初心の趣

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21美の「The World : From The OKETA COLLECTION」を見に行った(前編)

金沢21世紀美術館で行われている「The World : From The OKETA COLLECTION 世界は今:アートとつながる」を見に行ってきた。

展示作品によっては撮影もOKであったので撮ってきた写真を並べたい。

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21美の一般主催展覧会

金沢21世紀美術館にて2020年の秋に行われている展覧会「The World : From The OKETA COLLECTION 世界は今:アートとつながる」のチケットを手に入れたので、この度見に行くことにした。

コロナ禍のせいで21美もしばらく休館になっていた時期もあったので、同美術館に足を運ぶこと自体、久しぶりであった。

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ということで金沢21世紀美術館

目的のコレクション展は21美の市民ギャラリーAで行われていたので写真の入口から入館。

ここは同館の真正面の入り口ではないけれど、市民ギャラリーAがすぐそこだ。自分は大体ここから入ってしまう。

こういうサブの入り口ながら、消毒や検温がしっかり行われていたのにはちょっと驚いた。

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入ってすぐ検温された

スコープみたいなものの正面に立つだけで即座に検温される。

子供の頃に使ったことがある水銀の体温計に比べたらかなりハイテクだ。

消毒液を使うことも促され、マスクも着用していないと入館できないようだった。

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入って右に曲がるとすぐ市民ギャラリーA

「The World : From The OKETA COLLECTION 世界は今:アートとつながる」の開催期間は2020年10月24日~11月23日。

チケット代は一般当日1200円(前売り1000円)、中高生800円(前売り600円)、小学生600円(前売り400円)だ。

長年ファッションビジネスに携わり、現代アートコレクターとしても知られる桶田俊二、聖子夫妻のコレクション展だ。

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有料で音声ガイド(一部の作品)もあり

音声ガイドも今じゃスマホで聞ける時代なんですな。

専用の機器を手渡されていた頃ってもう過去のことなんだね。

なお、これまたコロナの感染対策のためチケットの半券は自分自身で切り離してカゴに入れることになっていた。

コロナ禍のせいで一年くらいこの21美に足を運べていなかったけど、色々と変わっていてちょっと浦島太郎になった気分。

入場する際、受付の方にカメラマークのある作品は写真撮影OKですと言ってもらえたので、カメラを持ち歩いている自分としてはありがたい話だった。

ということで遠慮なく撮らせてもらうことにしたのであった。

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ちなみにこちらが撮影可能を示すカメラマーク

全作品撮影可能というわけではないが、全体の8割くらいはこのマークが付いていたんじゃなかろうか。

 

いざ鑑賞&撮影

では、以下に展示されていた撮影可能な作品の写真を順に羅列したい。

今回は特に絵画を中心に並べたいと思う。

アートの撮影の練習も兼ねていたけど、相変わらず腕は初心者のままであったことは先に断っておきたい。

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草間彌生「南瓜」

桶田夫妻が現代アートのコレクションを始めるきっかけになったのが草間彌生さんなんだとか。

自分の中で草間さんのイメージと言ったら南瓜と水玉なんだけど、今回展示されていた作品もド直球でソレであった。

この黒の水玉がシャーマンの入れ墨のように見えてくる。

期間的にハロウィンとも重なるし、キモかわいさがあるが、魔除けになりそうだ。

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ゲルハルト・リヒター「Abstract Painting(940-3)」

写真のイメージを精密に描き写しぼかした「フォト・ペインティング」シリーズで知られる人で「ドイツ最高峰の画家」と呼ばれているんだとか。

今回のこれは「アブストラクト・ペインティング」シリーズと呼ばれるものの一つだそうで「フォト・ペインティング」とはまた全然違う。

色が溢れていて精密さとはかけ離れている。何を描いているのかパッと見ではわからない。

わからない分だけ、見る側の想像力を勝手に膨らませてOKだろう。

作品なんて世に出たら作者の手から離れて、見る側が勝手に解釈していいものだと自分は思っているので、自分はこの作品を「どこかの港」のようだと思った。

あしからず。

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ジョージ・コンド「(Untitled)」

「古典伝統絵画贋作」と自ら銘打ち、レンブラントやベラスケス、マネやピカソへのオマージュとしてそれらの作風をリミックスしつつ新しい様式を確立させている画家さんなんだとか。

この作品なんか、たしかにピカソっぽいところがあるなぁと思う。

タイトルはないみたいだけど、その目が何を見ているのか気になる、また考えさせられる作品だと個人的に思った。

ついでにいうと開いた口にも注目してしまう。ため息を漏らしているのか、逆に何かを吸い込もうとしているのか勝手な想像がこれまた膨らんでしまうのだ。

自分はジョジョ世代なので波紋の呼吸を連想してしまう(鬼滅の刃はまだ見たことがない)。

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村上隆「(Untitled)」

「ゆめらいおん」とか「DOB君」なんかで知られるアニメーターみたいな作風のアーティスト・村上隆さんの作品。

マニアックなところではこの方「めめめのくらげ」という映画の監督もしているんだよね。

サブカル要素が強く古典的絵画と比べると異色だけど、現代の日本人の感覚としてはこれくらいが日本の現代アートって感じがするのは自分だけだろうか。

それだけ自分もサブカルで育った一人であるのだろう。

この絵もシンプルに明るいし、飾っておくと気持ちも軽くなりそうな気がする。

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スターリング・ルビー「VERT.PROUN」

作家はドイツ生まれでアメリカのペンシルバニア育ちの男の人。

陶芸、絵画、ドローイング、コラージュ、彫刻、ブロンズや鋼鉄を用いた立体作品のほか、キルトや衣服、ソフトスカルプチャーといった布を用いた表現もするそうで、この作品も多様な技法が混ざっている。

なんでもこの人の作品は常に自分や美術史の問題、社会における暴力や圧力をテーマとしているそうで、純粋さと穢のような危ういバランスが表現されているらしい。

確かにこの絵を見ても空が青く爽やかなようで、憎悪のように赤く燃えているようでもあり、白いようで黒くもあるという、相反するものがキャンパスに乗っかっている。

中央にはダンボールで境界線のようなものも拵えているし、ゴムで黄色の虹みたいなものも描いているし、見ていて面白い。

立体感を出すためにあえて斜めに撮影。タッチしたくなるけど、もちろんお触りは禁止だ。

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奈良美智「Collage of Previously Unreleased Drawing Ⅱ」

奈良さんのこの目つきが特徴的な少女の絵は有名だし、一度は目にしたことがある人も多いはず。

音楽好きで知られているだけあってギターを持った絵も複数あるのも個人的にツボだ。

「I will Rock You」なんて文字も小生意気な少女の顔と相まってロックな感情をくすぐられる。

単純に訳すと「いずれ衝撃を与える」みたいな感じなんだろうけど、自分は「いつか見返してやる」って訳してしまう。(QUEENの「We will Rock You」でも勝手にそう訳してしまう)

個人的に結構に好きな言葉だ。

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拡大

こういうのも発見。

これは…文章にするのはまずいかな。

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加藤泉「(Untitled)」

頭の大きな胎児のような絵、三連チャン。

これを描いた加藤泉さんは男の人です。

画家であって彫刻家でもあってソフトビニールのフィギュアなども表現に使うのだとか。

絵を描く際は「絵と自分が対等な関係でありたい」とのことから、下描きもしなければ絵筆も使わず手で指で直接描くという。

この3枚の絵もその例にもれないのだろう。

宇宙人のようで間違いなく人間を描いている。怖いようでどこか母性愛のようなものも感じさせる不思議な作品だ。

アトラスの「ペルソナ」シリーズの敵に出てきそうだと思ったのは自分だけだろうか。

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ヴィルヘルム・サスナル「(Untitled)」

サスナルはポーランド生まれの画家であり写真家でありポスターアーティストとのこと。

解説には写真のイメージを大胆に切り取ってデフォルメした絵画作品で知られていると書かれてあった。また人間の営みに対する鋭敏で繊細な感覚が活かされているそうだ。この作品も子どもたちの学芸会みたいな情景を切り取っているけど、観客の後頭部も影として描いているところが「人の営み」って感じがして個人的に好み。

舞台の上で演じている子たちにはもちろん思い出になろうが、それを見ている親たち(この設定は自分の勝手なもの)も親たちで思い出づくりをしているものなんだよね。

むしろこの情景は観客席からの視点(観客席から撮った写真の画)だろうから、意外と主役は見ている親たちのほうかもしれないと想像すると、メインよりもサブ、人があまり注目しないところにばかり目がいってしまう天の邪鬼な自分としては心をくすぐられるものがあるわけである。

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タラ・マダニ「Shit Mom」

イラン生まれで15歳のときにアメリカに家族と渡っているため、イランとアメリカ両方の国籍と文化背景を持つ人とのこと。

髪の薄い中年太りの男や、汚物まみれの母親なんかを多く描くことで知られているそうで、近代社会の矛盾や男性優位の社会、汚物を見ないようにする風習なんかを風刺的に描いているんだそうだ。

この作品「Shit Mom」もクソまみれの母親シリーズの一つのようで寄り添う白い子どもたちが効果的。

自分は最初チョコレートかと思ったけれど汚物だって言うんだからなかなかビターな話だ。

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この立体感

やっぱりチョコレートに見えるんだよなぁ。

まずい、まずい…

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サーニャ・カンタロフスキー「Good Host Ⅱ」

ソ連崩壊前のモスクワ生まれで、崩壊後ニューヨークに10歳のとき移住したアーティスト。映像作品と組み合わせたペインティングや彫刻、アニメーション等々、活動は多岐にわたる人なんだとか。

解説には浮世絵のように人物をドーンと描いたり黒を活かしたりしているそうで、且つ不安というものを描くことで見る人それぞれが物語を想像できる余韻を残している作品なんだとか。

ありがたいことに勝手に解釈を想像していいということのようだ。

黒のブルドッグを子供の顔に近づけるメインの女の人の表情のまあ悪そうなこと。まるで魔女みたい。

右側の黒い影みたいな部分からは別の大人の腕だけが伸びているし、これだけでホラーな感じがする。

でも、影から伸びた腕こそが実はこの子供を守っているのかもしれないわけで、魔女vs守護霊みたいにも見えてくるから面白い。

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ダニエル・リヒター「I HAD A NICE DOG ONCE」

リヒターはドイツの画家で、キリスト教やドイツの歴史をテーマにしつつ強い色彩と独特な筆使い、半透明な絵の具を重ねる技法等で現代の新しい歴史画のジャンルを打ち立てた人と言われているそうだ。

この画のタイトルをシンプルに訳すと「私はかつていい犬を飼っていた」ってことになるんだろうけど「どれが犬なんだい?」と見ていて首を傾げてしまう。

左やや上の方には猿のようなものも見えるし、その猿のとなりの黒いのは妖怪のバックベアードのようにも見えるし、その下の黄色いのは『ジョジョ』のホワイトアルバム装着中のギアッチョのようにも見えるし、その下では女の人が股を開いているようにも見えるし、謎だ。

歴史や宗教に詳しい人、誰か教えてくれと心のなかで叫びながら、でもパッと見たときの印象だけならなんかわからないけどすごくカッコいいと思った。ファイナルファンタジーみたいで。

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ヴァージル・アブロー「advertise here」

アブローはストリートブランド「オフ・ホワイト」のディレクターをやったり、黒人で初めてルイヴィトンのメンズのディレクターをやったりとファション業界で活躍している人で、同時にDJやアーティストとしても活動している。

なんでも「宣伝や広告がいかに我々の意識を形作っていくのか、その重要性を解き明かす」ことをテーマとしているようで、この作品もまるで広告掲載の広告みたいだ。

絵画として見るようなものではないかもしれないけど、アブローの作品を同じくファッションビジネスに携わっている桶田夫妻が持っている点が、らしさがあって合点がいく。

絵画としてた見るようなものではないと記したが、展示場で黒と白のこれはどの絵画よりも異彩を放っていた。

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KAWS「(Untitled)」

KAWSは「カウズ」と呼ぶそうで、グラフィックデザイナーでトイデザイナーで、画家でもあれば彫刻家でもある。

ディズニー関連のジャングル・ピクチャーズというアニメーション会社で働いていたこともあるそうだ。

両目がXXになったキャラクターで知られる人で、この作品もスヌーピーみたいなキャラクターのその目がやはりXXになっている。

漫画やアニメで育った世代からすると、こういうのを部屋に一枚飾っておきたいなと思ってしまう。

縁が四角ではなく丸なのも角がなくて気持ちが落ちつきそうだ。

それでいて面白いのは2匹いる犬のどちらにもかかっていない前面に大きく描かれたXX付きのサングラスだ。

これは誰のサングラスなのか、勝手な想像力が膨らんでしまう。

ただの鼻ですと言われたらそれまでだけど、この絵を見ている自分なのではと思えれば、見ている自分もこの画に溶け込んでいることになり、それはそれでまたまったりできるなと思えるのであった。

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五木田智央「Divorce」

雑誌媒体等でグラフィックデザイナーとして活動していた90年代後半に、紙に鉛筆や木炭、インクなどで作成していたモノクロの画が国内やアメリカで注目を集め評価を高めていった画家とのこと。

この作品のタイトルを訳すと「離婚」になるんだけど、寄り添っている紳士淑女の顔面が歪みまくっていて、仲良かった時代も遠い昔のように感じられる。

というか貞子ばりの怨念がこもっているように見えて、結婚生活や配偶者への憎悪みたいなものまで感じてしまうから、ああ怖い怖い。

離婚寸前の感情ってこんな感じなのかねぇ。

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佃弘樹「Blue Water White Death」

続いてもモノクロ。

佃さんももとグラフィックデザイナー。2005年くらいからアーティストとして活動しだしたのだとか。

デジタルコラージュと、アナログのドローイングを幾重にも組み合わせる技法を用いているそうで、写真なのか絵なのかわからない。

白黒ということもあって漫画の背景のようにも見えるけど、こんな写真みたいに細かく描写されていて且つゴチャゴチャした漫画の背景もなかなか目にしないので見ていると不思議な感覚が残るのだった。

妖怪メガネを掛けて景色を見たらこの世のもの以外のものが多数漂って見えている、そんな感覚がある。

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MADSAKI「SICKO MODE」

打って変わって急にポップな作品。

MADSAKIさんは大阪生まれで6歳の頃にアメリカのニュージャージー州へ移住したとのこと。

メッセンジャーとして働き、9.11以降に本格的に絵を描くようになったんだとか。

名画のパロディや挑発的な英語の言葉を描くスタイルを確立していったとのことで、本作も日本人ならどこかで見たことあるようなキャラクターがいっぱい並んでいる。

自分としてはこれらを見ていた世代であるので、懐かしさがこみ上げてくる。

そして思ったことは、著作権って大丈夫なんだろうか、と言うことだった。

ニコチャン大王、若い人で知っている人、どれくらいいるんだろう。

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Mr.「ツルゲーネフ

さらにオタク文化的に…

作者のミスターさんは村上隆のアシスタントをしていたそうで、その一番弟子としてアート界にデビュー(96年)したとのこと。

このアニメキャラクターのような美少女はこの方の作品の特徴。オタク文化をアートに昇華した第一人者と呼ばれているそうで、この方のツイッターを見ても、美少女の画がたくさん並んでおりました。

気になるのはタイトルの「ツルゲーネフ」で、小説『初恋』を書いたロシアの文豪イワン・ツルゲーネフのことかと勝手に想像してしまう。

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でもこの絵だしなぁ…

隣にはでっかい美少女の人形(立体作品)も置かれていたので、ますますお頭がこんがらがる。

ちなみにこのでっかい人形の方、ちょっとだけしか写っていないのは撮影OKな作品ではないからだ。

靴とかよくできていた。興味のある方は実際に見に行って確かめていただきたい。

 

撮影可能な作品はまだまだある。

記事が長くなってきたので残り(立体作品)は後編にて記したい。