2021年9月4日(土)より、石川県珠洲市にて「奥能登国際芸術祭2020+」が始まった。
4年前の2017年以来だ。
2017年のときは自分も数週に分けて足を運び、作品をすべて鑑賞しているので、思い出深いイベントである。
あの達成感を味わいたく、また純粋にアートを楽しみたく、今回も少しずつ巡ってきたので、マイペースにまとめたい。
石川県内まん延防止等重点措置のために
「奥能登国際芸術祭2020+」はそもそも2020年に開催される予定であったものの、コロナ禍のせいで今年2021年に延期している。
開催期間は2021年9月4日(土)~10月24日(日)だ。
ただ、今年になってもコロナ禍は収束されておらず、石川県では9月12日まで「まん延防止等重点措置」が適用されているため、芸術祭が開催されたにもかかわらず、作品を限定して公開しているという事態となっている。
「マジかよ…」と、楽しみにしていただけに落胆してしまったのだが、それでも見れる作品がある以上は足を運んでみたのだった。
コロナ禍に屈してこの楽しみをすべて諦める気にはなれなかったわけである。
主催者側も、もちろん新型コロナウイルス感染症対策をしっかり取って公開している。
その対策の一つ、検温スポットにまず立ち寄らなければならないので、その様子から紹介したい。
珠洲市、到着
まずやって来たのは珠洲市飯田町にある同市の多目的ホール「ラポルトすず」の駐車場だ。
前回2017年もセーブポイントのようにまずはここに立ち寄ってその日の予定を整理していたもので、俄に自分の中での奥能登国際芸術祭モードが発動してきた。
やっと始まったなと、ここに来ただけで感慨深いものがあったのだ。
写真右手にラポルトすずの建物があり、目の前に見えるイルカの壁画が描かれた建物は「さいはてのきゃばれー」だ。
コロナ対策のため市内数カ所に検温スポットが設けられていて、作品を鑑賞する前にはまずそれら検温スポットのいずれかで問診を受けなければならない。
「さいはてのきゃばれー」がそのスポットの一つとなっていたので、必然的に今回もまずこの付近にやって来ることになったのである。
近寄ってみるとテントが見える
ここで検温と問診を済ませる必要があり、クリアすればどこへ観に行ったか行動を追えるQRコード付きのリストバンドを手渡されることになる。
QRコードから問診票フォームを読み取ることができる
スマホの時代だ。
鑑賞パスポートも電子版があるみたいだし、いろいろと進化している。
「若いからQRコードで大丈夫ですよね」みたいな感じでここに案内されたけど、自分は決して若くないし、スマホを使いこなしているという自信はまったくない。
マイペース人間なうえに天の邪鬼なところがあるからか時代に急いで乗っかる性分でもなかったりする。
一応、スマホでやりましたが
初めて手にしてから一度も買い替えていないマイスマホ。
最近の新しいやつはカメラが3つくらい付いているし(自分のは一つ)、スマホを持っていても時代に取り残されているなと思ったりもするけど、すぐに買い替えたいと思わないのだからやはりマイペースである。
おかげで物持ちだけは良い。
これもSDGsと胸を張りたい。
自分のすべての貧乏性をSDGsという言葉で済ませられそうなので、SDGs、いい言葉だ。
スマホがない方は紙の問診票もある
自分はQRコードを読み取るのに慣れておらず、失敗も多いので、何だったら手書きのこっちにしようかなとも一瞬思ったけど、ペーパーレスの時代でもあるので、頑張ってQRコードを読み込んでいた。
チェックし終えるとここでリストバンドを配布してもらえる
配布されたリストバンドは当日のみ使え、特に室内にあるアート作品の受付で提示する必要がある。
こちらがリストバンド
紙製でテープで固定するけど、テープの質がいいのか一度剥がしてもまたくっつけられた。
目の前に建物があるのでさっそく入ってみた
さいはてのきゃばれーが今回、芸術祭のインフォメーションセンターならびに公式グッズショップになっていた。
入るには受付にてさっそくリストバンドを提示しなければならないので、こんな流れかと、リストバンドの使い方のいい経験になる。
ここに入るのもなつかしい
それこそ前回の2017年以来、4年ぶりだ。
お酒や地物も売られていた。
このように公式グッズも売られている
Tシャツとか手ぬぐいとか、あとトートバッグみたいなものも売られていた。
マスキングテープとかも売られている。
プロジェクターで壁に映像も流されていた
ステージがある場所におそらく珠洲市内から集めた古民具が置かれ、古いテレビからは映像も流れていた。
これだけで一つのアート作品のようにも見えるのだけど、パスポートのスタンプが押せる作品に数えられているわけではない。
ナンバリングされている作品は出口の先にある
この「さいはてのきゃばれー」内はインフォメーションセンターであり、グッズショップであって、中に作品は展示されていないが、その外にはNo.33の作品が展示されている。
しかも、まん延防止等重点措置が適用されていても見れる作品だ。
その作品を見るためにも検温とリストバンド装着は必要なのである。
では早速見ていこう。
飯田エリアでの鑑賞可能な公開作品の撮影、スタートである。
33番 浅葉克己「石の卓球台第3号」
さいはてのきゃばれー内に貼られた「出口」に従って進んでいくとこんなところにでる。
キャバレーの化粧室
2017年のときもここを通ったなと懐かしくなる。
前回は「準備中」という作品でいまも控室として使われているような状態であったので、それに比べるとさっぱりしているなとの印象がある。まあ、感染対策とか考えると何もない方が雑巾がけとかしやすいだろうか。
ここを通って出口の先に33番の作品が展示されている。
33番だ
この案内板も懐かしい。
前回2017年は黄色が基本色であったのに対し、今年「2020+」ではグリーンが基本色となっている。
紙のパスポート用にスタンプもぶら下げられていて、電子パスポート用にQRコードも貼り付けてあった。
(写真のコードにかざしたら読み取ったりしないよね?)
ちなみに自分は紙のパスポート
これを前売り割引を狙って事前の8月に近くの「うつのみや」で購入している。
価格は一般3000円(前売りで2500円)。学生や子供はもっと安くなる。
開催前に買っていたから行かないわけにはいかなかった、という事情もある。
まっさらな作品スタンプラリー
ああ、奥能登国際芸術祭に戻ってきた、との実感がこれを開いたときにも再び湧いた。
これを埋めていくのもまた楽しみの一つなのだ。
で、肝心の作品はと言うと…
これだ
浅葉克己さん作の「石の卓球台第3号」だ。
文字通り、石造りの卓球台だ。
中央のネット以外、全て石だ。
「石の卓球」って、自分の世代だとテクノバンド「電気グルーヴ」の石野卓球さんをどうしても思い浮かべてしまう。
が、「石」だ。石による卓球台であって、石野さんの要素はない。
作者の浅葉克己さんが卓球を趣味にしているそうなんだけど、その腕前も取り組みも趣味の領域を超えているんだとか。
ネットは普通に本物
実はこちらの作品、実際に卓球台として使うこともできる。
きゃばれー内のショップで15分150円で卓球セットを貸し出してくれるそうだ。
卓球の経験、ほとんどなし
自分は卓球に自信がないのであらぬ方向に打ち込んで、ピンポン玉を海に落っことしてしまう自信だけはあったので借りてはいない。
どんだけ跳ねてくれるのか、無駄にスマッシュだけはしたくなる卓球台ですけどね。
やっている人はいた
自分のあとに実際に借りてピンポンを楽しんでいた人たちもいた。
見ていると、自分もやってみたくなった。
こういう鑑賞者も参加させるような作品、すごく好き。
32番 力五山「漂流記」
次に向かったのは側にあるラポルトすず
今回もこの建物内に作品が展示されている。
まん延防止等重点措置が適用されている間の公開作品(「一部公開」は除く)は外にあるものだけかと思ったら、室内の作品もあった。
もちろん、入ってすぐ検温はされるし、手指消毒もお願いされる。
このように
マスクの着用も当然のように呼びかけられている。
32番
力五山という3人組の「漂流記」という作品だ。
作品は入って奥の広いところに展示されている。
カラフルな日本列島が逆さ吊り
北海道、本島、四国、九州のほか小さな島もあちこちに吊るされていた。
正確には、やじろべえ
能登半島の先端に位置する珠洲を支点にした「やじろべえ」だったりする。
日本には421の有人島があるらしく、それらが天井から吊るされてまわりを固めている。
珠洲を中心に潮流を視覚化した作品なんだそうで、豊穣や生命の源である大海原に置かれた島々の数だけ人の営みがあり、その島々を表現することでこの国の姿を見せているとのことだ
見ていたらゆれたり、まわったりしていて、関係者が長い棒みたいなものを使って絡まったりしないよう位置を直していたりしていたので、静かに生きているようでもあった。
手間がかかったりするところは、人の営みそのものだろう。
能登半島って引鉄みたいなんだよね
なんて、そんなことも考えながら鑑賞。
珠洲市の狼煙の方、禄剛崎灯台に日本の中心と呼ばれている(自称している)ところがあるけど、能登半島が支点になっているこの作品を見ていると、少なくとも本島の中心であることは間違っていないんじゃないかと思えてくる。
ちなみに吊るされている有人島はこんなにある
421もあるんだから、そりゃ多い。
こうなってくると、どこに能登島と舳倉島が吊るされているのか気になって探し始めてしまった。
探し始めると…結構大変
数が数だけに、ご覧のように簡単に見つかるものではない。
色を頼りに探してみても、明らかに実際に吊るされている島の色と、絵で記されていた島の色って微妙に違っていたりするので迷ってしまう。
ときに上から探してみたりも
逆に遠かったりして見えづらかったりするから途方に暮れる。
そもそも迷子常習犯な自分なので、多くの中から一つを探すという「ウォーリーをさがせ」みたいな作業は向いていない。
最終的には、受付の人に聞いてしまった。
どうやら能登島はこの真中のやつっぽい
色も緑と一部黄色だし、絵と違うのでわかるかって話だ。
でも、人の手を借りたとはいえ見つけられたのは素直に嬉しい。
受付の人に舳倉島も探してもらったが、その方もどれが舳倉島なのか結局わからず見つけられなかった。
これだろうか? 真ん中の緑色のやつ
なんだかんだと自分でも長々と探してそれっぽいものを見つけたけど、はっきり言って自信はない。
間違っていそうな気のほうが強い。
ずっと見上げながら探していて後には首が痛くなってしまったので、気になった島を探す際は注意していただきたい。
45番 金氏徹平「tower(SUZU)」
もう一つ、すぐ近く、同じく飯田エリア内で「まん延防止等重点措置」が適用されていても公開されている作品がある。
といっても市内2箇所に設置されている作品なのでその全てではないということを予め断っておく。
ラポルトすずの駐車場より
場所はラポルトすずの隣にあるショッピングプラザ「シーサイド」の屋上だ。
駐車場からでもすでにその作品が見えてしまっている。
屋上にはここから上がれる
案内板もある。
45番だ
金氏徹平さんによる「tower(SUZU)」という作品だ。
個人的にはこの看板が気になる
おそらく夏だけだと思うけど屋上ではビアガーデンが行われているようで、「本日は営業」となっている。
自分はもうお酒を飲まなくなったのでビアガーデンそのものにさほど興味はないのだけど、「本日は営業」との通過許可証のような文句が鑑賞を誘っているようで興味深い。
このショッピングプラザも奥能登国際芸術祭にちゃんと手を貸しているんだなという心意気が伝わってくる。
ちなみに上がってみると屋外機がいっぱい
後ろは海だし、これらだけでもアートっぽく感じたのは自分だけだろうか?
そんな屋外機の正面に…
作品がある
幕に描かれた大きな絵だ。
近寄ってドンと
穴からネジだとか枝だとか、サイリウムみたいな光の棒が飛び出している絵だ。
若山方面の別の場所にも描かれているようなので、これ一つでは作品の訴えることのすべてを想像することは難しい。
自分としてもこれだけでは正直どう捉えればいいのかわからなかった。
そんなものでちょっと寄り道
屋上から2階へと入っていけるところがあった。
2階にキッズコーナーもあって、むかしのゲームの筐体とかも置いてあったのでついつい立ち寄ってしまった。
こういうところ、子供の頃によく来たなぁ。
2階の様子
カプコンの「スト2」が置いてあった
懐かしい。
こんなむかしのゲーム置いてあるとこ、まだあるんだね。
アートに惹かれて懐ゲーに久しぶりに巡り合ってしまった。
なお、屋上からの海の景色も悪くない
アートに惹かれて、物思いにふけれる場所にやってこれたような心地でもある。
あの穴に吸い込まれるかのような、誘いの絵だったのかもしれない。
感想
以上、「奥能登国際芸術祭2020+」鑑賞、一日目でまわった飯田エリアの作品たちである。
3箇所まわっただけでも、やはり楽しい。
本来なら同じ飯田エリア内だけでもまだ数点の作品が存在しているのだけど、まん延防止等重点措置のせいでその全てが公開されていない(作品によっては一部だけ公開しているものもある)。
今回一日目は9月5日(日)に行っているが、完全に公開されている作品だけを狙って見て回っている。
9月12日までで「まん延防止等重点措置」が解除されると聞かされていたから、現在完全に見れないものはそれ以降に見て回ればよいだろうと考えてのことだった。
ただ、残念なことに、先日(一日目を終えた後日)その「まん延防止等重点措置」が石川県では9月30日まで延長されることが決まった。
全て見れない状態が、1ヶ月くらい続くのである。
う~ん、よわった。
あらためて、会期は2021年9月4日(土)~10月24日(日)
期限までにすべてを回れるのか、自信もなくなったし、ズルズルと「まん防」がまた延長してすべて公開されないまま終わってしまうのではないかという不安もある。
まあ、それでも、実際やって来て鑑賞してみて楽しかったので、めげずにのんびりマイペースに再び足を運びたいものである。
一部しか見れないなら、その一部をしっかり楽しむのも手だしね。
ということで、次回は一日目の続き、直(ただ)エリアで目にした鑑賞可能な作品を記したい。