先日、どこに行くか決めもせずにカメラを持って車に乗り込み、目的地を決めないまま発車させた。
「さて、どこいこうか」と呟きながら運転して、運転しながらすぐにどこに行きたいか決めれないことに気がついた。
まあ、当たり前だろう。
そこで車のナビで石川県の名所を検索することにした。それまで言ったことがない場所で、かつ車で行けそうな場所を検索結果から選ぼうとすると、「ア行」でさっそく「安宅の関」(あたかのせき)が目に止まった。
「安宅の関」は小松市にある。歌舞伎の演目として有名な「勧進帳物語」の舞台となっている所だ。
勧進帳物語というのは、ざっくりいうと、仲違いした兄こと源頼朝に追われている源義経と弁慶たちが山伏に扮してこの安宅の関を通るとき、関守の富樫左衛門に義経ではないかと疑われながらも、弁慶が機転を利かせてニセ(白紙)の勧進帳を見事に読み上げて、通してもらえたという話だ。(富樫は義経だとわかっていながら通した)
歌舞伎のファンの中にはこの関跡に一度は足を運びたいと思う方もいるそうだ。
今っぽく言うと、アニメファンの聖地巡礼みたいなものだ。
一度も歌舞伎を見たこともないのでファンでもない自分だが、石川県人でありながら一度も「安宅の関」に来たことがないので足を運ぶことにした。
小松市なので、金沢からだと1時間くらいだろうか、そんなに遠くない。
「安宅の関」に到着だ
と思ったら、
神社だった
「安宅住吉神社」というところだった。
安宅住吉神社、なんか「定め」がはっきりしていた
物言う神社だ。
ポケモンもズバリと禁止している
「歩きスマホ云々」と茶を濁す表現は使わない。歯に衣着せぬ神社だった。
神社となるとどうしても「狛犬」を探してしまう自分
そしてそれっぽいものを見つける。
関跡を見に来たつもりだったが、狛犬の姿が目に入ってきた瞬間から自分の興味はそちらに移ってしまっていた。
鳥居の前でコントラストを描くように居た
右が阿形の獅子
左が吽形の狛犬
ともに太いネクタイのような前掛けをしている。「よだれかけ」とも言うらしい。
そして、それぞれ足元に何かいる。
阿形の獅子の足元には毬
写真で見ると、毬の下の方に若干塗料のようなものも残っている。
作られた当初は色がついていたのだろうか。
これ、どうやら子供らしい。
全国でも珍しい「子連れ狛犬」というものだそうだ。
そのほとんどは、一般的にメスと言われている吽形の狛犬の足元の方に子供がいて、オスと言われている阿形の獅子の方は毬を抱えているとのこと。
この子供狛犬と毬はセットということだ。
阿形を別の角度からも撮ってみる
サッカーボールをトラップしているみたいでかっこいい。
でも、前足なのでルール的にはたぶん「ハンド」のファウルだ。
表情だけを捉えてみる
闘将のような猛々しい顔をしている。
ハンドしても審判に楯突きそうな勢いだ。
吽形も別の角度で撮ってみる
「よしよし」と頭を撫でているように撮ろうと思ったら、母ちゃんがやたらと凛々しく見える画になった。
子供の方もたくましそうだ。
こちらも顔に寄ってみる
何だか鼻息が荒そうな画になった。
これだけ見ると、足元で子供を抱えているようにはまず見えない。
それでも背中から撮ると…
どちらもまだちょっと可愛げが出てくる
強そうでかわいい、これも狛犬の魅力の一つだ。
鳥居をくぐり御社殿へ
狛犬だけじゃなく、もちろん参拝もしたいので鳥居をくぐって御社殿へと向かった。
境内には、
「辨慶 逆植之松」という大きな松や
石碑などもあった
こちらは「神徳碑」というものだ。
この神社そのものは1200年の歴史があるので、昭和五十年のこの石碑は新しい方だ。
そして御社殿に到着
屋根が印象的だったので屋根を狙って撮ったらピントが甘く失敗していた。
さて、この神社、「難関突破」のパワースポットとして知られている。全国でも珍しい、というか唯一の「難関突破のお守り」もある。
御社殿の前にいた巫女さんがそう教えてくれた。
この神社の巫女さんはガイド役も務めていて、積極的に話しかけてくれます。
彼女たちを見ていると、人生に幾度と訪れる「難関」を突破するには受け身や消極的にいてはダメなのだろうと思えてくる。
難関を突破した弁慶もド~ンと立っています
頼もしい姿だ。勇気がもらえる気がする。
威圧感もあるのでヒヨリそうにもなるが、ヒヨっていてはおそらく世の中の難関は突破できないだろう。
巫女さんたちを見習わなければならない。
巫女さんたちに勧められるまま参拝すると、この御社殿の前にも狛犬がいることに気付いた。
阿形と
吽形
ともに木陰にひっそりといた。
どちらも先ほどの鳥居の前にいた一対と同じく赤い前掛けをしているが、子連れ狛犬ではない。
お座りしている姿で、全体的にツルンとなめらかな質感をしていた。
爪もチェック
阿形、吽形ともに爪はあるものの、足首が太くてクビレがないからか、丸みがあって研ぎ澄ました刃物のような鋭さをあまり感じない。
表情も柔らかい
木陰にいて枝葉が背景になることもあって、開いた口が威嚇のそれには見えず、爽やかに笑っているように見える。
吽形もにんまり
口からキバが見えていても愛嬌に見えてしまう。
鳥居の前の一対とはずいぶんと雰囲気が違っていた。
こちらはどこか「なごみ系」だった。
なごみ系つながりと言うわけではないが、御社殿前にはほかにも「神亀石」と呼ばれる石もあった。
こちらがその「神亀石」
今は昔、この住吉神社にお参りに来た亀がそのまま石になったと言われている。
亀の背中を左右左と三回撫でて神前で祈ることで延命長寿と末広がりの幸福を招くと言われているそうです。
下の方には水も出ている
この日、参拝に来ていた小さなお子さんが、この水で派手に遊んでいた。
その恐れ知らずな無邪気さに見ているこちらがニンマリとしてしまった。
あの子は今後、おそらくどんな難関も越えていくだろう…
また、この神亀石の背後をまわって御社殿の左側奥に目をやると、そこに別の神社(境内社)を見つけた。
金毘羅社だ
金毘羅は「こんぴら」と呼ぶ。
金毘羅は、神仏習合の神らしい。
社があるとだいたいそこにも狛犬がいるものだ。この金毘羅社もその例に漏れず…
居た
しかも「子連れ狛犬」だ。
鳥居前にいた一対と同じで形相がキツめだった。
歌舞伎役者の隈取(くまどり)のような眦(まなじり)をしている。
口などにも残っている赤い塗料のおかげで、よけいに化粧をしているように見えてしまう。
阿形、吽形ともに横顔に迫力がある
これから怪獣同士の「どつきあい」が始まりそうな眼力だ。
形相の怖さに比べると足と毬は丸みがあって、見ていてなごむ
毬は特に色が付いている分、女子の持ち物のようにも思えた。
子供狛犬にも赤いスミ入れ
(スミ入れとは、プラモデルなどを作るときに塗料で輪郭線を入れることです)
こちらは親と比べて人形のような親しみやすさや愛嬌がある。
四対の狛犬
それだけでも十分、お腹いっぱいな話なのだが、この境内にはほかにももう一つ境内社があった。
「稲荷社」というものだ。
稲荷というと、「お稲荷さん」と呼ばれて日本国民に親しまれている神やその社だ。
だいたい鳥居が赤く、狐の神様が祀られていることからキツネの像が置かれていることが多い。
ここの稲荷社も鳥居が赤かった。ただ、像に関してはキツネではなく狛犬がいた。
狛?
犬?
いわゆる「阿吽」のタイプではないため両方とも口が閉じている。
線も細く、狛犬にはなかなか見えない。
正直パッと見、狛犬ではなく赤いスカーフを首に巻いた「犬の置物」に見えた。
少なくともビジュアル的にキツネではないだろう。
特に左側はスフィンクスのようなオカッパ頭をしている。
実はこのオカッパ、「白山狛犬」という種類の特徴らしい。
白山狛犬は白山地区でしか見られないとのこと。
何にせよ訂正だ。この神社の境内には三対ではなく四対の狛犬がいる。
後で知った五対目の話
ただ、後から知ったことだが、この神社には御社殿内にもう一対「狛犬」がいるらしい。
ここで一つ整理しておくと、狛犬には「参道狛犬」と「神殿狛犬」とがいるらしい。自分がこれまで見てきた外にいる狛犬は「参道狛犬」だ。「神殿狛犬」は文字通り神殿(社殿)の中にいる狛犬だそうだ。
あの御社殿の中に、もう一対その「神殿狛犬」がいるという話なのだ。
この神社、巫女さんの案内で個人の参拝客でも社殿内に昇殿し宝物などを見学させてもらえるそうなので、再びここへ訪れた時には昇殿して神殿狛犬も確認してみようと思う。
また、今回、御朱印をゲットするのを忘れたので、そのときついでに手に入れようと思う。