初心の趣

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「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第三日目その8(中谷ミチコ「すくう、すくう、すくう」)

まん防解除後の10月2日に珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」に赴き、そこで目にした作品の紹介、その7だ。

今回は中谷ミチコ氏による「すくう、すくう、すくう」を取り上げたい。

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気がつけば通り過ぎていた展示場所

作品番号31にあたる中谷ミチコ氏の「すくう、すくう、すくう」は、ガイドブックによると飯田エリアの「スズ交通待合所2階」というところにある。

地元民ではないので、これだけではどこを指しているのか正直わかりづらかった。

ガイドブックの地図的に町中にあって駐車場もなさそうなので、ひとまず車は同じ飯田エリアの「ラポルトすず」に停めて歩いて向かうことにした。

これ、正解で、ラポルトすずからそんなに離れていない。

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商店街の方へ歩いていくと案内板も出ていた

これに沿って進んでいくとそのうち見えてくる。

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もう一つ発見

作品番号30のものと途中まで同じ方向で、バス停「能登飯田」のある十字路で分かれることになる。

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ここ

この角を正面に左に曲がると、今回の目的の31番にたどり着ける。

実際、このバス停から2件隣にそれはあるのだけど、現在も普通に営業しているタクシー会社の待合所の2階にあるものだから、自分、作品展示場所がそこだと気づかずに、一度その前をスルーしてしまった。

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左に曲がるとこの通りに出るのだ

「スズ交通」はほんと目の前にあるんだけど、普通に営業用のタクシーが停まっているし、そこが作品の展示会場だなんて思いもしなかったのだ。

能登国際芸術祭って、だいたい使われなくなった建物を会場にしていることが多いので、その先入観から完全に見落としてしまっていた。

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よく見るとこんなものが置かれていた

道の左側を歩いていると、この缶の案内にも気づかなったものである。

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駐車場を覗き込むと、こうなっている

写真で、今まさに人が入っていこうとしている扉を抜けていくと、目的の展示場へ行けるのだ。

こんなの、分かりづらいよ。

 

31番 中谷ミチコ「すくう、すくう、すくう」

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31番だ

この緑の案内板、缶があったその付近の壁に貼ってあった。

歩いていると見えなくもないが、自分はこれすらも見落としていたのだ。

視力、落ちたかな…

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なにはともあれ入っていく

営業しているタクシー会社なので、遠慮がかなり働いたけどそろりそろりと入っていった。

すぐ階段があり、登っていくと…

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もう受付だ

2階が展示会場になっていて、階段を登っているその途中から作品を拝むことも出来た。

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階段より

白い床が敷かれその上に白い陶器がいくつか並んでいた。

白い床には土足で上がることは出来ず、靴を脱いで、置かれているスリッパに履き替えて鑑賞することになる。

飯田駅にあった作品では黄色ばかりだったのに対して、こちらの作品は「白」が基本だ。

目には、優しいかと思う。

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丼のような、鉢のような白い陶器

側面から見ると歪な形をしたこの白い陶器、上から見るとどれも共通した形をしている。

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掌の形をしている

タイトルの「すくう、すくう、すくう」にあるように手のひらで水を掬うような形をしているのだ。

実際にこの陶器には水も張ってあった。

覗き込むと指のシワなんかも見て取れる。

型を作るときにこの掬うような手の形にして石膏につけて行っていると思うので、見えているシワ等々は、実は手のひらではなく「手の甲」だったりする。

手の甲が反転して手のひらのように見えているんだから不思議な感覚である。

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別のものも

この「すくう」形の陶器、型取りのモデルになった人が一つ一つ違うので同じようでいてそれぞれ形が違う。

飯田の町の職人だったり、住職さんだったり、そこで暮らす人たちがモデルとなっている。

手のシワは年輪のようなもので、かつ仕事の苦労や経験が刻まれていると思うと、一つ一つを丁寧に拝んで拝見したくなった。

「すくう」手の形を、合掌しながら鑑賞するわけだ。

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手のモデル一覧もあった

職人や働く人(家事をする主婦を含む)への敬意を改めて意識する作品であった。

勝手な解釈かもしれないが、少なくとも自分にはそう思えた。

 

感想

手のシワから働く人たちへの敬意を再認識する作品であると勝手に解釈したからか、この作品全体が「勤労感謝の日」みたいにも見えてきた。

実際にモデルとなった方々からするといい思い出にもなっただろうし、羨ましい限りだ。

こういうことに参加させてもらえるような人間になりたいものである。

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会場には傘立てもある

雨が降っているとラポルトすずから傘をさしながら歩いてくることになるので、これは助かる。

こういった気遣い、芸術祭に関わるスタッフの方々もいい仕事していると思った。