初心の趣

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「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第四日目その7(青木野枝「mesocyclone/蛸島」)

10月からすべての作品が鑑賞可能になっていた奥能登国際芸術祭2020+。10月4日、四回目の鑑賞旅にて目にした作品の紹介、その7だ。

今回は青木野枝さんの「mesocyclone/蛸島」を取り上げたい。

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蛸島町の旧銭湯へ

青木野枝さんの「mesocyclone/蛸島」は蛸島エリアの中でも民家の並ぶ町中の旧銭湯にあるので、側に駐車場がない。

車で来た場合は徒歩で2分ほど離れた蛸島漁港の東側に停めることになる。

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漁港東側に駐車場の案内板

これに従って停めればいいのだけど、誰も他に停めている車がないとこの辺だろうかとちょっと戸惑うことになる。

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まあ、このあたりで停めればいいのだろう

おそらく芸術祭を見に来ているであろう人の車も停まっていたので、この辺に停めた。

奥の海の方はさすがに漁港関係者の車しか停めれないと思う。

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展示場所の誘導図もあった

あったけど、分かりづらい。

迷子常習犯の自分は地図を読むのがあまり得意ではないので、これは混乱した。

最初の矢印がこの誘導図を正面にして直進なのか右折なのか迷ってしまったのだ。

悩んだ末に、とりあえず直進してみた。

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正解だった

突き当りに左折を促す案内板があったので間違いない。

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進むとまた案内板

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さらに進むとまたまた案内板

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あとは直進すればいいらしい

右手には高倉彦神社の大きな石鳥居も見えてくる。

その前も通過して歩いていくと芸術祭の幟旗が立った黒い能登瓦の古い建物が見えてきた。

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これかな

民家に紛れて、というか遠くから見ると民家なので幟旗がなければ自分などは通り過ぎていたと思う。

道も細く、駐車場もないので、ここへ車で来るのは確かに難しい。

路駐は迷惑になるしね。

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旧銭湯だ

高砂湯」という名前だ。

もう30年も前に営業をやめているそうだけど、建物、かなりキレイに残っていると思う。

黒い能登瓦が城みたいで渋いし、味わいがありますな。

 

16番 青木野枝「mesocyclone/蛸島

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16番だ

案内板が立ててあるのではなく、ガラス戸に貼ってあったのが新しい。

作者の青木野枝さんはこう書いて「あおきのえ」さんと読む。

最初、名字が2つ並んでいるように見えて仕方なかった。

ガイドブックによると鉄という素材に魅了されて、溶断と溶接を繰り返しながら作品を制作しているとのこと。

今作も鉄を使っている。

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入るともうその「鉄」が見えている

受付も入ってすぐ脇のところにあり、その時点ですでに作品が見えている。

脱衣場から作品が置かれていた。

タイトルの「mesocyclone」って小規模の低気圧のことなんだけど、ガイドブックによると大気や蒸気のインスタレーションということで、この鉄の鎖のようなものが湯気のようにも見えてくる。

もしくは蛸島だけに巨大なタコの足のようにも見えてきた。

どれも天井まで伸びているので、自分が手のひらサイズの小人だったら登っていくイメージが湧いた。

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こんなイメージで

ジャックと豆の木だ。

もしくは修行だ。カリン塔に登っているような心地がする。

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登っていると入浴料金表発見

昭和63年のものだ。

中学生以上が260円で、小学生が100円で、それ未満は50円とくる。

いまのスーパー銭湯なんかと比べると全然安い。

バブルの時代だから儲けていた人は儲けていただろうし、それでこの安さはありがたい話だ。

現代の日本は、所得が上がっているわけでもないのに物価がどんどん上がっていくので、これくらいの価格に戻っていってくれないかなとつくづく思う。

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エチケットは守りましょう

こちらの絵にも時代を感じる。

「洗濯はやめましよう」とある。銭湯で洗濯していた人、いたんだね。

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お風呂場の方にも展示あり

作者の青木野枝さん、近年では鉄以外にも石膏やガラスなどの異素材も作品にしているようで、この風呂場のほうには石鹸がいくつも積み重ねられてあった。

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古代人が残したミステリーな遺跡みたいに石鹸が積み上げられている

自分が小指の第一関節くらいまで小さくなっていたらこれにも登って修行に使っていただろう。

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風呂に到着(水は張っていない)

自分が小人のままだったら巨大な湖みたいなものだ。

受付の方が「(脱衣場に)上がって見ていってください。何だったらお風呂に入ってもいいですよ」と冗談のようなことを言っていたのだけど…

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浴槽に入ってみた

そこからの景色だ。

入っていいと言うので入ったのだから、もちろん怒られなかった。

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浴槽から頑張ってキレイに撮ってみた

せっかくなので、鉄と石鹸の両方がバランス良く収まるように撮ってみた。

昼間で外が明るすぎるので光量をは抑えてある。かなり暗く、営業中の銭湯の感じは殆ど出ていない。

もっと風呂場が明るければ…

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天井はこうなっている

自然光を取り込んでいるだけで、照明器具がないので、天井部だけは明るい。

それらをひっくるめて、浴槽から撮影した景色が、だんだんと海の底の景色にも思えてきた。

それにしても…

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男湯と女湯が上の方で繋がっているんだね

むかしの銭湯とか行くと、こういうところまだ残っていたりするんだけど、自分はこれを見るたびにむかしの高橋留美子さんの漫画を思い出してしまう。

覗いたり、覗かなかったり、ドタバタが起きそうで好きだ。

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脱衣所でも上の方が繋がっている

覗こうとしていたやつ、絶対いたと思う。

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女湯の方も見に行く

もしかしたらこっちが男湯の方だったかもしれないけど…

もう使われなくなっているし、アートの展示場所であるはずなのに、こちら側が女湯側だと思うと、踏み込むのに遠慮の気持ちが多少働いてしまったのは自分だけだろうか?

ちょっとドキドキして見に来たこちら側でも鉄と石鹸のアートが展開されている。

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やっぱり風呂場はやや暗め

これ、自分の撮り方が悪いのだろうか?

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もちろん浴槽(水は張っていない)にも入った

そこから撮影。

女湯だとしたら悪い事しているなとの罪悪感からか、より写真が暗くなってしまった。

ほんと、こっそり覗いているみたいじゃないか。

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ちなみに背後を振り替えると白鳥の絵

タイル絵だ。

銭湯はやっぱり絵がないと。

スーパー銭湯ではこういう「ザ・銭湯」みたいな絵をなかなか見かけないので懐かしい。

湯に浸かりながらノスタルジーにも浸れる… 昔ながらの銭湯に入りたくなってきた。

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男湯側(だと思われる)はバンビでした

かわいらしいな。

子供や、子供連れの女の人に好まれそうな絵だ。

もしかしたら、こちら側が女湯だったのかもしれない。

こちら側、すんごく遠慮なしにズケズケと入っていたけど、営業中だったら石鹸や桶が飛んできただろう。

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あ、古い桶あった

飛ばしやすそうだ。

 

感想

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これ、いいな

受付の人が「こんなところにあるこの作品を見に来るような人は、よっぽど芸術祭が好きな人」という類のことをパスポートにスタンプを押しながら言っていたのだけど、確かに住宅地の分かりづらいところにあるし、作品も独特で解釈が難しいかもしれない。

でも、自分はなんだかんだとここに長居して、バシャバシャと写真を撮ってしまっていたのだから、かなり楽しんでいた。

昔の銭湯ってやはりいい。

そこを展示場所にしてくれている青木野枝さんにはただそれだけでなんだか感謝したくなる。これを機に昔ながらの銭湯が復活したり、それっぽいスーパー銭湯が新たにできたりしてくれたらなと願う。

あ、でも覗きは犯罪ですから。気をつけましょう。