9月3日より珠洲市で始まった「奥能登国際芸術祭2017」へ、初日、9月9日に続き9月23日にも足を運んだその様子を記す「第三日目」その3だ。
当日は昼過ぎから珠洲に入っているためそんなに多くはまわれておらず「第三日目」はこれで最後となる。
今回は日置(ひき)エリアの残り1つ、シャク崎にある作品を紹介したいと思う。
先に言ってしまうと、ここではかなり歩くことになった。
日置エリアのシャク崎へ
自分にとってシャク崎というと、ちょっとした因縁がある。因縁と言っても実際に足を運んだことがないので一方的に自分がそう思っているだけなのであるが。
以前、6月に珠洲市を訪れた時、能登半島の最北端を求めて禄剛埼の方に足を運んだことがある。最北端だと思っていたのに現地に行ってみると実は「最北東端」であって「最北端」ではなかったことが判明し、あとで調べてみると「シャク崎」こそが最北端であった、ということがあったのだ。それ以来、シャク崎にはいつか行かないといけないと、そう考えていたわけである。
(その時の記事は→こちら)
芸術祭の作品がシャク崎にあったというのは、その因縁(?)を果たす上でも都合が良いと一石二鳥くらいに考えていた。
ところが作品を見に現地に行ってみると、そう甘いところでもなかった。
6番 鴻池朋子「陸にあがる」
いつもならここでまず作品の黄色の案内板の写真を載せるところだ。
この6番の作品は2箇所にあったので、まずはその地図の写真を上げたい。
県道28号線沿いにあった地図
県道28号線からシャク崎の岬自然歩道へ入っていくその入口に掲げられていた地図だ。
描かれてあるように作品「陸にあがる」は「海」と「崖」の2箇所にある。
それも一方向に2つあるのではなく、2方向に別れた先にそれぞれあるので、順に見に行く必要があるのだ。
おまけに車が通れる場所でもなければ、自転車も入っていけない自然歩道を通っていかなければならない。
要するに「徒歩」で行かなければならないのだ。
しかも…
片道7分もあったりする
とりあえず自分はこの片道7分とある「海」の方から見に行くことにした。
「陸にあがる(海)」
こんな道を通っていく
自然歩道だ。
外灯もないので夜には一人で歩きたくないであろう自然歩道だ。
禁漁案内だ
これからもこの道が海へと通じているのがわかる。
ほかにもいろいろと注意事項があった
キャンプもダメなようだ。
その道中
ゲレンデの林道コースみたいな道だ。
ただし、かなり細い。
イエローリボンだ
作品へはこのイエローリボンを道しるべに辿っていくと地図にも書かれていた。
といっても、一本道だし、途中でちゃんと方向を示した案内板も掲げられているので、夜に来なければ基本的に迷うことはないだろう。
夜に来たいとはあまり思わないけれど
夜になると真っ暗だろう。
地元の中学生とかはこういうところで肝試しとかをするのだろうか?
肝試し御一行…ではなく鑑賞客御一行の姿が眼下に
あんなところを歩いていくのか…っていうか、あそこは道なのか?
そう思った。
でも、海の方に何か見えなくもない。
このように途中で案内がちゃんとある
右に曲がっていく。
鑑賞客御一行が進んでいた道は正しいルートだったようだ。
さらに細い道でしたが…
禄剛埼で能登半島の最北端を求めていたときもこういった道を歩いているので、自分としてはまだ慣れている。
漂着物がすごい
これ、わざと置いてあるのだろうか?
そんなことを思いながら先客の人たちとすれ違い、海の手前まで進んだ…
作品の案内があった
ようやくこれがあった。そしてスタンプもここで押せた。
作家の鴻池朋子氏は人間の境界や現代の神話をインスタレーションで表現する美術家さんだ。
この方、飯田町に展示されている作品番号23の「物語るテーブルランナー・珠洲編」の作者さんでもある。
(23番について書いた記事は→こちら)
23番ではほのぼのとした作品であったが、こちらの「陸にあがる(海)」は神話に出てきそうな化け物じみた何かであった。
岩礁に何かいた
遠くにあるので自分のカメラのレンズではこれが限界であるが、ナニかいた。
よく見ると何かピアノ線のようなものが伸びている
このナニかこそが「陸にあがる(海)」だ。
ガイドブックによると「人間の作る『物質』の破壊的エネルギー」を考えさせるナニかだそうだ。
漂着物に引き寄せられてナニかがやって来たようでもあれば、このナニかが漂着物をばら撒いているようでもある。
なにかわかるようで何なのかわからないナニかだった。
なお、立入禁止線があって、これ以上近づくことは出来ないので、こうして遠くから眺めるしかない。
近眼の人だったら、さらに何かわからない何かであっただろう。
得体がわからないというのはたしかに怖ろしい。
またこの道を戻るのか(しかも登り)
振り返るとそんなことが頭をよぎる。これはこれで人によれば怖ろしいことだろう。
自分としてもなんだろうか疲れだろうか、それともナニかわからない作品のせいだろうか、真ん中の茂みが人の形に見えてきた。
赤丸で囲ったやつ
これも作者の意図したものだとしたら…
そんなわけ無いと思うが、そんな気もしてくるナニかだった。
「陸にあがる(崖)」
再び地図のあったところへ戻ってきた。
その足で次は「(崖)」を見に行った。
「(崖)」のほうは地図から見て右手の自然歩道を歩いて行く。
しかも案内によれば片道徒歩10分とある。
「(海)」の方で片道徒歩7分、往復で14分は歩いている。7分でも距離あるなと思っていたので、なかなか大変だ。
おまけに登りだ
年配の方はかなりきついのではなかろうか。
曲がりながらも登り
小さなラリー用ダートコースに見えてきた。
途中で海を望める
高いところに来たんだなと、軽く汗を拭ってこの景色に安堵したものの、実はここ、まだ作品までは半分くらいのところだった。
さらにつづら折れを登る
もうラリーにしか思えなくってきた。
つづら折れを登りきると分岐点
一応、その場が休憩所になっていた。ベンチもあり、腰掛けて休むことが出来るのだ。
左に曲がると見晴台もあった。曲がってすぐのところにあり、日陰になっていたので涼める場所だった。
自分は休まず作品のある方向へ
腰を下ろすと余計疲れそうな気がしたのでそのまま進んだ。
少し歩くと…
シャク崎発見
正確にはシャク崎について書かれた案内板だ。
この場が能登半島の最北端の最も北にあるポイントというわけではない。
マップで調べてみると、シャク崎の一番先っぽ(能登半島の一番北)は山からじゃ辿り着けないっぽいのだ。考えてみても半島の一番北となると磯などの波打ち際だ。シャク崎の磯で釣りをしている人の写真も見たが、そこに書かれていたことによると海岸伝いに歩かなければならないようだ。
自分としては準備不足だ。たどり着くまでにどれほど時間がかかるのかもわからない。
一石二鳥の目論見は、この時点で諦めることになったのだった。甘くはない。
作品には到達
最北端の一番北を諦めて再び歩を進めてすぐにこの案内を見つけた。
作品名にちゃんと「(崖)」とある。
こちらにもスタンプがあった。誰も見ていないと思って、誰か(もしくはみんな)案内板にスタンプを押しまくってありますが。
それにしても肝心の作品はどこにあるのか?
この案内の側にはそれらしきものが見当たらなかった。
「(海)」同様に遠くにいるのかと思って崖の方を眺めると…
いた…
「陸にあがる(崖)」だ。
その作品タイトルどおり崖にいた。
鹿の角のようなものに人間の足がついたナニかだ。
こんなところにいる
引いて撮ると一般鑑賞客の足ではまず行けないところにいるのがわかる。
どうやってあそこまで運んだのだろうか?自分としてはそのことがとても気になった。
なお、写真にも写っている、崖の奥の海に浮かぶ小島、これを柄島(へいじま)と言うそうだ。
能登半島の一番北のポイントはその柄島の側の磯なので、こうして見ると一番北のポイントまではまだまだ遠いこともわかる。正直、目論見を諦めてよかったと思った。
それにしても孤独な作品だ
見てはもらえるだろうが、これだけ遠いと作品の温度というようなものを感じてもらえないだろう。
破壊的なエネルギーって意外と「孤独」から生まれているものだったりして。
感想
以上、シャク崎にある作品「陸にあがる」の紹介だ。
まあ、なにせがよく歩かされた。往復14分と往復20分、併せて34分は歩いているわけだ。しかも下ったり登ったりの自然歩道をだ。
すれ違ったお年寄りの方の中には「まだ登るの?」と半ば呆れていたり、恰幅の良い女性は「日頃の運動不足がたたる」と嘆いていたりしていた。
かなり疲れたはずだ。
思うにこの作品は、シャク崎全体を使ったインスタレーションだったのだろう。
鑑賞しに行くと疲弊する… なるほど、たしかに「破壊的なエネルギー」を感じられた。
ちなみに…
実は駐車場も遠い
ツアーバスを利用していた人たちは最初の地図の前で駐車してもらっていたが、車で来ている人は地図から徒歩で4,5分離れた駐車場に停めることになる。
(遠くに見えるオレンジの車が自分の車)
この作品はもう、運動だと思って鑑賞しに来たほうが良いだろう。
今回でのんびりまわる第三日目も終了だ。
まだ見に行けていない若山エリアの作品は10月になってからだろうか? 足を運び次第、また記事にしたいと思う。
なお、この日(9月23日)は夕方から禄剛埼で作品番号38の移動屋台「炙りBar」がやっていた。夕日を見ながら炙れると自分もこのブログで告知していたイベントだ。自分も行きたかったのだが、同日輪島で今年初開催していた「デコトラ in 輪島」も見に行きたかったため、残念ながら「禄剛埼で炙りBar」を諦めることにしてしまった。
申し訳なかったです。