初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第三日目その2(ディラン・カク「😂」)

石川県内のまん延防止等重点措置が解除されてすべての作品が鑑賞可能になった「奥能登国際芸術祭2020+」へ10月2日に足を運んだ。

その日に目にした作品のうち、ディラン・カク氏の「😂」の写真をまとめたい。

f:id:seisyunsanka:20211007225037j:plain

 

 

検温スポットがある旧鵜飼駅

能登国際芸術祭2020+を見に行ったのもこれで三回目だ。

第三日目にもなると検温も慣れっこである。

今回紹介するディラン・カク氏の作品のある旧鵜飼駅は検温スポットも設けられているので、前回巻いていたリストバンドを携えて向かっていた。

…と思ったけど、鵜飼駅の真ん前のロータリーになっているところにある駐車場が満車で、別の駐車場に誘導されてしまった。

f:id:seisyunsanka:20211006224245j:plain

こちらに停めてとのこと

どこかと言うと、珠洲市立宝立公民館だ。

鵜飼駅からもそんなに離れておらず、徒歩で1~2分くらいだろうか。

f:id:seisyunsanka:20211006224628j:plain

この道に出ると…

f:id:seisyunsanka:20211006224723j:plain

もう廃駅が見えてくる

UFOみたいな形をした屋根の建物が旧鵜飼駅の駅舎だ。

この駅も個人的に行っている企画・廃駅の旅で2ヶ月位前にやって来ているので、自分としては「ただいま」といった心境であった。

廃駅の旅で訪れたときの記事はこちら

その駅舎の斜め前のタクシー営業所が…

f:id:seisyunsanka:20211006225340j:plain

検温スポットになっている

前回のリストバンドを持っていると、簡単な問診票に丸をつけていくだけで済むのですぐに終わった。

 

39番 ディラン・カク「😂」

旧鵜飼駅に置かれている作品は香港のディラン・カク(郭達麟)氏による「😂」という作品だ。

公式ガイドブックやHPで事前に目にしていたこの絵文字のタイトルをしばらくタイトルだと思っていなかったのだけど、これ、自分だけだろうか?

初見だと「ん?」となってしまうこの絵文字がディラン氏の作品名なのだ。

f:id:seisyunsanka:20211006230719j:plain

39番の案内板でもこのように

イカラな作品名だ。

この39番も、まん防中に一部公開作品になっていたが、解除されたことで駅舎の中で受付が行われていた。

f:id:seisyunsanka:20211006231211j:plain

ずんずんと入っていける

入って右手は廃駅の旅でも立ち寄った「ナチュラルカフェ ミナント」だ。左が受付になっていた。

f:id:seisyunsanka:20211006232000j:plain

受付

リストバンドチェックとパスポートへのスタンプを押して貰える。

まん防が解除されて公開された作品は基本的に室内なので、こんな感じで受付があり、リストバンドチェックが必須のようになっていた。

さて、もう見えていると思うけど、受付の段階で作品がいた。

「いた」という表現は作品という無機物なものにふさわしくないかもしれないけど、「いた」がしっくりくる。

f:id:seisyunsanka:20211006233010j:plain

なんか人間っぽいから

この人間のようにスマホを眺めているクマみたいな巨大なバルーンが「😂」のメインだ。

ちなみに自分はずっとクマだと思っていたのだけど、これ、「サル」なんだそうだ。

f:id:seisyunsanka:20211006233318j:plain

こんなお願いもあった

「猿」さんからのお願いだ。

体は大きいけど繊細なのでやさしくしてほしいらしい。

これからもハッキリしているように「サル」なのだ。

突き詰めていくと「人間」、または現代人そのものなんだろう。

そんなサルが駅舎の外、プラットホームの方にもいる。

f:id:seisyunsanka:20211006233623j:plain

しかも2匹(2体)

でかいのでほんと目立つ。

f:id:seisyunsanka:20211006234418j:plain

そしてシュールだ

シュールなんだけど、近年の電車の中とか、プラットホームって、下むいてスマホばかりずっとやっている人が多いので、一概に超現実的とは言い難かったりするから面白い。

f:id:seisyunsanka:20211006234621j:plain

となりで一緒に座る人、続出

おんなじポーズで横に並んで座る方々が多かった。

図体デカイけど、普段の自分たちと似たオーラを持っているからか親近感が湧くのかも知れない。

もしくは寄り添ってくれているだけで妙な安心感があるのかもしれない。

f:id:seisyunsanka:20211006235249j:plain

気のせいか曇り空とマッチするボディの透明具合

まあ、ずっと下を向いた体勢なので決して陽気な印象の作品ではない。

そこに存在しているのかしていないのか、この曖昧さ、希薄さが、SNS上だけでつながる直接顔の見えない相手(人間)そのもののようでもある。

f:id:seisyunsanka:20211006235936j:plain

この角度から撮ると… ちょっと怖い…

よく見ると目も口もない、のっぺらぼうなんだね。

時代から取り残された人から見ると、現代人はみんなこんな感じに見えるのだろうか?

自分も数年前にスマホを持つようになったけど、こんな感じに見られているのかなと思うと危うく思えてくる。

坂本九も歌っている… 上を向いて歩かねば…。

 

実は郵便局に見立てている

解釈次第ではちょっと怖くもなるこの作品だけど、ガイドブックによるとこの廃駅を郵便局に見立てているのだとか。

その上で、SNS絵ハガキを使ってもっとゆったりしたコミュニケーションを提案しているそうなのだ。

キーワードは「ゆったり」だったようだ。

SNSってほんと情報のやり取りが早いからね、ハガキなんてそれに比べたら車のレースに三輪車で出場するようなものだろう。

それで、この駅舎でも実際に絵ハガキが売られていた。

f:id:seisyunsanka:20211007222255j:plain

数種類の絵ハガキが売られていた

一枚100円だ。

f:id:seisyunsanka:20211007222455j:plain

スタンプなんかも置かれていた

伝えたいメッセージなんかをスタンプを使って作成することができるそうだ。

キーボード入力なんかと比べたら随分と手間のかかることをあえてやるというのも楽しいものである。

また、ここで書いたハガキを受付の人に渡すことで、受付の人が実際の郵便局へ持っていってもらえるのだとか。

これまた、送信ボタンワンクリックでメッセージを送ることができてしまうメールやSNSと比べると、送るという行為だけで随分と時間をかけてしまうものだ。でも、この無駄な時間のかけ方がやっぱりいいんだよね。

f:id:seisyunsanka:20211007223344j:plain

ちなみに自分も一枚購入した

作家へのメッセージも大歓迎と書かれてあったので、家に帰って時間をかけてのんびりとそのうち書いてみようかと思う。

 

感想

以上、旧鵜飼駅で目にしたディラン・カク氏の「😂」である。

キーワードの「ゆったり」、のんびりマイペースな自分としてはじつに上等、ウェルカムな主題であった。

最初はクマだと思っていたサルも撮れば撮るほど可愛らしく見えてきたのだから、許されるなら天気のいい日に、あのサルの隣でのんびりと腰掛けながら「ナチュラルカフェ ミナント」のランチかサンドイッチを食べたくなった。

(「ナチュラルカフェ ミナント」、芸術祭期間中は営業時間がいつもと少し違うみたいなので立ち寄る際は注意が必要だ)