珠洲市の奥能登国際芸術祭2020+で目にした作品の紹介、第三日目その7だ。
今回は3年ぶりに目にした河口龍夫さんの「小さい忘れもの美術館」を取り上げたい。
34番 河口龍夫「小さい忘れもの美術館」
飯田エリアに再び戻ってきた。
旧飯田駅にあるのが奥能登国際芸術祭2017でも展示されていた「小さい忘れもの美術館」だ。
初めて行ったときはちょっと迷ったけど、3年前にも来ているので自分としては行き慣れた場所である。
2017だと4年前になるのに3年前と記しているのは、2017年の1年後に限定公開していた時があり、その際にも立ち寄っているからだ。
(3年前の記事は→こちら)
旧飯田駅だ
久しぶりにやってきた。
壁に書かれた作品名も以前と変わりがない。
変わっていたのはこの案内板の色
34番だ。
2017のときは黄色だったこれも、今回は緑になっている。
作品の特色として「黄色」が際立っているので、個人的に前回の案内板のほうがしっくり来たりする。
はい、このとおり「黄色」がいっぱい
このあたりも基本的に変わっていない。
ペンキで塗ったと思うのだけど、よく色が落ちずに残っているなと、3回めにもなるとそんな感想が湧いてくる。
順路と書かれた駅舎の中がさらに黄色
一度来たことがある方には説明不要かもしれないが、ここからがやりすぎ度が強い。
ある意味、狂気の「黄色」が待っている。
小さな忘れ物たちがみんな黄色
この旧飯田駅に忘れられたものがイエローに染まっている。
作者の河口龍夫さんは別の作品で舟をイエローに染めていたりもするので、そういった作風、もしくはイメージカラーのようなものなのかもしれない。
そしてこの部屋
忘れものだけではなく部屋の壁も床も畳まで真っ黄色。
シンクも冷蔵庫も
棚の中も
ストーブまで
イエローだ。
何度来て見ても目に優しくないイエロー一色で、もうここまで来ると狂気のように思えてならなくなった。
でも傘に書かれたこういうのを発見すると…
なんかホッとするし、ほっこりする。
まれに見つけたりするこういった文字。
何を意味しているのか考えると、これはこれでミステリーであったりもするので、ホッとするのも束の間だったりする。
切符売り場の隅に置かれた黄色のポーチがちょっとニクイ
黄色一色かと思いきやこういう使い方もする。
このメリハリ、何事にもメリハリが大事ですよと教えられているようだ。
個人的にはこの「予備」の文字も気になりましたが
塗られていない傘も脇に置かれていた。
これもまた謎な感じがするけど、「予備」の意味は外に出るとそれとなくわかる。
変わらないけど変えられるもの
作品は黄色メインのこの室内だけではない。
外のプラットホームにも忘れ物美術館は続いている。
ホームへ
階段に、やはり忘れ物と思われる傘が突き刺さって立てられている。
「予備」と書かれてあった傘たちはこれ用の予備だと思われる。
外にあると雨風や人が触れたことで折れたりしてしまうからね。
ホーム到着
はて、3年前と比べるとホームの屋根のトタンが剥がされて骨だけになっている気が…
あとで昔の写真を確認してみたところ、3年前にはこんなむき出しではなかった。
おそらく劣化していたので、安全のために外したのだと思う。
4年前の作品で変わず残されているようで、ちょっとずつ変わっているところもあるようなのだ。
そして、「変わる」といえば線路に停められている貨物車だろう。
4年前にも3年前にももちろんあったこの貨物車。
この作品の、狂気の黄色以上に自分が気に入っている場所がこの貨物車の中だったりする。
入ってみると内壁一面が黒板に
色々と書かれてある。
チョークや黒板消しもあった。
鑑賞者が書き込めるのだ
「忘れたくない言葉」や「未来に残したい言葉」を書いてください。
と、ある。
鑑賞者も参加できる作品って、たまりません。ほんと、好き。
当然、4年前にも3年前にも自分は書き込んでいる。
もちろん今回も
10月2日「ただいま」だ。
感想
「小さい忘れもの美術館」は2017の作品なので、計3回も見に来た自分にとって作品そのものへの新鮮な感動はあまりない。
相変わらずすごい黄色だなと、インパクトはあるものの、どこか懐かしさが先行してしまう。
昔、駅なんかには黒板で出来た掲示板なんてものが置かれていたところもあったが、貨物車の中の黒板への書き込みも、そんな懐古的な感傷に浸れるような装置であるとも思う。
ただ、書き込むことで何度も新鮮な気持ちになったりもしている。
単に懐かしいだけではなく、過去と未来が混在している作品なんだと3回めにして噛み締めた次第である。
なにはともあれ、3年前の有言実行ができてよかった(また見に来れてよかった)。
自分はこの書き込みをしにここに戻ってきたのだなとの感慨があった。