少し前に山代温泉へと行った際、総湯や古総湯、足湯のあるロータリーから総湯の駐車場に向かう途中で「服部神社」という神社を見つけた。
狛犬写真家を自称しようかと目論む自分だけに、久しぶりに自分の中の狛犬好きが疼いてきたので立ち寄って狛犬を見てみると、どう見てもアゴがないように見えて仕方なかった。
山代温泉にある神社
山代温泉の総湯の近くには同温泉の鎮守として服部神社(はとりじんじゃ)という神社がある。
機織の神である天羽槌雄神(あめのはづちのおのかみ)が祀られている神社だ。
白山神社と合併して郷社となってからは菊理姫命(キクリヒメノミコト)も祀られるようになった。
明治17年3月以降は県社に昇格しているところだ。
服部神社の鳥居だ
古総湯のあるロータリーから総湯の駐車場を目指して歩くと、途中「魯山人寓居跡 いろは草庵」というサロンが見える。その直ぐそば(道路を挟んで横)にこの鳥居がある。
鳥居の傍らにはお地蔵様もいる
「一言地蔵」という名のお地蔵さんだ。
この山代に水を引いて救済したという。
そういう言い伝えがあるからかこの山代温泉のパワースポットになっているらしい。
知らなかった。
自分には鳥居の側にお地蔵さんという組み合わせが今では珍しくて好きだ。神仏習合の白山信仰の名残だろうか。
このお地蔵様はパワースポットかも知れないが、見てわかるように鳥居をくぐると長い階段だ。なかなかハードだ。
さて、ここをまっすぐ登っていくと東屋が見えてくる。
ちょっとした休憩場だ
さらに階段を登ると手水舎が見えてくる。
手水舎だ
鳥がいる手水舎だった
山代温泉発見の伝説に出てくる鳥だろうか。
なかなかいかつい顔をしていた。
ここからさらに階段を登っていくと拝殿が見えてくるのだが、境内には他に…
琴平社もあった
ここの石の鳥居がかなり低く、自分は少々膝を曲げてくぐることになった。
こういう低い鳥居ってたまに見かける。「低い鳥居」というカテゴリーでまとめたくなるくらい自分にはレアに見える。
さらに境内には…
稲荷社もある
赤い鳥居が並んでいる。
横幅がないので一見狭そうな境内だが、こうしてみるとさすが山代温泉の鎮守だけあって、ただ拝殿があるだけの神社ではない。
その拝殿はさらに上にある
階段を登っていくとこのように神門が見えてくる。
この神門に提灯が吊るされているらしいのだが、残念ながらこのときはなかった。
その神門をくぐった先に見えるのが拝殿だ。
服部神社の拝殿だ
参拝する時は扉を開けてお賽銭を入れることになる。
自分もそうしようとしたところ、拝殿内で別の参拝者がお祓い中であったので、扉を開けることを憚られた。結局、開けずに外から参拝した。
この拝殿の前に、冒頭に記したどう見てもアゴがない狛犬がいる。
服部神社のアゴがない狛犬
服部神社の狛犬はかなり年季が入っていた。
入りすぎて、どう見てもアゴがなくなっているように見えて仕方がない。
こちらがその…
狛犬だ
そのペア
狛犬はだいたい口を開けた「阿形の獅子」と口を閉じた「吽形の狛犬」のペア一組で形成される(例外あり)。
この服部神社の狛犬もペアになっているのだが、写真を見るとわかるようにどちらも口を開けているような顔をしている。
というか、下顎がまるでない。
寄ってみた
このとおり。
下顎にアッパーカットをくらって顔の骨が変形してしまったあとのような、はたまた下顎が外れてそこより波動砲でも発射しようとしている狛犬型の兵器であるかのような状態だ。
プリンをスプーンでサクッとすくったときもこんな感じで削られる。
同じ狛犬を反対側から
こちらからでも顎下が削られているように見える。
ただ、この角度からだとこの狛犬はもともと吽形なのではないかと思えてくる。
じっくり見てみると下顎もあって口を閉じているのではないかと、そう見えてくるのだ。
もし吽形なら削られている箇所は喉のあたりとなるだろうか。
もう一体の方にも寄ってみる
白カビが顔に広く見られるこちら側(拝殿を正面にしたとき右側にいた)もじっくり見てみると、もともと阿形なのではないかと思わせる下顎が左のほうに見られる。
その左の方から撮影
どうだろうか。
先端が欠けているものの下顎が見えないだろうか?
おまけにもともと口も開いていたからか、上顎の内側にも彫刻されたあとも見られる。
台座にはなにか欠片も落ちていた
どの部分かはわからないが、こうして欠けて落下することもあるくらい古い、または劣化していることがわかる。
下顎がないように見えるのも、これと同じように損壊したとも考えられるわけだ。
これらを総合してみると、やはりこれは阿形なのだろう。そう自分は結論づけたくなる。
では、阿形、吽形ともにそろってアゴから喉にかけて欠けているというのはどういう理由なのだろうか。
こうもそろってキレイに同じ場所が削られているというのも珍しい。
思い出されるのは金沢のひがし茶屋街にある菅原神社の顔の欠けた狛犬だ。
(ひがし茶屋街の菅原神社の記事は→こちら)
菅原神社では狛犬に性別が設けられていて女性がオスの顔を撫でると幸せになるという言い伝えがあり、撫でられすぎたことによって顔が欠けていた。
この服部神社の狛犬たちもアゴや喉元をよく撫でられているのかもしれない。
下顎から喉元を撫でるって犬や猫なら喜びそうな話だ
よしよしよしよしよしよし…
むかし実家の犬によくやったものだ。
今後、いろんな狛犬で顎下を撫でてやりたくなった。
狛犬写真家を自称しようかと目論みながら顎下を撫でるカメラ初心者、といった肩書にしようかな。
おまけ
実は服部神社にはアゴが欠けた狛犬たちのほかにもう一体狛犬がいる。
一対ではなく一体と記したのは、ペアではなくピンでいたからだ。
そのピン狛犬がこちら
同神社の由緒が書かれた石碑の後方にいた。
小さな階段の脇にいるので、両脇に一体ずつのペアでいるのかと思ったら、この一体だけであった。
顔によってみる
鳩胸で肋骨がくっきりなので作りとしては古風であるものの拝殿前のアゴ欠けたちと比べるとまだ新しい。
いずれこの狛犬もアゴから喉元を撫でられて削がれたようになるのかもしれないと思うと、自分としても「よしよしよし(省略)」と改めて撫で回してやりたくなる。
新たなパワースポットに…はさすがにならないか。