思えるくらいだ。

案内の人が言っていたのだけど、これ、視覚的にそう見えるように、配置してあるベンチの横の長さやベンチの高さを一列ずつ変えてあるそうなのだ。

ここからだと手前のベンチほど横に長く高さが低い。奥のものは逆に横が短く高さがあった。

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別角度から

わかるだろうか?

一番奥のものは特に高い。高すぎてベンチとして座るには不向きなくらいだった。

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奥へ

これくらい高いのだ。

ベンチと言うよりもう作業台だ。

海に沿った一番奥なんて、もうテーブルだ。

でも、面白いのは、この奥のベンチから逆に道路側からみて手前のベンチの方へと望むと、ここでも均整の取れた美しさを目にできる点だ。

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屈んで足の方を覗き込むと

天板と足とで出来た直角三角形の空間が、貫通したトンネルのようにキレイに一直線に並んでみえた。

遠くの民家の壁まで見えてしまう。

こういったものも計算されて作られているみたいなんだけど、建築学って面白い。

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この年季の入った機械もカッコいい

自分も仕事で古い機械を使ったりするので、メンテとか大変だと思うし、あと何年使えるかわからくて不安にもなるかと思うけど、このサビ具合がいい味出てて、鑑賞している分にはたまらん。

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材木も展示?

あえて展示してあるのだと思われる。

これまた水平線と水平なものだから、狙って置かれているのだろう。

何だったら窓枠とかも全部水平じゃないか。

この製材所に魅せられてデザイナーや職人が集まってきたという話、だんだんと分かってきたような気がする。

なお、10月9日(土)と10月10日(日)の二日間限定でこの製材所でお弁当の販売も行われていたそうだ。

海を眺めながらベンチでお弁当を食べれたのである。

自分が向かったのは10月4日(月)だったので、それは果たせなかったが、ここで弁当を食べたくなる気持ち、すごくわかる。

実際、羨ましいと思った。

一番海側のベンチは高すぎてベンチとしては使えないかもしれないけど…

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安心して欲しい、こういうのも脇にあった

ここなら海を真正面に弁当も食べれたはずだ。

もう一度いう、羨ましい。

 

感想

デザインや建築学って面白いということを思い知らされた作品だった。

計算されたベンチの設計、配置、さらには海へと続くロケーションとの演出に見事にやられてしまった。

建築学をちょっと勉強してみたくなったくらいだ。

ほんと、ここで弁当を食べたかった…

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海が綺麗だわ

昨年2020年にはこの珠洲の海岸にイルカが現れたそうで、ご飯を食べながらイルカも見れたら最高だっただろう。

なんでも2020年に現れたイルカのおかげでミナミハンドウイルカの最北端の生息域が珠洲市となる可能性が指摘されているんだとか。

また、文献によると須須神社の祭神はイルカを使いとしているそうで、珠洲市って海豚と昔から縁があるようだ。

イルカを見に(探しの企画になるかな)また珠洲市にやって来たくなったものである。