初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第一日目その2(直エリア公開作品)

まん延防止等重点措置が石川県内で適用されている最中に始まった「奥能登国際芸術祭2020+」へ、9月5日に足を運んだ際に目にした作品の紹介、その2だ。

今回は直(ただ)エリアで鑑賞可能であった作品の写真を並べたい。

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直エリア

まん延防止等重点措置のため、この日の「奥能登国際芸術祭2020+」は公開作品が限定されていた。

基本的に屋内に展示されているものは鑑賞ができず、主に屋外の作品だけ鑑賞が可能となっていた。

中には屋内と屋外を併せ持つようなところもあり、そういうところは一部のみ公開していた。

今回、自分は一部公開の作品は避けて、まん防の最中でも完全に公開されている作品ばかり狙って観に行ってきた。

直エリアでは、作品番号、27番と28番がそうだった。

 

27番 村上慧「移住生活の交易場」

ラポルトすずを中心とした飯田エリアから次に向かったのは、2017年でもやはりセーブポイントのようによく訪れた道の駅「すずなり」だ。

2017年のときにはこの道の駅敷地内に作品が展示されていたが今回も置かれていた。

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こんなところ

道の駅「すずなり」は、のと鉄道能登線の「珠洲駅」があったところで、当時のプラットホームも残されている。

そのホームに作品は展示されている。

写真の一番奥に見えるスロープ(坂)のあるところが旧珠洲駅のホームだ。

余談だが、左に見える建物は「すずなり館」で、お土産や弁当なんかを買うこともできる。

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スロープまで近寄ってみる

27番だ。

「移住を生活する」プロジェクトを行っている村上慧(むらかみさとし)さんの「移住生活の交易場」という作品だ。

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ホームの下から見るとこんな感じ

ホームがそのまんま残されているような状態なので、どういう作品なんだとこのときにはよくわからなかった。

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案内板の側にはこんなショップも設けられているし

「村上が移住しながら拾った物を生活費と交換するSHOP」と書かれてある。

いろいろと並んでいたけど、ほんと、どこかで拾ってきたものばかりで、見ていて「???」となった。しかもそれなりの値段で売られていたので、ますますわからなくなってきた。

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ホームにはモニターが

モニターが4つくらい付いていただろうか。

「ペンションクルーズ」や「柳泉寺」「照覚寺」と書かれた札が下げられ、おそらく作者がその場所で撮影したと思われる出会いの動画を流していた。

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珠洲駅で自分は何を見せられているのだろうか…

よくわからないまま進んでいくと、そのうち犬小屋のような小さな「家」がこのプラットホームの上に置かれていることに気づく。

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「村上」と書かれた小屋だ

このアートの作者の名前だ。

なんでも村上慧さん、発泡スチロール製のこの家を背負いながら各地を歩いて、泊まる場所を借りながら生活するというプロジェクトを行っているそうで、奥能登国際芸術祭の期間中はこの旧珠洲駅で暮らしているという。

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ショップの隣では実際に背負って歩いている映像も流れていた

こんな感じで「家」を背負って、というかかぶって歩いている姿が映されていた。

それを実際に目にした町の人たちはたいそう笑っていたけど、そりゃ笑う。

自分が目にしても笑う。

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側面から

寝袋とTシャツが干され、その下には太陽光パネルのようなものも置かれていた。

電気、使えるんじゃなかろうか。

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背後より

正面の扉には石が置かれていて開けれない状態であったので、後ろから入れないかなと回ってみたら、窓っぽいものはあるもののこちらも閉ざされていた。

ただ、屋根の小屋束あたりの三角部分が開いていたので…

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中を覗いてみた

なんかリュックが置かれていた。

バックパッカーのような旅人感が滲んで見える。

けど、背負っているのは「家」だ。

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プラットホームで野菜、育ててた

プランターに白菜の文字。

芸術祭期間中に収穫できるのかは謎だ。

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予定表があった

野菜の予定表ではなく、作者と作品の予定表だ。

9月7日、誕生日だったようだ。

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っていうか、その脇に本人がいた

ちょっとびっくりした。

本当にプラットフォームで暮らしているようだ。

作者も含めての作品なんだろう。

面白い取り組みだ。

 

28番 磯辺行久「偏西風」「対馬海流リマン海流

次に訪れたのは旧珠洲駅から歩いても行ける距離にある珠洲市民図書館だ。

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こちら

昔の使われなくなった図書館ではなく現役バリバリの図書館だ。

ここも飯田エリアのラポルトすずと同じで、まん防中にも関わらず作品が屋内に展示されていた。

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中に入っていく必要がある

いつ建った図書館なのか、きれいなところだ。

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検温と消毒もこのとおり

開館中の図書館なので、ハイテクな検温器が設置されていた。

ラポルトすずもそうだったんだけど、こういうのがすでに設置されている建物だと、室内でも鑑賞可能になっているんじゃないかな。

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目的の作品は多目的室にある

それにしてもモダンな図書館だ。

吹き抜け部分に吊るされた白い丸いオブジェが芸術祭関係ないのにアートだ。

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28番だ

磯辺行久氏による「偏西風」「対馬海流リマン海流」という二つの作品が並んだようなタイトルだ。

こちら、入ってみるとわかるのだけど、アート作品と言うよりは研究のためのワークショップの記録の展示、といったほうが正しい。

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ウィンドウにもワークショップを取り上げた記事や写真が貼られていた

自分はこういうのじっくり隅々まで読んで観てしまうタイプなので、室内に入る前から時間を使ってしまっていた。

美術館とか行っても解説文を全部観てしまう質なので、誰かと一緒に行くと鑑賞速度が全然遅い。気も使ってしまうしアート鑑賞はどうしても一人で行くことが多い。

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偏西風ワークショップとしてバルーンを放流させたようだ

地元の小学生や中学生たちに協力してもらって、レター(返信ハガキ付き)付きのバルーンを飛ばしたみたいだ。

どんなレターが飛ばされたのか、写真で見せてくれている。

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メッセージがどれもかわいい

メッセージは何を書いても良かったみたいで、読んでいてほっこりする。

中には誰かの手に渡り、ちゃんと返信されたものもあったみたいだ。

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こちらが帰ってきたハガキ

どこから戻ってきたかで偏西風の流れのデータを取るわけだ。

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もちろんこれらハガキも全部読んだ自分

だいたい新潟や佐渡ヶ島に飛んでいるんだね。

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資料ファイルにはワークショップ中の写真も入っていた

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他にも映像やパネルなんかでも趣旨や様子を展示

これ、小中学生たち、いい思い出になるだろうね。

子供の頃にこういうことを経験していると、人生観も変わってくるだろうし、大人になったときに次は自分たちで、って気持ちになったりもするんだろうなと推測する。

地元の祭り、能登地方でいうとキリコ祭りの継承と似ている気がするのは自分だけだろうか。

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観ているだけで

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楽しそう

大人の自分でも、こういうのに参加してみたいなと思う。

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対馬海流リマン海流のレポートもあり

禄剛崎灯台の沖合からブイをセットした瓶なんかを放流したそうだ。

左利きの右脳人間だからか、こういうレポートすごく興味ある。

そうしてこういうのを目にするたび、自分はやっぱり学生の時の進路(文系だった)を間違えたんだろうなと省みたりする。

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この図、好き

特に偏西風のまとめのようなこの図、でかくて好み。

大きく立体的ってだけでアートっぽさがあるのもいい。

いまは今回のバルーンの行方だけが立体化しているけど、ワークショップが今後も色んな所で行われてデータもより蓄積されてくると、この図にもいろいろと足されていって少しずつ進化していきそうな予感もあった。

それが一人の研究者だけにとどまらず、研究が子どもたちに継承されて作り上げられていく、なんて未来絵図も想像すると夢が広がってくるし、作品としても面白いだろうなと思えた。

研究も芸術祭も、一回限りでは終わらないということだ。

 

弁当を食べる

作品鑑賞ではないが、この日、昼ぐらいにちょうど旧珠洲駅の道の駅「すずなり」にいたので、そこで弁当「スズ弁」を購入してみた。

同じ直エリアなのでその写真も上げたい。

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ちなみに道の駅の入り口にはこんな顔ハメパネルがある

祭りだ。

能登国際芸術祭も、祭りだ。祭り繋がりだ。

さて、このパネルの脇を抜けて入り口を入ってすぐのところに…

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スズ弁が置かれていた

一つ800円。

ほかにもオニギリだけのものとかも売られていた。

自分は前回2017年のとき、作品鑑賞に時間をかけすぎていて昼ごはんを食べるのも忘れていたということが何度もあったので、今回2020+の目標の一つとして「昼くらいちゃんと食べる」というのを密かに掲げている。

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ということでさっそく実行してみた

弁当の方を購入してみた。

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オープン

ほぼ、絵と一緒だ。

おにぎりは白米のほかに古代米のものもあって、この古代米というものに惹かれて購入した。

古代米を食べたのって、ほぼない。いや、一度もないかも知れない。

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この紫のものが古代米

能登地方では中能登町古代米が結構有名だけど、この珠洲市でも一部で作られているっぽい。

こちらは白米と一緒に炊いてあるのだと思う。ゴツゴツした食感の黒いのが古代米だと思われる。

赤飯みたいな見た目だけど、その味はちょっと違う。

赤飯よりもちもちさは控えめで、どちらかというとあっさりしている。

栄養価が高そうなのが魅力的で、それだけで主食にしたくなる。

想像以上にうまかった。

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こちらは「とりもも肉のいしる味噌焼き」

いしるというのは魚醤のことだけど、それが染みて美味。

いしるをお土産で買いたくなってきた。

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いもだこ

じゃがいもとタコを煮た郷土料理だ。

祭りには欠かせないんだとか。

自分の祖父母の家は七尾市中島町にあったけど、これを食べたとき懐かしい味がした。

ほか、酢の物も酢の物なのに酸っぱさを感じさぜ甘さを感じさせたり、あかもくの団子も子供の頃の記憶を刺激してきたり、美味さと郷愁で満足。

改めてやる気も出た。

やっぱり、ちゃんと昼はとらなきゃならんわね、と再確認した次第だ。

その際はもちろん珠洲を味わうにかぎる。

食事も次の楽しみにしたい。

 

感想

直エリア、作品としては二つしか回れていないけど、道の駅で購入した「スズ弁」のおかげで満足度がかなりあって、記憶にも残るエリアだった。

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ちなみにこちらは「アテ」の葉

抗菌作用がある他、財布に入れておくと「あてにしていないお金が入ってくるとか…」という言い伝えもあるようなので、後で洗って保存してみた。

こういう言い伝えに乗っかるのも、祭りの楽しみだったりする。

コロナ禍のせいで能登方面のキリコ祭りがことごとく中止に追い込まれているけど、こうして祭り気分を少しでも味わえることに感謝だ。

次回は正院、蛸島エリアで鑑賞した作品を取り上げたい。