まん防が解除された10月2日に珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」へ三度となる訪問。
そこで目にした作品紹介、その10だ。
今回は今尾拓真さんの「work with #8 (旧珠洲市立中央図書館空調設備)」の写真をまとめたい。
旧図書館の空調を利用した作品
作品番号29にあたる今尾拓真さんの作品「work with #8 (旧珠洲市立中央図書館空調設備)」はそのタイトルのとおり旧珠洲市立中央図書館にある。
飯田エリアの中では商店街から少し離れたところにあるので、ラポルトすずから歩いていくことはちょっと難しく、車で向かった。
そういった都合から飯田エリアでは個人的に最後に見た作品となった。
こちらが旧図書館
そもそもここは中央公民館だったところのようで、1階が珠洲市立中央図書館として利用されていたそうだ。
作品も1階だけを利用しており、2階は立入禁止になっていた。
入り口も正面玄関ではなく、写真で見える勝手口から入っていくことになる。
29番だ
この緑の案内板も勝手口の側にあった。
29番だけど34番のスタンプ
「34」と書かれたスタンプが吊るされていた。
大丈夫か、これ? まあ、押しちゃいましたけどね。
勝手口を入ってすぐの景色
機械室なんかがあったので、ほんと、建物の裏側だ。
よくわからないけど入ってみたくなる
入ってしまいましたけど
作品に関係ないと思わせるくらい本当に機械室だった。
作品が置かれているわけでもないので、本当に関係のない部屋だったと思う。
変にスイッチを触らなくてよかった。
勝手口入ってすぐ左にはこんな部屋も
奥の壁になにか貼ってある。
これも作品とは関係ないかもしれないけど、やっぱり見に行ってしまう自分。
むかしの挨拶文だ
この公民館が建ったときに当時の市長が記した挨拶文だった。
やっぱり作品とは関係なかったなと思ってもう一枚にも目を通したら…
作品だった
本作品の作家である美術家の今尾拓真さんによる挨拶文だった。
むかしの市長のそれをみごとにパクって… 失礼、オマージュした挨拶文が並んで記載されていた。
笑っちゃったよ。
29番 今尾拓真「work with #8 (旧珠洲市立中央図書館空調設備)」
勝手口を入ってすぐ右に向くとこんな部屋へ
目的の作品「work with #8」はここに入っていくと始まる。
先に言っておくと目で楽しむ美術作品と言うより、耳で楽しむアート作品だ。
かなり写真泣かせな作品だけど、それでも音は伝えられないので、音を発する装置を撮って、場の雰囲気を伝えたい。
これは…関係ない
機械室を見てきてしまったからか、こういう給湯室の給湯器にまで反応してしまって撮ってしまった。
更に進むとこんな部屋も
なんだこれは、これも関係ないものかな?
と思いながらも撮ってしまう自分。
近づいてみると…
「Rhythm」と書かれてある
音楽に無才能で楽譜とか全く読めない自分なので、これが何を示しているのかわからない。
この部屋に入ったときから作品である「音」が聞こえていたので、その「音」のリズムを示したものだろうかと推測した。
どうでもいい話だけど「Rhythm」って英単語、母音がないんだよね。珍しいから、個人的に結構好きだ。
その次の部屋へ進むと怪しげなものが
空調設備に変なものが3つずつ付いている。
近寄ってみる
どんな悪ふざけかと思うけど、伸びた管にリコーダーが刺さっていた。
小学校、中学校で使うようなリコーダーだ。
しかも写真では伝わらないけど音がなる。
空調設備から吐き出される空気を使ってリコーダーを鳴らしているのだ。
プログラム制御でときどきリズムを変えながら「ファ~~~~~~~~~」みたいな音(実際に音階の「ファ」が流れているかは絶対音感の「ぜ」の字もない自分には不明)が流れてくる。
誰もいないところから、そんな音が流れてくるので、なかなか不気味だ。
そんな不気味な音が…
1Fの色んなところから聞こえてくる
図書館として使われていた一階のあちこちで音が鳴っているのだ。
地図発見
図書館現役時代の昔の地図だと思うけど1Fにはト音記号もいくつか追記されている。
間違いなくリコーダーが刺さって奏者がいなくても音がなっている場所を示している。
ト音記号だと可愛いものだけど、誰もいない部屋で音が鳴っていると学校の怪談系の心霊現象を想像してしまう。
そんなものでなるべくそのリーコーダーをきれいに撮ることで心理的に不気味さを誤魔化したい。
こんなところにも
寄ってみると…
ハーモニカもいた
リコーダーの他にこのようにハーモニカが固定されていたものもあった。
「ファ~~~~~~~~~」の正体はこれだったのかもしれない。
こちらの部屋に入っても…
いる
いる
何も置かれていない本棚に隠れるようにひっそりと音を鳴らしていたりするのだ。
本棚から撮ってあげよう
恥ずかしがり屋め。
未来の砲台のようにも見えてきた
弾やビームが発射されそうではないか。
中には封印されたものも
リコーダーを取り付けられていないパイプもあった。
もちろん音はならない。
秘密兵器的な何かで、ある目的のために保存されているんじゃないかと、そんなSF的な空想を膨らませるに至ってしまう。
ファイル発見
旧図書館の書籍は、新しい図書館に移されて何もないはずなのにファイルが置かれていた。
いかん、極秘資料に見えてくるんだから、この空間と音のせいで頭がだいぶやられている。
こちらは中央のカウンター
使われていない図書館のはずなのに点滅する基盤のようなものがあった。
制御装置だろうか?
不気味だと思っていた音が機械仕掛けだとわかるとホッとする。
そうなると誰が何のためにこんな装置を作ったんだと、その心理を慮ってしまう。
まあ、作ったのは今尾拓真さんなんですけど、なんだか悲哀のようなものをその「音」から感じ取ってしまうのだ。
外から撮ると
寂しそうに見えるんだよね。
音の作品で写真泣かせだと思っていたけど、知らず知らず情がうつってきた気がした。
感想
以上、今尾拓真さんの「work with #8 」の写真だ。
音の作品のため、この作品の良さの80%以上は伝えられていないと思うけど写真を撮っていると、その姿だけでも悲哀とときどき笑いが伝わってくるので、後で見返していると自分としてもそれなりに楽しめた。
まあ、100%この作品というものを堪能して自分なりの解釈をしたいと思うなら「奥能登国際芸術祭2020+を見に現地に行け」と諭しているようでもあるので、なかなか存在感がある。
個人的にはこの棚も気になった
作品には関係ないけど、「スーパー移動棚Z」と書かれてあった棚だ。
つい動かしたくなった。
こんなものに興味を移しながら「音」の不気味さから恐怖を誤魔化していたのである。
写真では伝わりにくいけど、なかなか楽しいところだった。