初心の趣

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奥能登国際芸術祭2023を地震に負けず回る第二日目その11(栗田宏一「能登はやさしや土までも」)

能登国際芸術祭2023の鑑賞旅、内浦側から回る第二日目も飯田エリアに差し掛かった。

飯田エリアでは作品が近くに密集していたからか、結果的に作品番号順に回ることができず、最初に向かったはNo.30の作品だった。

 

 

「旧」になっていたタクシー営業所

能登国際芸術祭2023の鑑賞旅第二日目、いよいよ飯田エリアに入った。

飯田エリアは商店街に作品展示場所が密集していることが多く、過去二回はラポルトすずの駐車場に車を停めて歩いて向かっていたのだが、今回もその流れだった。

飯田の町を歩いていく

そのうちこのように矢印の看板も見えてくる。

ご覧のようにNo.29~31が同じ方向にある。

歩いて回れる距離に3つの作品が展示されているのだ。

飯田今町の交差点に到着

ガイドブックの地図によると、このあたりで3つの作品が固まっていたので歩いてやって来た。

車で来れなくもないのだけど、商店街のため展示場所それぞれで駐車場がないのであまりオススメはできない。

交差点を左に曲がると芸術祭の幟旗、発見

「スズ交通」というタクシー会社の営業所の前にそれは見える。

2年前の2020+のときも、このタクシー会社の2階が展示場所として利用されていたので、自分としてもここは初めてではない。

初めてではないのだが、なにか違和感を覚えた。

よく見ると「スズ交通」の文字が削ぎ落とされたようになっている。

ガイドブックを確認してみると、展示場所が「旧タクシー営業所2階」となっていた。

「旧」ってなんだよ?と疑問に思ったが、すぐに察しがついた。

この営業所、もう使われていないようなのだ。

スズ交通という会社そのものはまだ健在でタクシーやバスの営業を続けているが、この営業所はこの2年の間に廃止されたようなのだ。

これもコロナ禍のせいだろうか?

それとも5月の大地震のせいだろうか?

覗き込んでみると2020+のときと同じ入口に誘導される

2階へとつながる扉が開いていて、その手前に作品看板も置かれている。

この風景は2年前と同じだ。

違うことといえば、前回この空間に営業用のタクシーが停まっていたんだけど、今回2023では見事に何も停まっていない。

ちょっと寂しい気持ちになってしまう。

 

30番 栗田宏一「能登はやさしや土までも」

30番だ

2023では栗田宏一さんの「能登はやさしや土までも」という作品が展示されている。

室内の展示場所なので、ここにスタンプはない。

この階段を上がっていく

土足のまま上がってくことができ、上がった先に受付があるのでそこでスタンプを押して貰える。

そこから靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて2階の一室に上がることになる。

上がった一室から撮影

右に受付、その正面にあるのが登ってきた階段だ。

左端にスリッパがある。

そして白い床の上が作品の展示場所である。

何やら小皿が並べられていた。

あまりにも作品との距離が近くなってしまうので、上がっていいのか戸惑ってしまったが、上がって良いのだ。

能登半島の形をしていた

白い床に能登半島の形が線で描かれ、その中にこのように小皿が並べられていた。

小皿には、土が盛られている

小皿一つ一つに土が入っていて、よく見てみると、それぞれで土の色が違う。

色の違いをわかりやすく

このように上から見ると一目瞭然だ。

これらの土、能登半島のそれぞれの土地、土地で採取したものだそうで、同じ能登半島でも場所によって土の色が違うそうなのだ。

壁には地図もあり

地図には地名も書かれてある。

床の皿が置かれているところも、この地名の書かれた場所とリンクしているようなので、その地名の土の色がどんな色なのかもわかりそうだ。

個人的に興味が湧いたのは今いる所と正院町

今いる所、つまりは「珠洲市飯田町」と、珪藻土が採れる正院町がどんな土の色をしているのか興味が湧いた。

この地図を参考に…

そのあたりの皿を確認

…どれやねん。

こうして比較して見ると、地図の地名よりも小皿の数のほうが多い気がする。

いや、多い。

そうなってくると、どれがどこで採取された土なのか具体的なところはわからず、アバウトに捉えるしかなくなってくる。

これが、飯田町…かな?

う~む、わからない。

ものすごく難しいパズルをやらされているみたいにわからない。

能登はやさしや土までも」というタイトルだけど、この問題は難問でちっとも優しくない…

そんな愚痴が漏れそうになったくらいだ。

ただ、照合は難しいが、自分はこれ、見ていて飽きない。

土地によってここまで土の色が違うのかと思うと、その土地が何でできていて、どんな地殻変動や歴史があってそんな色になっていったのか、推測を巡らすとキリがなく続いてしまうのだ。

そうしてその土々の色の上に人の営みも見えてくるようで、それら営みが穏やかなものであると想像すれば、なるほど「能登はやさしや土までも」の語源が見えてきそうな気もしてきた。

バファリンの昔のCMじゃないけど、それら採取されて並べられた小皿のカラフルな土のそれぞれが、半分「やさしさ」で出きているようにも思えてくるのだった。

ほんと、土っていろんな色があるんだね。

この発見も楽しい。

 

感想

栗田宏一さんの「能登はやさしや土までも」は、氏の土への情熱も感じられて興味深いものだった。

同じ能登半島でも少し土地が離れれば、こんなに土の色が違うものかと驚きである。

こういう学術的な作品も自分はかなり好みで、ミステリーハンターになった気もしてきた。

まあ、自分には難しすぎる点もあるので、「やさしい」ばかりでは終われないものもあるのだけど、それを差し引いてもアカデミックな空想にふけれて楽しかった。

帰り際、階段より

ちょっと名残惜しくなる。

飯田町の色は? 珪藻土って本来どんな色?

それらを解明できずにいたので、わかるまで見比べたくなっていた。

すっかりハマっていたんだなと、帰るときになって気づくのだった。

そうして果ては、土だけではなく地下の地層についても研究が進み、大地震ならびにずっと続く群発地震の原因を誰か突き止めてくれないだろうかとも思うのだった。