きっかけはJAグリーンはくいで買ったソーセージ
以前、羽咋市を通過中に「JAグリーンはくい」という農協が運営する直売所に立ち寄った。野菜など特産品が売られている場所だ。
そこでイノシシ肉のソーセージという珍しいものを見つけたので一つ購入し、後日軽く焼いて食べてみると、これがまた美味しかった。
こちらがそのイノシシ肉のソーセージ
4本入りで648円だ。
普通のブタなどのソーセージと比べると脂っけが少なく、ややタンパクながら、代わりにほのかに野の香りがした。
クセがあると言えばクセがあるが、きつすぎるわけでもなく、むしろそのほのかなクセが、味覚として新鮮だった。
自分は癖やニオイの強いチーズが好きなので、普通のソーセージよりもイノシシ肉のほうが好みかもしれない。
何にせよ、これを機に自分はイノシシ肉の興味を持ったわけである。
調べてみると現在、羽咋市はイノシシ肉の製品に力を入れていることがわかった。
ウインナーのパッケージにある「のとしし大作戦」がその取り組みだ。
明治から大正時代に一度絶滅したとまで言われたイノシシが平成になって羽咋市あたりで急速に増えているらしく、農地や農作物を守るために捕獲が始まり、その肉を無駄にしないよう食品として提供しているようなのだ。
もちろん数行程を重ねてキレイに殺菌されている。
その羽咋市の「のとしし大作戦」のHPを見てみると、イノシシ肉を食べさせてくれるお店が他にもいくつか紹介されていた。
イノシシ肉はソーセージ以外でどんな調理をすると旨いのか気になった自分は先日その紹介されているお店の一つに足を運んでみたのだった。
定食屋で庶民的な猪料理を
足を運んだのはお食事処&喫茶の「ハマヤ」さん
地元の定食屋さんだ。
店の前には「のとしし大作戦」の幟(のぼり)も立っていた。
こちらを選んだのは自分からすると一番行きやすそうだったからだ。
というのも羽咋市のHPを見ていると、紹介されているお店の猪料理が会席や鍋など値段の高いものが多く、庶民の自分としてはお昼に立ち寄って気楽に食べれるものではなかったのだ。
そんな中で、こちらのハマヤさんでは手頃な値段で定食としてイノシシ料理を提供してくれると書かれてあった。
自分が行くならここだろうということで足を運んだわけだ。
国道159号沿いにある。「飯山」と書かれた信号機の近くだ。
道路を挟んでお店の前には羽咋市立邑知小学校がある。
それらを目印にするとわかりやすいと思う。
お店も一軒家のような建物の一階にある
もう一度書くが、地元の定食屋だ。
自分は小洒落た都会的なファミレスよりもこういう個人でやっているお店のほうが落ち着く。
営業時間は、看板には昼12時~夜11時と書かれているが途中で中休みがある。
正確には12時から14時、17時から23時だ。
火曜日が定休日らしい。
あらかじめ決めていたマルカツ丼を食べる
お店の中に入ってみると、昔の喫茶店のようでもあり、学生時代に通った地元の定食屋のようでもあり、いずれにしても自分には性のあう雰囲気であった。
調理場前のカウンター、ほかには4人がけのテーブルが三つ、またお座敷もあった。ちょっとした宴会もできるそうだ。
こちらは定食屋なので、イノシシ料理ばかりを扱っているわけではなく、鳥の唐揚げやハンバーグ、ヒレカツ、ブタのとんかつ、七尾港直送のお刺身といったメニューもある。定食だけではなく、単品もあった。
それらも食べたくなったが、本日はイノシシ料理が目当てだ。
しかも、羽咋市のHPで調べていたときから、このお店のイノシシのカツ丼を食べてみたいと心に決めていたので、すぐにそのカツ丼こと「マルカツ丼」を注文した。
運ばれてきた
運んできてくれた女性の方(おそらく夫婦で経営していて、その奥さんだと思われる)に料理の写真を撮る許可を頂いて撮影した。
こちらがマルカツ丼だ
卵でとじられたカツ丼だ。
この見た目だけでは豚のカツ丼と変わらない。
さっそく食べてみた。
すると味は、やはり豚のそれとは違っていた。
豚と比べると赤めのイノシシ肉
豚と比べてタンパク質が多く脂身が少ないイノシシ肉はギトギトしたものがなくてしつこくない。
強すぎない野の風味も、衣の油分、また卵の甘みとケンカすることなく、むしろ調和していた。バランスという点ではちょうど良かった。
ご飯とももちろん合う。
結論「美味い」のだ。
くどくないから、気がついたらバクバクと食べていた。
マルカツ丼の「マル」とは?
ところで何故「マルカツ丼」なのか。
「マル」とは何なんか、気になるところだ。
写真の許可をくれたときにお店の方が持ってきくれたボタン用おしながき
お手製のお品書きにも「マル坊」というイノシシの絵が描かれていた。
ボタンは、イノシシ肉がその赤身からボタン(牡丹)とも呼ばれているのですぐわかる。
でも、その子イノシシのような絵でマル坊ではウリ坊の間違いではないかと思ってしまう。(イノシシの子供は「ウリ坊」とも呼ばれる)
そのあたりをお店の方に訊ねてみると、マル坊やマルカツの「マル」はフランス語の「マルカッサン」から取ったと教えてもらえた。
何でもフランス語でウリ坊(イノシシの子供)を「マルカッサン」と言うようなのだ。
納得した。
それにしても能登産イノシシのメニューだけでこんなにあるとは驚きだ。
イノシシの生姜焼きもあれば、竜田揚げ、オムライスや餃子まである。
予約すればボタン鍋(大鍋)まで作ってくれるそうな。
イノシシ肉、いろんな料理に使えるようで、このメニュー表は自分にとって有難かった。
お店の雰囲気も自分好みだし、羽咋に寄ったときには、それらを食べにまたこのお店に来たい。
近くにイノシシ肉のコロッケも売っているのでついでに寄った
この定食屋ハマヤさんから5kmほど離れた同じく羽咋市の神子原(みこはら)の売店にはイノシシ肉のコロッケが売っていると言うので、ついでに立ち寄った。
飯山の信号を山の方に曲がって415号線を登っていった先に「神子の里」という地元の農作物やそれらを使った加工品の販売店がある。
こちらが神子の里
神子原と言えば、神つながりということでローマ法王にも献上しちゃった神子原米で知られるところだ。
売り込むためなら犯罪以外なんでもやっちゃうそのたくましさには惹かれるものがある。
そんな神子原でも幟旗のとおり「のとしし」を扱っている。
イノシシのウインナーやロース肉をそのまま売っていたほか、1個150円の自家製イノシシコロッケも置かれているのだ。
おやつ代わりにイノシシ肉を食べれるって、「のとしし」のマーケティングとしては大変アリだと、庶民の自分などは思ってしまう。
ということで購入
普通のコロッケの刻印としてはなかなかお目にかかれない「いのしし」の文字が珍しくて良い。
中にコロッケ
見た目は普通のコロッケ。
そのまた中にはイノシシ肉
ミンチ状にしてじゃがいもと練り合わせてあるのかと思ったら、イノシシ肉の塊がいた。
肉の食感を味わえるのだ。
また、どういう味付けなのか、もしかしたらイノシシの肉汁で浸けてあるのか、コロッケ内のイモも普通のコロッケのイモとは違った食感、違った味がした。
確かにコロッケなんだろうけど、コロッケサイズのジューシーに調理したイノシシ肉を食べているような錯覚があった。
こちらも、気がついたらシートの上に衣をボロボロとこぼしてしまっていたほど勢いよく食べてしまっていた。
それくらい美味しかった。
感想
イノシシ肉、やはり美味い。
ハマヤさんだけでもまだまだメニューがあるし、いろんな調理方法のイノシシ肉をこれからも食べたくなった。
いっそ、肉だけ買ってきて食べたものを参考に自分で調理するのもありだろう。
新しい食べ方を自分で発見するのも面白いかもしれない。
最後にもう一度、幟旗の写真
のとしし大作戦と書かれた大きなイノシシの横で大きなフォークをかざしているのはおそらく天狗だ。
能登半島の獅子舞には最後に天狗が獅子を殺して五穀豊穣を願う「獅子殺し」というのがあるので、それにちなんでいるのだ。
改めて獅子舞の「獅子殺し」も見たくなった。
獅子を田畑を荒らすイノシシとして見るとある意味残酷なのかもしれないが、現在捕獲して食べ物として頂戴していることを考えれば、原罪を考えるきっかけにもなるかもしれない。
ごちそうさまでした。