初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

廃駅の旅22 「九里川尻駅」

能登線で一番風が気持ちいいところかもしれない… 

廃駅の旅、22回めだ。

今回は能登町にある「久里川尻駅」へ行ってきた。

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九里川尻にある

のと鉄道の旧能登線を中心に使われなくなった駅を訪れる個人的な旅も22回めになる。

今回行った「九里川尻駅」(くりかわしりえき)は前回の秘境駅白丸駅」の次の駅にあたる。

国鉄時代は「能登川尻駅」と呼ばれていたところだ。

やはり同じ能登町にあり久里川尻川の河口付近にある。

地図でいうとこんなところ

駅名も川も地域の名前も、なんなら近くにあるバス停も「九里川尻」なので、文章にするとしつこくて混乱するし、SEO的にも問題あるけど、目的の廃駅はそれなりにわかりやすいところにある。

地図にあるように県道35号線(能都内浦線)からも行きやすいのだ。

県道35号線を北上していってバス停の前も通り過ぎて、次に見える交差点(右に曲がれば「キリコ橋」に行ける)を左に曲がれば(あ、分かりづらい表現…)、もうすぐである。

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左に曲がった先からの景色

青い案内看板があるところがその交差点で、さらにその奥にひょっこりキリコも顔を出している。その辺りがキリコ橋になる。

位置関係がわかるだろうか…?

迷子常習犯の自分は、自分で説明していながら分かりづらいと思った… 申し訳ない。

というのも、自分自身はこの日、県道35号線を使ってこの駅へと向かっていない。

写真の道を手前方面(西側)からキリコ橋方面へと向かってやってきたのだ。

ともあれ、写真にも写っているように跨道橋の跡がある。

この跨道橋を見上げ、その線に沿うように左に視線を向けていくと、もう廃駅が見える。

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このように

駅の待合室が木々に囲まれながら少し高いところにあるのがわかるかと思う。

その下には水田が広がっている。

大きな水田なので、忘れられた湖城のような佇まいがある。

そこに廃駅があるとわかっていないと見逃してしまいそうでもあった。

 

風を感じながら廃駅チェック

水田の向こうに待合室があるのがわかるが、どうやってそこまで行くんだという疑問が次には湧いた。

跨道橋を見上げたとき随分と高かったので、土手状になったあの斜面を這い上がっていかなくてはならないのかと、ワンパク少年に回帰しそうなイメージが頭をよぎったのだ。

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ご安心を、坂、あります

跨道橋の足元には「うちうら線」のバス停がある。

その脇にこうして駅の方へと上っていける坂があった。

緩やかではないけど、斜面を這い上がっていくよりかはまだラクな坂だ。

ちなみに右手には民家が並んでいる。

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その庭の一つにこのようなガーデンアクセサリーが

飛行機型の風見鶏だ。

写真ではシャッタースピードを上げすぎて止まっているようにしか見えないけど、プロペラがクルクルと回って、方向もせわしなく変わっていたので、風が吹いているのが視覚的にわかった。

もちろん肌でも風を感じられて、初夏の晴れの天気と併せて、坂を登る苦労も忘れるくらい気持ちが良かった。

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柵も発見

草や蔦に絡まれながら柵があった。

能登線の廃駅を巡っているとよく目にする昔ながらの柵だ。

これを見ると、もうそこが廃駅であると安心するようになった自分がいる。

廃駅の旅も数をだいぶこなしたなと、しみじみと思う。

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ホームが残っている

草も木も茂り放題ながら、プラットホームがしっかり残っていた。

線路は撤去されたようで、その跡にも草が絨毯のようにびっしり生えていた。

眼下に水田があるのでロケーション的に開けてみえるけど、これ、山の中だったら前回の白丸駅同様に緑一色の秘境的な廃駅だったのではないかと思えてくる。

また、前方が広く開けているからなのか、風の通りがものすごくいい。

坂を登っているときよりも、このホームにたどり着いてからのほうが風を感じられた。

面白いのはその風の香りが、山の匂いもすれば海の匂い(磯の香り)もするところだ。

地理的に海もすぐそこなら…

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低山ながら山にも囲まれている

浜風が山間に流れ込んできているようなイメージが、天気や気象の知識のない自分にも浮かんだ。

どうでもいいことだけど、ついでにNHKの朝ドラ『おかえりモネ』の映像と主題歌も頭の中に浮かんだ。

その香り、なかなか不思議な体験だった。

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風を感じながら待合室をチェック

待合室が残されているのでしっかり撮影。

こうして水田を入れずに撮ると、やっぱりどこかの山中にある秘境駅っぽい雰囲気がある。

現役時代は無人駅ながら付近の人たちによって整備されていたそうなのだけど、この緑の自由な育ちっぷりを見ていると今ではだいぶ放置されているようにうかがえる。

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実際、近づいてみると結構ボロボロ

窓が補強されていれば、入り口のガラスも割れてなくなっているし、屋根のトタンも剥がれてしまって空が見えていた。

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ただ、入り口は開いていた

ガラスもなくなっているからか、鍵は掛かっておらず、簡単に中に入ることができた。

入れるということは、中のベンチとかも今も使えるということでもある。

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もちろん自分も入ってみた

冬用だろうか、ママさんダンプが立てて置かれていたが、蔦の侵食っぷりを見ると、やはり長い間放置されているようである。

それでもベンチは形をしっかりと残していて、まだまだ座れそうであった。

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反対側には黄色の文字で落書きも

現役時代に書かれたものか、それとも廃駅となってから書かれたものかは不明だ。

そして、なんと書かれてあるのか、それも自分には不明であった。

アルファベットだと思うけど、読めない…

呪術的なものだと危ういので深入りはしないでおこう。

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反対側からも撮影

よく見ると木の枝が庇のトタンを突き破っている。

ドラクエ8の呪われたトロデーン城のイメージって自分の中ではこんな感じなので、ここでも呪術的な何かをさりげなく感じてしまった。

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空と風は爽やかでしたけどね

天気も良かったし、雲も面白い形をしていたし、飛行機雲も横切っていたし、風も気持ちよかったし、結局最後に思い浮かべたのは『風の谷のナウシカ』なんかで見られる「自然による浄化」だったりする。

使われなくなった駅が自然の一部に取り込まれていくような姿を見ると、人間って小さいもんだなと、ちょっと謙虚な気持ちになってしまった。

 

まとめ

以上、能登町にある旧九里川尻駅の今の姿である。

海も近くにあって山にも囲まれた場所にあるので山と磯の香りがまじる独特の風が吹く廃駅であった。

残されていたホームや待合室は草木に侵食されて、だいぶガタが来ていたように見えるが、自然に取り込まれていると見れば、その姿も自然の循環の一つのようにも思えてくる。

SDGsの視点から廃駅の再利用なるものを考えていたりもしたが、最終的には自然が浄化してしまうのではないかと、人間の傲りを思い知るようなところでもあった。

何が正解かはわかりませんけどね…

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改めて空と水田と廃駅とで

撮影していて気持ちのいいところであることはわかった。

田植え前の初夏のシーズンだったからかもしれないが、だとすればこのシーズンに足を運べた自分は今回も運が良かったのだろう。

いい風だった。

もっと風を感じられる写真を撮れるようになりたいものである。