羽咋市といえば、テレビでも何度か取り上げられたことがあるので知っている人もいるかと思うが、何故かUFOのまちと呼ばれている。
いや、呼ばれているのではない、市自らがそう名乗って推しているといったほうが正しい。
知らない方は、
「UFOのまちってどういうこと?」
と首を傾げることだろうが、なんにせよUFOの町なのだ。
気多大社の帰り際、ふとそのことを思い出した自分は、久しぶりにそのUFOの推しっぷりを目にしようと思い、まっすぐ帰らず羽咋駅に車を走らせることにした。
羽咋駅だ
駅前のロータリーにこんなオブジェが恥じらいもなく置かれている
街灯もユー・エフ・オーだ
バスもこのとおり未知なる遭遇ラッピング
どうやら正確には「UFO神話のまち」らしい
駅のホームの柱にも宇宙人
ついでに駅真向かいのシャッターもこのとおり
見上げるとド~ンとWelcome
そして再びロータリーに目を移すと、
ジャーン!
…ジョジョかよ。
さらにその脇にも、
荒木飛呂彦先生リスペクトなのだろう。
ジョジョで卒論を書いた自分としても、その気持ちはわかる。
(「ジョジョ」とは荒木飛呂彦さん原作の漫画です。正確には『ジョジョの奇妙な冒険』)
テレビ番組の「ナニコレ珍百景」にも認定されているらしい
こうなると市も、もうあとには引き下がれないな…
羽咋がどこかの市に吸収合併されて消滅しないかぎりずっと「UFOのまち」だ。
ついでに駅入り口脇にはこんなものまであるし…
UFOより怖い…
ちなみにUFOとは関係ないが、
相撲の像も駅前にあった
がっぷり四つだ。
UFOとはかなりのギャップだ。
こういうのを見ると相撲がもともと神事であったことを思い出される
いや、信仰という点ではUFOと同じかもしれないとも思う…
こう写真を撮っていると、駅のホームから何やらアナウンスが聞こえた。
何かイベントでもやっているのかと改札口の方に向かうと、
ちょうど観光列車「花嫁のれん」が発車するところだった
慌ててカメラを構えると、正面のお姉さんが持っていた看板を向けてくれた。
これまた慌ててシャッターを切ったが…
ピントがあってませんな…
わたわたしすぎて露出もあってませんな…
動くものを撮ることに全然慣れていない。
自分は鉄道カメラマンにはなれないだろう。
市内には宇宙科学博物館もある
さて、羽咋がUFOの町であり、市もそれをプッシュしていることを駅前を見るだけでわかっていただけたことだと思う。
さらにこの駅とは別に、羽咋にはもう一つUFOな観光スポットがある。
駅からは少し離れているが、ついでなのでそこにも車を走らせて向かった。
宇宙科学博物館「コスモアイル羽咋」だ
地元民の友人に教えてもらって自分がこの博物館を初めて知ったのは10年くらい前だ。
当時は、この建物の前まで足を運びつつも結局中には入らなかった。
失礼ながら、胡散臭かったからだ。
マーキュリー・レッドストーン・ロケット (アメリカ製)が前庭にある
ピサの斜塔のようにちょっと斜めに写ってしまったが、コレ、1段目と2段目は実物のロケット胴体だ。
ここを教えてくれた友人の話によると、かつて「ふるさと創生事業」という国の政策があり、各市町村に対して地域振興のために1億円ずつ配られたのだが、羽咋市はその1億円でNASAからこのロケットを買ったらしい。
この話が本当かどうなのかは今も調べきれていないのだが、当時そんな話を聞かされた自分は「羽咋は何をやってんだか…」と呆れたのを覚えている。
そんなこともあって当時は館に入るのをやめたのだ。
あの頃の自分は若かったなと、今では思う。
そして歳を重ねた今の自分は、カメラを首にぶら下げ、子供のようにワクワクしながら中に入るのだった。
建物の外観はこんな感じ
庭にはこんなオブジェもある
石碑には「星の詩」と書かれていた。
入り口傍にはこんなポスターも張られている
羽咋市はおふざけが好きなようだ。
自分も嫌いじゃない。
入り口を抜けると、
さっそく「アポロ・ルナローバー」が展示されている
月面探査に使われた月面車です。
最高時速は16km/hだそうだ。
この展示物は一階に置かれており、一階は無料スペースであるから、これだけはタダで見ることができる。
この目の前にチケット売り場があるので購入すると、職員の方が、クイズが書かれた冊子を渡してくれた。その際、少し当館の説明をしてくれたので、ついでに撮影可能かどうかも訊ねた。この博物館は館内での撮影もOKだった。
こちらがクイズの冊子
暗い館内で撮ろうとしたら、暗すぎてオートフォーカスが働かず、手動でピントをあわせたら見事にボヤケた。
冊子の中には館内の展示物を見ていけば答えられる選択クイズが書かれてある。
全部答えて帰り際にチケット売り場に持って行くと、参加賞のようなちょっとした景品をいただけると職員の方が教えてくれたので、自分はまじめに回答していた。
もともと自分は博物館や美術館にくると、貧乏性なのかじっくりと隅々にまで目を通すタイプなので、このクイズを面倒臭がることは一切なかった訳だ。
2階に上がると「宇宙科学展示室」がある。
最初の展示物は「マーキュリー宇宙船」(アメリカ)だ
船内は狭い
狭すぎるため、船員は身長180cm以下、体重82kg以下に制限されていたらしい。
中のパネルやスイッチは実物と同じ材料で再現されているそうだ。
続いては、
旧ソ連のガガーリンが世界で初めて宇宙飛行を達成したカプセルだ。
驚くことに、これ、レプリカではなく実物だそうです。
表面の、空気との摩擦で出来た焼け跡がその証拠だと、団体客を案内していた職員の方が解説していた。
ツアー客がいたことは、自分にはラッキーだった。
ちゃっかり団体客の後についていって最後まで説明を聞いていた。
中はやはり狭い
こちらはアメリカの「RL-10エンジン」
こういうのを見るとどうしてもガンダムのバックパックしか連想しない自分。
日本のアニメを頭の中で思い描いていたら、
アメリカの漫画がいた
この帽子、スヌーピーキャップと呼ばれているそうだ。
こちらは「ルナ/マーズ・ローバー」
月面や火星上での移動や運搬用にアメリカのNASAによって設計・試作されたプロトタイプのローバーだそうだ。
予算はないがホンモノを置きたいということで、NASAに100年間レンタルさせてくれないかと申し出たところ、「君らおもろいね」ということでOKされたらしい。
もちろん、1年に1回ちゃんと展示しているか報告しなくてはいけないといった取り決めもある。
ついでに言うと、以前、世の中がインターネット時代に突入し、やりとりが手紙から電子メールに変わった際、館の人たちははじめ、その英語で書かれたタイトルを目にしてウィルス付き迷惑メールじゃないかと疑って(当時は「英語タイトル=迷惑メール」だとよく教えられていたものだ)何通か「ゴミ箱」行きにしていたという、失敗談も聞かせてもらえた。
この展示物は「アポロ司令船」
外壁の銀色のシールは実際に使用された耐熱シールらしい。
余談だが、アポロチョコはこの形をモデルにしているので、あんな形をしている。
内装を見るとやはりどうしてもガンダムを連想してしまう
天井からこんなものもぶら下がっていた
宇宙服の展示もあった
アポロ宇宙服は重さが80kg近くある。
地球上ではこの重さだが、月面上ではその6分の1くらいだ。
見ていると、一度着てみたくなった。
こちらは船内服
アポロ17号のユージン・サーナン船長のものらしい。
サーナン氏に許可をもらって特別に展示しているそうだ。
オメガ「スピードスター」の展示もある
人類初の月面への一歩、その歴史的瞬間を刻んだ時計がオメガだ。
1964年、各メーカーから持ち込まれた時計をNASAはぶっ壊すかのような耐久テストを行ったそうで、唯一パスしたのがオメガだったそうです。
ほかにも、
NASAの「バイキング火星探査船」
といった展示があった。
そしてもう一つ、この展示室の中でももっとも異彩を放っていたものがあった。
それが…
こちらだ(※閲覧注意)
アメリカのニューメキシコ州に墜落したUFOが米軍によって回収されたという「ロズウェル事件」の宇宙人を模した人形だ。
かなりキショイ
先ほど記した団体客は小学生低学年くらいの子どもたちのためのツアーだったのだが、これを見てマジ泣きしていたお子様もいた。
こういったものまで展示してしまうところ、さすが「UFOのまち 羽咋市」、翔んでいらっしゃる。
大人の目には… 見れば見るほど笑えてくるけどね。
2階の「宇宙科学展示室」での撮影は以上だ。
展示室の出口を出ると、すぐ傍の資料室のような場所に、こんなものも置かれていたのだついでに撮った。
なんかロックだ
そしてこのとき思った、羽咋市ってロックだ。
ついでに言うと、NASAもおちゃめだ。
通路にはこんなポスターも張られていた。
「ミッションポスター」というらしい
NASAでは有人宇宙飛行ミッション1回毎にポスターを作成しているそうで、そのデザインはクルー全員で相談して決まるらしく、その多くは有名映画をモチーフにしているため、こんなコスプレみたいなポスターが出来上がるそうだ。
いちいち完成度も高いから、「NASAってやっぱすげぇ~」と自分はだらしなく開口してしまった。
※思わず一枚一枚写真に撮ったのだが、容量の問題で一枚一枚掲載することは自粛しました。
通路の先にあった記念撮影場所
当然、ここでも宇宙感がバリバリだ。
さらにはトイレのピクトグラムも宇宙人だった
常識にとらわれず自分色をこれでもかと出す。
やはりロックだ。
羽咋は「UFOでロックなまち」で自分好みだ
この館には2階の展示室の他に3階にプラネタリウムがあるのだが、この日は最後の上映時間も終わっていて見ることができなかった。
帰り際、チケットを購入した時にもらったクイズの冊子を、すべて答えて売り場に持って行くと、館オリジナルのポストカードと、次回から使える入場料の割引券付き解答用紙をもらえた。
ちなみに自分の解答だが、全問正解だった。
職員の方は「ビデオも見られたのですか?」と訊ねた。
(館内に設置されたビデオを見ないと答えられないような問題もあったからだ)
もちろん「YES」だ。
クイズのためではなく、普段から隅々まで見ようとする自分の性分によるものだ。
ゴーイングマイウェイぶりでは、自分も羽咋市に負けていないと思った。
というか、やはりこの市は自分好みだと思った。
なにかシンパシーがある。
実際、この館内の展示物は自分にはどれもおもしろかった。
帰り際に見つけた公衆電話の案内
そして砂の彫刻
館のマスコット「宇宙人サンダー君」だ。
彫刻ではかなりデフォルメされているが、本来は人間サイズで、ときどき館内にも出没するらしい。
このようにどこまでもふざけているように見えるから、好みだ。
こんな案内まであった
やべぇ、映画見てぇ。
そう思った。
最後に、
館内のエレベーターがですが、
動き出すと暗くなります
ブラックライトがキレイだったので、何度も乗って撮った。
(ISO感度をこれでもかと上げたので、写真は汚くなったが… )
撮りながら、この凝りように感服した。
いや、羽咋市全体の、宇宙やUFOに賭けている情熱に感銘した。
田舎の一市町村でも、あまり予算がなくても、こんなにおバカで楽しい町づくりができるのだ。
情熱の可能性は不思議だ。市がプッシュしているUFOも摩訶不思議だ。
自分はふと、勝手ながらこの羽咋市全体を「石川県七不思議」の一つに数えたくなった。
※七不思議の残りの6つはじゃあ何だと問われると、決めてないので答えられません。
あしからず。