初心の趣

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「のと鉄道アートステーション」へ最終日に雨の中、見に行った<穴水駅>

2023年3月26日(日)まで、約2週間にわたって「のと鉄道」の4駅にて展開されていたアートイベント「のと鉄道アートステーション」へ最終日に行ってきた。

今回は4駅の中で最後の駅となる穴水駅で目にした作品について記したい。

 

 

穴水駅

2023年3月11日(土)~3月26日(日)の間、無人駅に新たな風景を創出するため、のと鉄道穴水駅能登鹿島駅、西岸駅、能登中島駅の4駅で行われていた「のと鉄道アートステーション -ポッポヤ・イン・レジデンス-」。

当ブログで記すのもこれで4回めだ。

最後となるのは七尾線の終点でもある穴水駅

ここにも何度となく足を運んでいるので、どのような作品がどんなふうに駅に展示されているのか楽しみであった。

ただ、能登中島駅にて占いを体験したとき、受付をしてくれた方が教えてくれた話によると、作品は穴水駅にて展開されているわけではないらしい。

ひとまず地図から

駅自体はこんなところにある。

作品展示場所はそこから歩いてすぐの大町のバス停の前の建物の中なんだそうだ。

大町のバス停の脇には無料の駐車場もあるので、そこで停めるといいという話も聞かされていた。

そんなものでまず駐車場に到着

穴水駅に停めようかとも考えたけど、運転の流れでこっちまで来てしまった。

ちゃんとイベントの幟旗もある

写真の奥には穴水大宮の鳥居も見えている。

そんな場所にこの駐車場がある。

そしてここに停めると…

道路を挟んですぐ目の前に作品の展示場所がある

この建物だ。幟旗とボラ(魚)が目印だ。

穴水駅では長谷川仁さんの『ボラマチ』という作品が展示されていて、ここ以外の至る所に「案内ボラ」が貼られているそうなのだ。

そう、いきなりここにやって来てしまったのだが、本当は穴水駅から歩いて「案内ボラ」を辿りながらここにやって来るのがいいらしい。

そのことをこの建物の中で実際に作品を目にしたあとに教えてもらった。

あとから知ったこととはいえ、それでは作品すべてを味わえなくて勿体ないと思った自分は、作品鑑賞後、あらためて歩いて穴水駅の方まで向かっている。

道中「案内ボラ」も目にし、歩きながらその景色の撮影もしているので、時系列的には逆行してしまうが、写真を逆から並べ、まずは穴水駅からこの建物へと向かう道程を記したい。

 

穴水駅からボラを追いかけて

ということで穴水駅

駐車場へ到達する前にこの前を車で通っているので、歩いて戻ってきたという感覚があった。

時系列的に逆行しているようなことになるが、ここから作品展居場所までの道の様子を写真で綴りたい。

まず駅舎入口前で立つ

駅舎を背にして立つと、このようなアートステーションの矢印看板がすぐ見えた。

ただの矢印ではなく魚がいる。

ボラだ。

これが「案内ボラ」というものなのだろうか?

矢印の指し示す先に横断歩道があり、それを渡ると遠くに幟旗が立っている小道が見える。

もっと寄ってみよう

あの小道だね。

幟旗が道を示すように立っているのでそれに従って歩いて行くとわかりやすかった。

この小道だ

近づいてみると矢印案内看板もあった。

そこに魚の絵が貼られている。

よくわかる、「ボラ」だ

この看板ではその絵(ステッカー)がボラだというのがわかる。

のちほどいただいたパンフレットを確認してみると、この絵(ステッカー)たちこそが「案内ボラ」なんだとか。

したがって進もう

歩いていくと民家の間を通される。

そうしてその民家の壁のところどころに魚の絵が貼られてあることに気づく。

このように魚の絵が

矢印看板の「案内ボラ」だけではないようで、行き先を示すようにあちこちに貼られていた。

拡大

家々に貼られたものはボラだけではなく様々な魚の絵だった。

これ、地元の園児や児童たちが描いたものなんだろうか?

かわいいものもいれば、強そうなサメ系のものもいる。

みんな同じ向きなのが「案内」の役割を果たしていて頼もしい。

たま~に逆を向いている魚もいますけどね

逆行している。流れに抗っている…

でも、わかる… その気持ち。

自分も天邪鬼な人間なので、もし自分がこの絵を描く立場だったら、こういうことをしていたんじゃなかろうか?

やっぱりこども園の園児たちが描いているんだね

どれも力強いねぇ。

これ、イベントが終わったらやっぱり描いた本人の手元に戻っていくのだろうか?

親御さんたちはこれらを大事に保管するのだろうか?

まったく蛇足な話だが、自分は甥っ子がまだ小さいときに自分にくれた絵を今も取っておいたりしている。思い出は捨てれない性分である。

それにしてもほんとあちこちに

あるなぁ

魚たちに誘われて町中散策だ。

裏通りのようなところを歩かされているので、穴水町のディープなところにやってきているような感覚がある。

ディープなお店だ

この靴屋の、地元の人しか知らないような雰囲気がたまらん。

わかりやすい

この進行方向に行けばいいんだね。

穴水町には何度か来たことがあるが、こんなところを歩いたのは初めてだ。

迷子常習犯の自分なので案内もなければ迷っていただろう。

町の人達の温かみを感じるよ。

次はこっちか

写真で撮り忘れたけど、この矢印看板のある曲がり角には喫茶店もあった。

そういったところもこうして歩いてみないとなかなか見つけられない。

数年前にこの穴水町の「長谷部まつり」を見に行ったとき、武者行列を追いかけながら町中を歩いたが、そのときの感慨と近いものがあった。

長谷部まつりを見に行ったときの記事はこちら

あ、最初の通り

駐車場のある大町のバス停の通りだ。

作品展示場所も見えている(幟旗がたっているところ)。

駐車場から駅に向かった際は別のルートで、それこそ最短距離で向かったけど、案内ボラの矢印に従って戻ってくるとちょっと遠回りしている。

それだけ穴水町の庶民的なところ(深いところ)を見せられたということだろう。

 

建物の中で『ボラマチ』鑑賞

あらためて作品展示場所へ

駅から案内ボラに誘われてふたたび『ボラマチ』の展示場所へやって来た。

こうして近くで見るとなかなか年季の入った古い建物のようだ。

入り口がカーテンで仕切られているのでやっているのか一瞬わからなくなって、入っていいのか戸惑ってしまった。

長谷川仁「ボラマチ」だ

これが掲げられているのでここで間違いはない。

間違いはないけど…

「作品の見方」を見ると…

待たなければいけないのかな?

と、コロナ禍の人数制限を思い出して、しばらくこの入口の前で待ってしまっていた。

そのうち先客が出てくると、そのときに中に入っていいのか確認して、入るのだった。

「入れマス」

あとでわかったけど、待たずに入ってよかったようだ。

コロナ禍規制なんてものはもうない。

「ボラ待ち処」はここだった

入り口に貼られてあった待つ場所「ボラ待ち処」はこのように室内にあった。

暗室のようになっているそこへとりあえず入っていくことになる。

ちなみに振り返ると係の方が入口付近で座っている

入っていい旨を教えてくれたのはこの方だ。

あとで色々と話を聞かせてもらった。

ボラ待ち処の中はこんな感じで暗い

靴を脱いで茶室のような小上がりのこの部屋でしばらく待機することになる。

張り紙にはガラス玉が光ると奥の部屋に行けとあった。

暗くてわかりづらいが、奥にも小さな小部屋があるのだ。

あ、光った

これがガラス玉というやつだ。

漁に使うやつだけど、その神々しさからドラクエに出てくるオーブのようにも思えた。

これが光りだすと、奥の小部屋に移動すれば良い。

奥の小部屋へ

先程まで真っ暗だったこの部屋で、なにやら幽霊のような白く浮かび上がるものが見えた。

このときゴオォォォという大きな送風機を回している音も聞こえていた。

風になびくそれは白く小さな鯉のぼりのようでもあった。

季節外れにも思えたそれは…

ボラでした

ボラ待ちやぐらで待っていたら上から見えるボラの魚影ってこんな感じじゃなかろうか?

なにせが、風になびくそれが水中を泳ぐボラのように見えた。

なんかいっぱいるし

数匹の魚影のような演出で見せてくれていたと思ったら、最終的にはこんな魚群が現れた。

最初からこんなにいたわけだけど、暗くて気づかなかった。

気づいていなかった分だけ、驚いた。

まるでのとじま水族館で目にするイワシビッグウェーブみたいな迫力じゃないか。

驚いたけど、こういう数で攻める系、好きだ。

ボラ、食べたくなったよ。

受付に戻ってみると天井にもボラが

建物に入ったときは暗くて気づかなかったけど、受付の天井にも「ボラのぼり」がいた。

しかも、ガラス玉が光って始まるボラの魚群ショーにあわせ、こちらもミラーボールが光って空中を泳いでいた。

そりゃ、入り口をカーテンで閉じているわね。

受付の方に聞いたのだけど、この建物、50年以上前からあるらしく、最初は銀行として使われていたそうだ。

銀行のあとは菓子屋さんとして使われていたそうで、魚群がいた部屋は菓子を作っていた工場だったという話だ。

また待ち処として使われていた小部屋はやはり茶室だったようで、ここで買った菓子をその茶室で食べていけたそうだ。

今で言うところのイートインスペースみたいなところだったわけだ。

いまでは使われなくなった建物だそうだけど、歴史を知ると面白い。

それがこうして『ボラマチ』という作品展示場所に生まれ変わったわけで、何がどう再利用され、生まれ変わるかわからないものだ。

人生もまた同じようなものだろうかと、そんなことも思うのだった。

確かに新しい風景ができている。

 

感想

駅に貼られていたポスター

以上、「のと鉄道アートステーション -ポッポヤ・イン・レジデンス-」4つの駅で作品を鑑賞することができた。

最後の穴水駅は作品場所が駅から離れた場所だったが、駅からの誘導のおかげで駅とのつながりをしっかりと感じられる。

4つの駅の作品を通し、無人駅に人の動きが加わることで、新しい営みが生まれていくものだなと改めてわかった。

そのきっかけが今回はアートだったわけだけど、芸術の力っていうのは今更ながら大きいと思う。

作品は常設されないのだろうか?

されないならされないで、また定期的にこういうアートイベントを行ってくれないだろうかと思う。

そしてアートに限らず、人の流れを生むイベントを各駅でこれからも行われ続けてほしいと願う。

無人駅が廃線により廃駅になっていくさまはやはり寂しい。

なってしまったらそれはそれで仕方ないけど、今回の『ボラマチ』の展示場所のようにどう生まれ変わるかわからないので、生まれ変わらせればいいという気概だけはなくさないでほしい。

少なくともそれに似た気概は今回のアートステーションで感じているので、今後ののと鉄道、楽しみである。

待っているだけでは何も変わらない。ボラ待ちやぐらを参考にしながら、人を歩かせ、動かした今回の作品『ボラマチ』のように「動く」って大事ですな。

またイベントや観光を通して、それぞれの駅に足を運びたい。