迷子常習犯でもなんとか見つけられた…
廃駅の旅、21回めだ。
迷子になりました
のと鉄道の廃線を中心に廃駅跡をたどる個人的な旅「廃駅の旅」も今回で21回めだ。
前回の九十九湾小木駅の次の駅にあたる「白丸駅」へと向かうことにした。
のと鉄道旧能登線にあった駅で、引き続き能登町にある。能登町白丸というところだ。
のと鉄道になる前の国鉄時代は「能登白丸駅」という名前だったそうだ。
その白丸駅は、穴水町にある旧鹿波駅とともに旧能登線の秘境駅と呼ばれているところで、地図で見ても分かりづらいところにあった。
迷子常習犯の自分にはかなり難易度が高い。
ひとまず地図を見てみよう
見事に目印になるものが周りにない。
鹿波駅と同様にバス停も周りにない。
これまでは国道や県道沿いにある廃駅が多く、大きな道を走っていればそのうち見えてくる、または辿り着けていたものである。
県道35号線を走るのはそれまでの流れと同じなのであるが、今回は途中でそれて山の方へと入っていく必要がある。
お店とかがあるわけではないので、どこで曲がって、どの道に入って、どこまで行けばいいのか、その一切が手探りとなるのだ。
ひとまず行き方を記したい(わかりづらさを表現する意味でもしばらく文章のみで)。
前回の続きでイカの駅つくモールから県道35号線をさらに東、珠洲方面へと走っていると、「キョーワ株式会社」の内浦工場が見えてくる。
T字路になった角にあるので、その内浦工場のあるところでまずは左折する。
そのT字路にはバス停「慰労者プラザ前」というのもあるので、それを目印にするのも良いかも知れない。
これでめでたく県道35号線からはそれることになる。
ここからが迷子常習犯の自分にはちょっとした冒険になった。
北上してどこかのポイントで右折する必要がある。
その「どこか」を見つけるまでが大変であった。
変なところで右折してしまっては道に迷い、この近辺を車でぐるぐるぐるぐるとしていたのであった。
山の方なので電波も届きづらいし、スマホでナビをしてもらうなんてこともできなかったのである。もちろん車のナビにも載っていない。
焦る、焦る。
焦っていながら、カーラジオから流れるラジオ番組(土曜日だったのでMROの『モリラジ!』だった)のトークを聞きながらニヤニヤとしていたのだから、自分も大概である。
そんな注意欠損なところがあるから迷子になるのかもしれない…
とはいえ、なんども間違えて、なんども行ったり来たりしても、諦めなければ到達できるもので、ついには「どこか」こと「正しい右折ポイント」を見つけることができた。
ここが正しい右折ポイント
目印としては左手に丸太が置かれている小屋がある。
右手側の車が止まっている辺りで右に曲がれるのがわかるだろうか?
拡大
このように入っていける道がある。
それでもその先が狭い
車が一台しか通れないような細い道だ。
一応、一方通行ではないし、こちら側からも反対側からも車が行き来しているのを目にしたので車2台通れなくもないのだろう。
それにしても農道に見える。
いや、林道か?
徒歩で山を越すときの峠道にも見えてくる…
こんな道の先に駅があったなんて普通は思わないだろう。
利便性がない。ズバリ、不便だったはずだ。
そりゃ迷うというものだ。
なんにせよ、この道を真っすぐ進んでいくと…
こんな橋が現れる
これまた車が2台並んで通れないような細い橋だ。
写真右側の欄干から谷の方を見下ろすと、そこに目的の廃駅があるのだ。
この日は草が茂りすぎてて…
駅跡らしきものは見えませんでしたけどね。
橋の上からは見えなかったので、橋の下の方へと下りて行かなくてはならない。
橋の前で車を停めてみたが、止まっている所がこれまたさらに細い道になっていて、そこから下りていけた。
ここだ
どんどん細くなって木陰なんかもできているから獣が出てくるんじゃないかと思えてくる道だ。
少々おっかなかったけど、旧白丸駅を見たくて徒歩で下ってみた。
幸いなことに目的の駅は少し歩いた先にあった。
これでまだまだ歩かなくてはいけないようなら、自分は徒歩でも迷子になっていただろう。
秘境駅と呼ばれた白丸駅
小屋のようなものが左手に見えてくる
草木のせいで判別しづらいけど、下りてすぐ待合室のようなものが見えた。
よく見ると道に沿うように柵も見られる。
昔の駅でよく見られるやつだ。
入り口らしき隙間も
そこにプラットホームがあったと想起できる隙間だ。
草が茂りすぎていて、ここだけ見ると森への入り口みたいに見える。
足を踏み入れると…
ちゃんとホームになっていた
草木が生い茂る中、待合室もちゃんと残っている。
廃駅があったのだ。
中には入れなかったですが…
鍵がかかっていて開かない。
しっかり戸締まりされている。
だからなのか、待合室そのものの保存状態はなかなか良いほうだった。
それでも線路跡まで草木がボウボウ
駅らしい形が保存されているが、この町中から外れた辺鄙な場所とロケーション、そして使われなくなって木陰に隠れている様子を見るとさらに秘境駅度が増しているのではないかと思われる。
少なくとも線路が通っていたところはこんなに森のようになっていなかったはずだし、営業していた頃と比べると、駅らしい形は残っていても「駅らしい姿」ではないであろう。
ボランティアの森らしい
遠くにこんな看板が見えた。
なんでも平成13年5月(能登線が廃止になる前)に白丸地区一帯の山林が山火事になったそうだ。
焼失面積61ha(1ヘクタール=10000平方メートル)もあったというんだから大変な被害だ。
そこで緑豊かな森林が一刻も早く復活するように「県民森づくり大会」を通じて県内各地のボランティアの皆さんの力を借りて復旧を図ったそうなのだ。
アテ、ケヤキ、サクラなんかを植えていったわけだね。
ということは、この緑の量多めの秘境駅度増し増しな姿は意図してそうしてあるということでもある。
この緑こそがこの廃駅の正解なのだと、そう思えてきた。
まとめ
自分が訪れたのは6月初頭の新緑の頃であったので、緑に囲まれた姿が正解だと言うことならば、いい時期にやって来れたのではなかろうか。
自分、なかなか運が良いかもしれない。
最初は迷子になるし、到着したら到着したで獣が出そうだの、茂りすぎて秘境駅が過ぎるだのと思ったけれど、帰り際には「いいところだったな」と名残惜しくなったくらいここが気に入った自分がいた。
待合室やホームの保存状態も悪くないし、全体的にキレイに見えたのだった。
マイナスイオンを感じられそうな木陰も好みだ。
ホームから最初の橋を見上げる
線路の上に架かった橋なので跨線橋というものだったようだ。
ここから見上げてもやっぱり緑。
今回の写真がほとんど「緑」色ばかりであったのが個人的な反省点であるが、それくらい緑の駅なのだと念を押してまとめとしたい。
駅名は「白」色なんですけどね。
あしからず。