初心の趣

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奥能登国際芸術祭2023を地震に負けず回る第一日目その12(さわひらき「幻想考“The Butterfly Dreams”」)

能登国際芸術祭2023、日置エリアにある旧日置公民館では今回も「さわひらき」さんの作品が置かれていた。

作品タイトルも前回と同じ。

懐かしさを味わいつつ、忘れ物を取りに行くような感覚で鑑賞してきた。

 

 

行き慣れた旧日置公民館

次に訪れたのは旧日置公民館だった。

この場所は2017でも2020+でもやってきているので行き慣れた場所だ。

2017で初めて行ったときは行き方が分からなくて迷ったし、おまけにどこに車を停めればいいのかわからなくて困った思い出があるが、3回目ともなると他の車にも気を使いながら、傍の狭い道も安全運転で向かうことができた。

ただ、自分が今回やってきたときには、その駐車場もだいぶ混んでいて、誘導された結果、どういうわけか建物の隣ではなく、敷地内(売店の斜め前)で停めることになった。

到着

久しぶりだ。

久しぶりだけど、敷地内に停めたのは初めてだ。

まるで関係者のようではないか。おかげで初めてきたときのような変な緊張をしてしまった。

 

12番 さわひらき「幻想考“The Butterfly Dreams”」

12番だ

今回もこの旧日置公民館では石川県出身の「さわひらき」さんの作品が置かれている。

2017のときから3回連続だ。

前回2020+でも作品タイトルは「幻想考」だった。

ただ、今回2023ではその後ろに「“The Butterfly Dreams”」という英字のタイトルもついている。

なんでも、昨年の「幻想考」をさらに発展させているそうだ。

受付を済ませ、さっそく入ってみよう。

下駄箱あります

毎度恒例だが、土足では上がれないのでここで靴を脱ぐことになる。

こういう所作も懐かしい。

玄関から誘導される

順路がはっきりとしていて、床の矢印に沿って進むことになる。

この誘導のされ方も、帰ってきたな、と思えた。

誘導された先では2年前にも目にしたこの光景

広い部屋を贅沢に使ったこの配置も2020+のときと同じだ

真ん中に置かれているものも変わりない。

変化があるとすれば後ろの壁に飾られた絵画が違うというところだろうか。

参考までに2020+のときの記事はこちら

こちらの画がそれ

ガイドブック内の同作品の紹介のページにも使われていた絵と似ている。

今回のものを象徴するような画だろうか?

その隣にはバラバラになった船のようなものが

この部屋の次には暗い部屋の中に舟が置かれていた記憶があったので、もしかしてその舟がバラバラになったりだとか、もしくは今回は置かれていないだったりだとか、そういったことの暗示のようにも思えた。

恐る恐る次の部屋へ

暗闇の中の舟の展示、個人的に好きだっただけに、なくなっていたら寂しいなと思いながら進んだ。

部屋が暗いので光量が足りずカメラで撮影するのが難儀するので、その船を上手く撮るのも今回の目標でもあったのだ。

良かった、ちゃんとあった

入ってみると、暗闇の中に古い木舟が置かれていた。

暗すぎてオートフォーカスが働かない中、手動でピントを合わせて撮った一枚がこれだ。

前回は明るく撮りすぎてしまっていたので、今回は闇を残しつつ撮影することにトライしてみた。

なんとか舟の輪郭だけは浮き出たかと思う。

目を凝らさないと見えないようなところが、リアルだ。

実際にこれくらいのぼんやりさで舟の輪郭を見ているので、かなり部屋の雰囲気を再現できた一枚になったかと思う。

まあ、暗く撮ると、おぞましくすら感じる部屋かもしれない。

それでも、月明かりだけを頼りにしているようなこの暗さは、特異な静寂をも感じ取れるので、不思議と気持ちがリセットされるような感覚もある。

この感覚は、こうして暗く撮ったからこそ気づけたのかもしれない。

そして廊下に出てみるとまた暗い

舟のある部屋から出て廊下に出てみると、そこもこの様に暗かった。

ただ、暗くても光の演出のおかげでどこかにぎやかで、進んだ先の部屋にはムービーが流れているところもある。

1番奥の部屋ではさらににぎやか

2020+のときに来たときも同じような展示が行われていたが、その時と比べるとライトの数が多いような気がした。

前回に行ったときがタイミング的にただ暗くなっていただけなのか、それとも今回「幻想考」が新たな発展を迎えた結果としてこうして明るくなったのか自分としては定かではない。

展示されているものも微妙に違うのかもしれないし、2年前の記憶を思い出しながら鑑賞していると、この幻想的な演出に引っ張られて、自分の精神が時空旅行しているような、そんな錯覚が一瞬起きた。

奥の部屋のさらに奥の部屋に前回見れなかったムービーが

部屋の入口から見て左手にある部屋にも映像が流れていた。

こちら、前回も流れていたみたいなんだけど、自分が来たタイミングが悪かったのか、不具合なのか、待っても待っても何も流れてこなくて、諦めて帰った思い出がある。

そんなもので、今回こうして流れている映像を鑑賞することができて、何か忘れ物を取りにこれたような感覚があった。

流れていた映像は、台所だったり、洗面所だったり、家の一室の中を飛行機が何機も飛んでいるシュールなものだった。

そのそれでいて、その映し出される居住区が昭和の香りをさせていて懐かしさも感じられた。

飛んでいる飛行機に反応してお子さんたちが集まってきて、指さしながら見ているのが印象的だった。

飛行機が部屋の中で飛んでいるだけで、子どもたちにはファンタジーとなり、「楽しい思い出」として残るのかもしれない。

別の部屋ではこんな映像も

奥の部屋の一つ手前、右側にある部屋にはこんな映像が流れていた。

2017のときに奥の部屋で流されていた様な、そんな映像で、ふと懐かしくなった。

この部屋も前回、前々回と何かしらの仕掛けが施されていたが、今回は正面、左手の壁に映像が流れていたからまったく別の印象があった。

多くの人がこうしてじっくり眺めていたけど、この部屋にみんな集まっていたのにはもう一つ理由があった。

 

屋根裏がある

実はこの部屋、屋根裏がある。

先程の部屋の写真右手に、階段が設置されているのが見えるだろうか?

そこを上り下りすることができ、その先に今回新たに設けられたという屋根裏があるのだ。

ここの人たち、映像見ながら、階段に登る順番を待っていたのだ。

もちろん自分も待った。

そして自分の番に

先に何人か上っている方がいたが、上がっていった。

上は狭いので大人数で押しかけることはできないものの、少人数ならすれ違うことくらいはできる。

上がってみると暗くて静かな空間

演出用の明かりはあるものの、全体的に暗くて、かくれんぼで隠れやすそうな、隠れたまんま誰にも見つけあれないような、そんな童心に帰れそうな、それでいて子供の頃の怖い記憶が蘇るような趣があった。

屋根裏の奥の小部屋では皆さん何かを覗き込んでいる

三角の窓が壁に施されていて、皆さんその三角形に顔を突っ込んでいた。

何かが見えるんだろうなぁと、自分も待って確かめてみると…

このようビジョンが

懐かしくも不思議な世界に誘われるようで、なんなら三角に吸い込まれるんじゃないかとの空想が広がった。

それでいて足元にはのぞき穴

小部屋の床にはこのように明かりが漏れる穴が空いていて、覗き込むこともできる。

屋根裏の場所からして下は自分も歩いてきた廊下なんじゃないかと思われるが、人の往来は見れなかった。

代わりに…

こんなものが見えた

絵の具とパレット?

なんでこんなものが廊下が見えるはずの小穴から見えるのか謎でしかなかった。

ジョジョの奇妙な冒険」でよくあるような展開で、何故こんなものが?と深く考えれば考えるほど背中が寒くなってくる。

見てはいけないもの、例えば他人の深層心理を覗き込んでしまって呪われてしまうような、そんなホラーな香りがしてきたのだ。

長居は、禁物だな…

そう思って、引き返すことにした。

っていうか、続々とこの屋根裏に人が上がってきたので、回遊させるため自分も動くしかなかった。

怖さがあったものの、本音を言えばもうちょっと見ていたかった穴だ。

さて、帰ろう

出口だ。

外の明かりが不意に柔らかく見えた。

この旧公民館が浮世離れしていたんだなとの思いが、この出口を目にして湧き上がってきた。

え? なにこれ?

出口へと向かう廊下の角の、その床にポンッと辞書のような本が無造作に置かれていた。

日置公民館のスタンプの文字も見えるので、この施設のものだろうというのはわかるけど、どうしてこんなところにこんなものが置かれているのか、これまた謎であった。

誰かスタッフが落としたものなのか、それとも演出として敢えて置いてあるのか、考えるほどこれまた奇妙であった。

あののぞき穴からこれだけに、今回の「幻想考」はホラーなのか?

そう思った次第である。

いやぁ、この寒気、楽しいじゃないか。

 

感想

能登国際芸術祭2023の、さわひらきさんの「幻想考“The Butterfly Dreams”」は、前回と同じような展示だろうと思って、ササッと見る予定であったが、いやいや、ちゃんと発展していた。

特に前回には無かった「何だこれは?」と思わせる演出はホラーのような奇妙さがあり、考えるほど背中が震える怖さも獲得できた。

学生時代に「ジョジョ」ばかり読んでいた自分としては、こういうのかなり好みで「幻想考」なるタイトルも、「見ようとする人にしか見えないビジョン」を指しているような気がしてきて、人知れず興奮した。

とはいえ、そんなものは自分自身の勝手な解釈であり受け止め方で、のぞき穴にしろ、それ以外の演出にしろ、ハッピーなファンタジーに見える人もいれば、郷愁に懐かしくなったり物悲しくなったりする人もいるんじゃなかろうか?

鑑賞して、じっくりとその人なりに何を感じたのか考えてみてはいかがだろうか。

帰り際、ショップで幻の大浜大豆を買ってしまった

ついでにおからドーナツも。

さわひらきさんのグッズを買わずに食べ物を選んでしまった…

駐車場出る時、誘導してくれたの、さわひらきさん本人だったのに…

このときすごくお腹が空いていたので、食欲に負けました…

ごめん。

あ、豆昆布、マジで美味しかったです。

ありがとう、珠洲の恵み!