2月、秋にも訪れた石川県輪島漆芸美術館へ「日本伝統漆芸展」という企画展を見に足を運んだ。
その日はさらに「沈金箸色付ワークショップ」も行っていたので、興味本位で体験してみた。
わんじまのいる輪島漆芸美術館へ
冬に石川県輪島漆芸美術館へ行った
マスコット「わんじま」に惹かれ、昨年(2017年)10月に初めて訪れたこの漆芸美術館に年が明けてから再びやってきた。
(わんじまに惹かれた記事は→こちら)
ちょうど「第35回 日本伝統漆芸展」という企画展が行われているときで、自分が足を運んだのはその企画展最終日の前日であった。
1月27日~2月19日まで開かれていた
自分が行ったのは2月18日だった。
2月10日~18日は「輪島あえの風冬まつり」の期間で、入館料が普段は一般620円のところ410円で入ることができた。
日本伝統工芸展の漆芸部会展として、漆芸の伝統の継承とその練磨、現代への応用を目指して開かれているそうだ。
東京、輪島、高松、広島の4会場を巡回しているのだとか。
受賞作や入選作、全88点が展示されていた。
2月18日の昼1時からは沈金の重要無形文化財保持者(人間国宝)である「前 史雄」氏の列品解説も行われていた。
自分が同館に辿り着いたのが奇遇にも13時少し前であったので氏の解説を最初から聞くことができた。
お客さんの中には漆芸の学校に通っている女子も何人かいたようで、その子らに負けないくらい自分もじっくりしっかりと近い位置でその解説に耳を傾けていた。
もしかしたら自分も学生だと思われたかもしれない。
なお、同館は写真撮影が出来るところも多いものの、展示室だけはどこも撮影禁止なので特別展の写真は一切撮っていない。
かわりに「わんじま」を撮影
こちらが当館のマスコットキャラクター「わんじま」だ。
この着包みにも使えそうな大きさのこちらのもの、前回訪れたときと比べると置かれている場所が異なっていた。
この日はご覧のように枯山水のある庭を背にコーナーに置かれていた。
いつ見てもシュールで且つかわいいやつだ。
このわんじまのいる一階のエントランスフロアに、この日2月18日に沈金箸色付ワークショップも行われていたのだ。
沈金箸色付に挑戦
ワークショップが行われていたのは、わんじまの巨大着包みがいるすぐ側だった。
そこにテーブルが置かれ作業台としていた。
参加費は620円だった。
作業台の様子
カラフルな色の素と箸が置かれている。
そもそも沈金とは漆器の蒔絵の一種で、模様を毛彫した中に金粉や金箔を埋め込んでいく技法だ。
体験では箸にはあらかじめ文様が彫られていて、そこに7色から好きな色を選んで色を付けていけるのだ。
文様の種類
文様はこの4種類から選べる。
「蝶」「松」「花」「波」とあり、「波」が一番やりやすいと言っていた。
逆に「蝶」が難しいということだ。
「波」は文様の一つ一つが細いが、「蝶」は広めなので付けた色がとどまりにくいらしい。
サンプル(実物)
箸の色は黒と赤の2種類から選ぶことが出来る。
サンプルを見る限り、色の付け方によっては数種類の色をグラデーションのように付着させることもできるようだ。
なお、その付ける色というのは7色の金属粉である。
7色の金属粉
金属粉と言うのは、アルミニウムに着色した「エルジー粉」というものだそうだ。
どれを使ってもいいので、自分は緑色と金色のものを使うことにした。
そして選んだ文様は…
「蝶」だ
一番難しいと言われたので、あえて挑戦したくなった。
さて、この文様にまず代用漆を塗っていくことになる。
チューブに入った代用漆
あくまで「代用」だ。漆ではないのでかぶれる心配はない。
本物の漆だと、人によっては触るどころか近くに寄っただけでかぶれることもあるのだとか。
まずは代用漆を板の上にとる
とったものをまずは綿棒を使って箸の文様に塗り込んでいくことになる。
このように塗り込む
上手く蝶の文様を埋めるように塗る必要がある。
塗ったものを今度はペーパーで拭き取っていく。
箸の表面の代用漆を拭き取っていく
習字の紙で拭き取っていく。体験の代用漆を拭き取るにはこの習字の紙が一番やりやすかったと職員の方が言っていた。
表面を拭き取っていくと文様のくぼみの中に入った代用漆のみ残ることになるのだ。
溝が細かいほうが残りやすいので「波」がやりやすく、「蝶」がやりづらいという理屈だった。
実際、蝶の溝を埋めつつ拭き取るのに自分も何度か失敗している。
代用漆が接着剤の代わりにもなるのでもたもたしてもいられず、なかなか難しかった。人によってはキレイに入らなかったりするらしい。
次は入れた代用漆の上に金属粉を付着させていく
自分は緑のものを選んだ。
「蝶」の文様はグラデーションにするのが難しそうなので一色で攻めてみた。
でももう一本は別の色
こちらは金色っぽい色を使用した。
このようにグラデーションだけでなく自分好みに金属粉を複数種類使用することが出来るのだ。
そして、こうして金属粉を付着させたものも…
表面を拭き取っていく
同じく習字の紙で拭き取り、文様の溝の中にだけ金属粉を残すのだ。
これもやっぱり「蝶」は溝の一つ一つが広いのでより難しくなる。
拭き取る時はこれがまたかなり力がいる。
代用漆の粘着力は侮れない。
でも、溝の中の金属粉は傷つけずに表面だけをゆっくり力強く拭き取る時、ものすごいやり甲斐のようなものがあった。
神経を集中しているからだと思うが、上手く拭き取れ磨き上げたようになってくると達成感もあった。
この金属粉を拭き上げることができれば沈金色付の体験は完了だ。
出来上がり &感想
できあがったものがこちら
職員の方曰く、自分はまだうまくいったほうらしい。
微妙に金色の蝶の羽根がところどころ失敗しているが、自分としても納得している。
もちろん箸は持って帰ることができる。
取扱の注意によると、製作後完全に乾くまで2日待つ必要があり、2日経ってから使用可能だ。
洗う際も模様の部分を強くこすらないほうがよいらしい。また食器洗浄機は使わず手洗いすることを職員の方にすすめられた。
注意書きのわんじまもシュールでかわいい
体験開始から出来上がるまで自分の場合は15分くらいかかっただろうか。
模様の部分を削がないよう熱心に注意深く拭き取っていたからか終わった頃にはちょっと汗をかいていた。
体験とは言え、それだけ真面目にやってしまっていたのだ。
気分だけはおそらく職人にでもなっていたつもりでいたのだろう。
その気分を味わえただけでも満足だ。
なお、自分は企画展のワークショップでの体験に参加してきたが、沈金箸色付体験そのものは石川県輪島漆芸美術館にて普段より行われている。体験プランがあり、事前に申し込むことでワークショップのとき以外でも体験可能なのだそうだ。
プランによると沈金以外にもいろいろと体験があるようなので、自分もまた機会があれば他のものも体験してみたい。
職人気分、いい気分だった。