石川県がまん延防止等重点措置でも公開作品を限定して開催された珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」。
開催日の翌日(9月5日)に足を運んで目にした作品の紹介、その4だ。
第一日目、最後になる今回は若山エリアと大谷エリアで鑑賞した作品についてまとめたい。
若山エリア
若山エリアは飯田から北上して山の方にある。
山の方だからか、このエリアでの作品はもともと3つしかない。
まん防の中、作品を限定して公開しているため、若山エリアで一部公開ではなく完全に公開している屋外の作品は42番の一つだけだった。
若山に差し掛かったところで寄り道
山の方で周りにコンビニがないというところが続くので、ひとまずこちらの「若山の庄」でトイレを済ます。
ついでに「しおサイダー」を購入
水分を出しておいて、水分を補給。
しおサイダー、以前より一度飲んでみたかったので買ってみた。
一本200円。一緒に買ったまんじゅうは140円。
飲んでみるとまろやかな塩味をしたサイダーだった。でもしょっぱくはないから不思議。
癖になる大人の味といったところで、自分、この味かなり好み。
なお、「若山の庄」は食事処(お母さん食堂)でもあるので、次以降、昼時に立ち寄れたら食事もしてみたくなった。
42番 四方謙一「Gravity/この地を見つめる」
寄り道パーキング「若山の庄」からさほど離れていないところに旧大坊小学校のグラウンドがあり、そこにまん防中の若山エリアで唯一公開されている作品が置かれている。
42番だ
四方謙一さんによる「Gravity/この地を見つめる」だ。
こんなところにある
駐車場より撮影。
旧小学校のグラウンドのようだけど、草も茂っていて、周りも山だし、小さな牧場のようにも見えた。
そんな草の上に…
奇妙な形をした鏡のようなものが3つ置かれていた
これ、吊るされていて浮いているように見えるせいか、地球外生命体のようにも自分の目には映った。
真ん中のひし形が、笑っている人の口元みたいに見えるんだよね。
ガイドブックの作品の説明書きによると「小さなきっかけから思いもかけない風景が生まれる、変化の連鎖に向き合う作品」とのことで、コンセプトも「地球にまかせる」ということのようなので、地球人である自分が勝手に自分なりに受け取って、勝手に解釈させてもらいました。
人間と比べると結構大きい
こうしてみると長閑だ。
悔やまれるのは、この日は天気が悪くて、ちょっと雨が降っていたくらいなので、もっと太陽が出ていて光の反射も激しかったら、また別の何かに見えていたんじゃないかと思う。
なるほど、たしかに地球次第だ。
余談だけど長靴履いて入っていきました
2017年の第1回奥能登国際芸術祭をすべてまわった経験から、特に雨の降りそうな日や前日に雨が降った日などは長靴を用意しておくと良いことを知っていたので、車に積んでおりました。
この小さな牧場みたいなところ、雨降っていると結構ぬかるんでいた。
近づいてさらにアップで
距離や角度によって鏡面に映り込むものが違うから、また別の表情を見せてくる。
よりホラーっぽく見えたのは自分だけだろうか?
さらに近づくと…
撮影している自分も写り込んでしまう。
上部に写っている姿が歪んでいて我ながら気色悪い。
映画『リング』(貞子が出てくるやつ)を思い出してしまった。
気色悪いと思っていながらまた撮る
分身の術みたいだなと、すぐに気色悪さも忘れてしまっているんだから自分の頭の中ももテキトーである。
まともなコメントをするなら、万華鏡のようでもあった。
場所によっては鉄塔が映り込んでいる物もあり
この鉄塔をもっとどうにか格好良く撮れなかっただろうかと、自分の腕の無さを悔やむ。
さらにはこういうのもあった
なにこれ、牛舎? やっぱり牧場?
ってなった小屋のようものの中にも鏡面仕上げのオブジェの小さなものがいくつも並んでいた。
奥の方まで並んでいた
それぞれ吊るされた高さを変えながら並んでいる。
その上下の差もあって映り込んで見えているものもそれぞれで違ってくるわけだ。
小屋の屋根が映っていたり、外の田畑が映っていたり
大きいやつと同じく歪んで映ったり
やっぱり形が「口」に見えるので、この小さなものたちも宇宙からやってきた生命体のように捉えてしまう自分。
新聞(だと思われる)記者の人、発見
記者の人たちはスーツで見に来ているからよく目立つ。
スーツ姿だと地球外生命体を監視している職員のようにも見えてしまった自分。
こうして横から見ると
2Dアクションのマリオのステージみたいに見えてきた自分。
サブカルで育ってきたのがバレてしまいそうだ…
大谷エリア
県道28号線へ移動
若山エリアからさらに北上して外浦(日本海)の方に出ると大谷エリアがある。
国道249号線が新しくなっていたので若山エリアの方からも随分と行きやすくなった。
大谷エリアは限定公開中でも完全公開が3つ、一部公開1つと見るところが多かったが、自分はこの日、時間の都合もあって、それらのうち2箇所だけ見て回ってきた。
4番 スボード・グプタ「私のこと考えて」
海沿いの県道28号線を走っていると、「あれ、4年前の2017年のときにもここ立ち寄ったな」と記憶が蘇る場所に公開作品があった。
4番だ
インドのアーティストであるスボード・グプタ氏による「私のこと考えて」という作品だ。
この場所、2017年では深澤孝史さんの「神話の続き」が置かれていたあたりだ。
(2017年の「神話の続き」を見てきたときの記事は→こちら)
作品はこちら
天気が悪いのが悔やまれますが…
おそらく漂流物だと思われる海のゴミを山積させたものだ。
てっぺんに大きなステンレスバケツが配置されて、そこから海のゴミが吐き出されているようなイメージだ。
こっちから見ると吐き出されているのがわかりやすい
空中に異次元からバケツが出現して、海を汚す奴らに仕返しするようにゴミをばらまいているようである。
主に浮きやプラバケツ、プラカゴだろうか。
中には缶もあった
靴とかもあったし、海って、色んなものが漂っているんだなと再確認した。
こういうのを海洋生物が飲み込んだりしたら、たしかにたまったものじゃない。
海の恨みが聞こえてきそうである。
なんだか海ゴミの怪物に見えてきた
海の怨嗟のせいで出現した怪物だ。
ステンレスのバケツが頭部だ。
ちなみに近く(同じく珠洲市の大谷エリア内)に「ゴジラ岩」という観光スポットがあるので、対決している画を想像してしまった。
こちらがゴジラ岩
後ほど立ち寄ってきた。
サイズ的に同等なので、いい勝負になるんじゃなかろうか。
作品で遊ぶ
ゴミを海にばらまいているのは自分、といった具合に写真で遊んでみた。
怪物を生み出すラスボス感も味わえたが、これ、一人でやると、撮影が結構難しかった。
なにはともあれ、海もキレイにしたいものである。
46番 アレクサンドル・コンスタンチーノフ「珠洲海道五十三次」(笹波口)
4番の「私のこと考えて」のすぐ側のバス停にもアートを施した2017年の作品があるので、4番の駐車場に車を停めたまま歩いてそちらも観に行ってきた。
道路に出るともう見える
車も通るので、歩いていく際は気をつけていただきたい。
46番だ
市内に4箇所、広域展開されている作品で、この日だけでも3つ目だ。
2017年の作品なので自分としては懐かしい。
バス停「笹波口」にある
こちら、他の46番の中でも結構年季の入ったバス停なので、アルミパイプがますます補強材のように見える。
それでいて古ければ古いほど新しいパイプとのギャップのせいで味が出てくるのも、この作品の面白いところだ。
中の様子
どうだろうか、この昔の家の土間のような趣。
これでもちゃんと現役のバス停だ。
明るく撮ってあるけど、中はなかなか薄暗かったので、ちょっと不気味でもあった。
この手作り感がたまらない
たぶん、チラシとかお知らせとかを入れるためのものだと思うけど、空き箱で作られている。
公共の場でこういうのって結構珍しいが、これもたぶんSDGsと呼べるだろう。
中からパイプも拝める
檻に閉じ込められているようにも見える…
結界を張られて出られない、なんてことも空想できた。
便数、少ない
狼煙行なんて一日一本しかないじゃないか。
ザ・ローカルだ。
景色はね、いいんだよね
背後、ちょっと崖になっていて海があるのでカメラのロケーション的には良かったりする。
夕日がキレイな時だと、このアルミパイプにうまいこと光が反射したり、赤く色づいたりしないかなと期待もしてしまう。
そういうのを撮れるようになったら、自分のカメラの腕も上がったかなと思えるだろうけど、先は長いだろう。
感想
一日目に押した全スタンプ
以上、第一日目に若山エリアと大谷エリアで目にした作品の写真だ。
アートや文学等々、作品というものは世に出れば作者の手から離れ、視聴者それぞれ十人十色の勝手な解釈がなされるものであり、その自由が常に内包しているものだと自分などは考えているが、今回紹介した3作品はかなりサブカル目線で受け止めてしまったかと我ながら思う。
自分の価値基盤がサブカルチャー(日本的な意味での)によって形成されているからだろう。
これら作品は第一日目の後半に目にしたものであって、奥能登国際芸術祭2020+を回っているうちにどんどん自分らしさが出てしまったからに違いない。
珠洲市自体もサブカル、嫌いじゃないなと感じる節があるので、自分のサブカル的解釈はそんな珠洲市のせいであるとも言えなくもない。
いまでは漫画やゲームと言った日本的サブカルも市民権を得まくって、むしろそれらこそハイカルチャーなんじゃないかと思うくらいなので、自分の勝手な解釈、勝手な作品の楽しみ方も、これが今の社会というものだと、ご容赦いただきたい。
2週間後にまた「奥能登国際芸術祭2020+」へやって来たので、次回以降は第二日目に目にした作品の紹介をしたい。