石川県は小松市や能美市、加賀市といった南部の方で江戸時代から九谷焼が生産されてきたので焼き物も盛んだ。
それもあってか、県内には陶芸体験ができるところがいくつもある。
以前より一度その陶芸体験をやってみたいと思っていた自分は、2ヶ月ほど前に職場の方々と金沢市内の工房に足を運んでロクロの体験をしてきた。
そこで成形したものが先日焼き上がったので、その出来上がりの感想を記したいと思う。
長町武家屋敷近くにある工房&ギャラリーにて体験
自分にとってのロクロ初体験となった場所は武家屋敷で有名な金沢市の長町にある工房&ギャラリーだった。
武家屋敷の様子(※この後姿は自分ではありません)
工房へ向かう前に久しぶりに武家屋敷跡のある界隈を散策してみたので、観光パンフレットに使われそうな写真を撮ってみた。
初夏の薫風を仰ぎながら武家の風情漂う路地を散策すれば…云々といった紹介文を加えればそれっぽく見えるかもしれない。
それっぽい軒下の写真も
こんな写真を撮りながら気分を高めていのたであった。
この武家屋敷跡の路地を抜けて金沢聖霊病院の近くに目的の工房がある。
atelier & gallery 「creava」だ
creavaはこう書いて「クリーヴァ」と読む。
建物は、もともとは蔵だったと言っていた。
こうしてみると確かに蔵っぽい
この扉を抜けるとすぐカフェになっていた。工房だけではなく、カフェも運営しているのだ。オススメは水出しコーヒーだそうだ。
そのカフェの奥に陶芸体験ができる工房があった。
ロクロが並んでいて、すでに練ってある粘土を使って先生が芯を出し、さらに中央を凹ませてある程度湯呑みの形にしてくれるので、あとは自分の手で形を変えていけばよい。
ロクロを回して器の形を作る体験なので、初心者にはまずできない難しいことは先生がやってくれるのだ。
なお、ロクロを回している様子の写真は一枚もない。
手が泥だらけでカメラで撮っている余裕などなかったのだ。
最初の方に武家屋敷の路地の写真を並べたのは、そんな画の不足を補うためである。許して欲しい。
ロクロの上で回転する泥(粘土)はひんやりとして、保育園児の頃の粘土を遊びを思い出した。且つぬるっと柔らかい感触は、その子供の頃に触っていた硬い粘土とはまた異なり、少しでも粗く扱おうものならすぐに崩れてしまう生娘のようなデリケートさがあった。デリケートで成形も難しい(自分は一度グシャッと崩れてしまった)けれど、回転するその濡れた土に指を添えているだけでストレスが抜けていく感じがしたから不思議なものだ。
自分、回る泥(粘土)に触れながら、しばらく何にも考えずにいた瞬間が2、3回あった。
そんなもので、先生に形の広げ方や縦への伸ばし方を教えてもらっていたのにちっとも上手くいかなかった。
ちなみに先生は自分たちと同世代かそれより下の若い女性の方だった。六年くらい陶芸をやっていると言っていた。
その先生だけでなく、カフェにもあと二人creavaの関係者がいたが、皆さん同じ歳ぐらいの若い女性の方々だった。
女性の方々で運営しているだけあって、レトロな雰囲気のカフェ内はオシャレです。
そしてその店内も撮っていません。申し訳ない。
最終的にこんな感じで成形し終えた
斜めっている。
判瞑想状態で作った結果、斜めになったのだから、自分の本質はどこか斜めっているのだろう。
自分はオルタナ系の人間だろうなとは思っていたが、ますますそんな気がしてきた。
なんにもいじらなかった方がきっとまともなカップの形になっていたはずだ。
他の面々の出来栄え
お抹茶碗のように大きくしたりクビレをつけたり、見事だ。
明らかに自分より上手い。
先生が言うには何度も触れば上手くなっていくもので、崩れたら崩れただけそれもまた上達に繋がるのだとか。
自分たちで成形したこれらは、このあと先生たちが素焼きして釉薬をかけて本焼きしてくれる。
釉薬によって色や風合いが変わってくるので、このあとどの釉薬をかけるか選ぶことができる。
釉薬の出来栄えのサンプル
蕎麦、瑠璃など10種類の中から選べる。こちらの工房では単色が基本だ。
焼いている時に隣のものの色移りすることがあるので必ずしもこれと同じ色になるわけではないらしい。どういう色合いになるか、やってみないとわからないというのが面白い。
自分は白色の「チタン」を選ぶことにした。
二ヶ月後に完成
ロクロ体験にて成形したものを先生に預け、素焼きや本焼きをしてもらって器として完成するまで2ヶ月かかる。
郵送(別途料金がかかる)もしてもらえるし、取りに行っても良い。
自分は2ヶ月後に取りに行った。
大雨の日で、しかもcreavaでは二階にもある工房への搬入作業をしている最中であった。
受け取った紙袋の中には自分の作品とともに長くキレイに使うための説明書きも入っていた。
完成品がこちら
白くなってもやっぱり斜めっている。
焼き上げると14%小さくなるそうで少し小ぶりに感じた。
なお、オプション(別途料金)で取っ手も付けてもらえる。コーヒーカップにしたかったので、自分は付けてもらった。
上から見ると楕円だった
土を捏ねて成形したときには気づかなかった。丸ではないのだ。
市販されているカップってどれもきれいなマルだから、こんな楕円のカップを手にするのは初めてであった。
自分で作ったんですけどね、覚えがないのだからやはり半瞑想状態だったのだろう。
マークを彫ってもらえる
成形をしたときに自分のものだとわかるオリジナルのマークを設定して彫ってもらうことができるので、自分は迷いなく「俺」にした。
ちゃんと彫られていて嬉しい。
とぎ汁へ
同梱していた説明書きによると、長くキレイに使うためには使用前にお米のとぎ汁で30分間煮沸消毒すると良いらしい。
なんでも、陶器には土と土との間に微小な空間があり、水分や汚れを吸収しやすいので、煮沸によって器を引き締めて、とぎ汁でその空間を埋めるのだとか。
ということで米を研いだ
一回研いだだけで十分すぎる研ぎ汁を確保できた。
それを鍋に移して煮沸だ。
陶器も投入だ
30分はなかなか長い
しかも鍋の大きさから器が全部浸かりきらなかったので、煮沸中、何度も上下左右を入れ替えてやる必要があった。
このポジションだと呑気に温泉に浸かっているように見える
このように30分間見守ってやった。
少し冷めたところで軽く水洗い
煮沸する前、陶器の表面がザラザラとしていたのだが、煮沸後はとぎ汁のおかげかツルツルとしていた。
本当を言えば、とぎ汁で煮沸なんてやる必要があるのかと最初は疑っていた。こんなに肌触りが変わるのだと思うと、やって正解であった。
使用感
コーヒーを入れた
チタンの白にコーヒーのブラックが映える。
コーヒーを入れても楕円だけど
楕円だし斜めっているしで、実際飲もうと手に持って口に淵を運んでみると、歪みのない市販のものと比べて明らかに違和感があるのだが、自分が作ったという思い入れがあるからか、それとも自分が斜めな性格をしているからか、その違和感もすぐに手に馴染んでくるのであった。
気のせいかコーヒーもいつも以上に美味く感じるし、必要以上にこのカップで飲みたくなった。
陶芸体験をしに行って正解だった。
というか、またやりたい。
今度は皿とか作ってみたい。