初心の趣

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「奥能登国際芸術祭2020+」をマイペースに回る第三日目その11(尾花賢一「水平線のミナコ」)

珠洲の奥能登国際芸術祭2020+で目にした作品の紹介、第三日目その11だ。

今回は直エリアにある尾花賢一さんの「水平線のミナコ」をまとめたい。

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海辺の倉庫で縦列駐車

今回紹介する尾花賢一さんの「水平線のミナコ」は直エリアの海の方にある。

細い内浦街道を走っていると奥能登絶景海道というところにいつの間にかなるんだけど、そこでさらに海の方へ曲がっていくと倉庫が見える。

その倉庫(本江寺の倉庫らしい)こそが作品の展示場所になる。

2017のときには角文平さんの作品が展示されていた場所なので、2017を回ったことがある方なら「来たことあるな」と懐かしくなる。

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こんなところ

海辺にある倉庫だ。

ほんと、細い道を入っていくことになる。

その細い道で縦列駐車をすることになるので、鑑賞客が多い時、運転に自信のない方は停めるの苦労するかと思う。

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受付もこじんまり

窮屈そうに見える。

この時間、雨も降っていたので大変そうにも思えた。

 

26番 尾花賢一「水平線のミナコ」

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26番だ

尾花賢一さんは人の営みや伝承、土地の風景を取材して作る「マンガ形式のドローイング」を制作されている方で、今回の「水平線のミナコ」も漫画のドローイング、さらに彫刻などを使って展開されているとガイドブックに書かれてあった。

ドローイングって何だっけ?って自分もなったけど、なんだろうか、モノクロ画みたいなもののようだ。

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入ってみると、さっそく漫画っぽい絵が

タイトルもマンガの一コマのように掲げられていた。

難しいことを考えずに漫画だと思えばいい。

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「嫁礁」(よめぐり)について書かれてある

今回の作品の元ネタとなった民話(悲話)が「嫁礁」というもののようで、実際に能登半島沖には嫁礁海域というところもあるそうだ。

知らなかった。

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よめぐり悲話

ここからスタート。

ドローイングを巡っていくことで物語が展開するインスタレーションということで、倉庫の中を歩きながら漫画や活字で物語を読んでいくような作品となる。

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中はこんな感じ

3コマくらいの本の1ページ、または1コマが通路に貼り出されているようなスタイルだ。

自分としては一つ一つ写真に収めたのだけど、それを全部ここでアップしてしまうと物語の完全ネタバレになってしまうので、掻い摘んで上げて雰囲気だけ伝えたい。

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「あんさには女がいるのかもしれん」

民話「嫁礁」の一節のようだ。

小さなお子さんも鑑賞客の中にいたけど、どこまで理解できるのだろうかと大人目線で勝手に心配してしまった。

また、あちこちで木で作った小さな家も見えた。

こういったもので作品の雰囲気を演出したりしていた。

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こんな一コマあり

その周りに…

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こんな彫刻が

貝を掴んだ手だ。

手首までしかないので、『ジョジョ』第4部の吉良吉影を思い出してしまったのは自分だけだろうか。

上の一コマを見、また物語を読み進めている途中で目にするなら違和感はないかもしれないが、この手首だけを目にしたら、なかなか怖い。

小さなお子さんが結構物語をすっ飛ばして進んでいたので、これまた大人目線で心配になった。

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次の部屋へ

壁に物語が貼り出されている。

自分はもちろん一つ一つ読んでいったし、後で見返せるように写真にも撮っている。

そんなことをしていたから、どんどん後から入ってきた鑑賞客に追い抜かれていった。

美術館とか行っても、隅々まで見てしまう。これは性分だ… おそらくB型特有の。

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こんなページあり

スナック岬波の入り口が…

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リアルに再現されていた

最初遠くから目にしたときは電飾看板が廃棄ゴミか何かだと思えたけど、作品の再現であった。

面白い試みで、物語に入り込んでしまう空間づくりだ。

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これは…

ちょっと意味がわからなかったけど…

場所としてはスナック岬波の電飾看板の隣にあったので、展開が急すぎて頭が混乱してしまう。

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クライマックスへ

臨時召集令状(戦争時代)の話も挟みながら悲話である「嫁礁」のクライマックスへと流れていく。

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段差あり、注意!

話が一気にクライマックスへと進むので注意が必要だ。

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ええぇ?!

ばけもの? 貝を打ち下ろす?

鬼退治の話なのか? ってここだけ読むと思ってしまうかもしれないが、男女の悲話だ。

勘違いのご注意を。

かくいう自分は「(さては、ばけもの!)」で「新手のスタンド使いか?」っていうジョジョの一幕を思い出してしまいましたが。

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ザザーッ

このオノマトペ(擬音)の迫力、ごめん、ここでも『ジョジョ』を思い出してしまった。

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え? 誰が亡くなったの?

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さらには旅立ち

後半の急展開に、誰が亡くなって、誰が旅立ったのか等々、把握できないことが多くて、何度もこのあたりを行ったり来たりして物語の流れを整理していた。

もちろんその間にも後の鑑賞客に何人にも追い抜かれる。

それだけ時間をかけても「ん?」と物語全体を理解できない自分がいるのだから狐につままれているような奇妙な感覚があった。

まあ、わかりにくいだけ、その分、読み手である自分が勝手に空想して勝手に解釈できるので、こういうの嫌いじゃない。むしろ好み。

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新手のスタンドか?

ドローイングによる物語が終わったと思って出口に向かったら、その手前でコレがいた。

体は女性で頭が波だ。

突然すぎる得体のしれない彫刻ゆえにビックリしてしまう。

というか、ちょっと怖い。

それまでの奇妙な感覚は、こいつのスタンド能力だったのかい?

なんて、やっぱり『ジョジョ』的思考が働いてしまったじゃないか。

「大人の心配」云々なんて言っていたけど、自分が一番子供だったのかもしれない…

 

感想

マンガ形式のドローイングで展開していく「水平線のミナコ」、子供には分かりづらい作品かもしれないなんて思いながら見ていたけど、結局大人の自分もそのすべてを理解できず、最終的には『ジョジョ』ネタに絡めてお茶を濁すような解釈をしてしまったのだから、自分自身が大人になりきれていないと再認識した。

でも、面白かった。

あの彫刻の唐突さ、奇妙さは、鑑賞していてマンガの世界と現実の世界の境界線を曖昧にするようで物語の世界に引き込まれるものがあったので、新鮮な感覚であった。

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それにしてもどこから見ても奇妙な彫刻だ

頭の波の中央の穴状のところに『キン肉マン』のブラックホールのように吸い込まれるんじゃないかと、そんな想像もしてしまう。

いかん、ゆでたまごも混ざってきた。

頭の中がごちゃごちゃになってきて、もうホラーだ。