珠洲市で50日間に渡って開催されている奥能登国際芸術祭2017へ2回足を運んだ自分。その2回目の様子を記す記事シリーズその6だ。
今回は、前回から再び飛んで大谷エリアの作品を二つ紹介したいと思う。
公開時間後に大谷エリアへ
前回、若山エリアの上黒丸地区の34番の作品を見に行った様子を記した際にも書いたように、34番を鑑賞し終えたところで芸術祭の公開時間の終わりである17時をまわっていた。
この時点で「のんびりまわる第二日目」も終わりなるところである。ところが、芸術祭も二回目の訪問となると色々と知恵がつくもので、この日は公開時間が終わった後でも見に行けるスポットを聞き出して巡ることにしたのだった。
教えてくれたのは前回でも記した「ラポルトすず」にいたインフォメーションのお姉さんだ。
その情報から辿り着いたのが大谷エリアであった。
大谷エリアは作品番号で言うと1番、2番、3番がある。
そのうち公開時間終了後にも見に行けるスポットが3番、そして一部であるが見れてスタンプも押せる2番であった。
日没前に見に行った2番と3番、ついでに近くにあった広域展示している37番の4つめの作品も併せて紹介したいと思う。
なお、大谷エリアは珠洲市の北の方にあり、作品のほとんどは海岸沿いにある。
2番 村尾かずこ「サザエハウス」
「サザエハウス」、実は奥能登国際芸術祭が始まる前から制作している様子を新聞に取り上げられていた。
その記事を読んだ自分は「奇特なことをしているな」と思った。そして、この芸術祭に足を運びたいと強く思ったものである。言ってしまうと、自分と奥能登国際芸術祭をつなぐきっかけとなった作品である。
公開時間が終わった後だというのに、この日のうちにやっぱり見ようと無理矢理のように足を運んだのもそんな特別な気持からである。
海の直ぐ側にあった
駐車場は少し離れているので、遅い人では5分ほど歩いて到着する。
見ての通り海辺だ。近くには海水を汲み上げて塩を作っている塩田があった。
受付には誰もいなかった
ハウスの前にテントが設置され、その下に受付があったが、誰もいなかった。
そこに貼られた案内によればサザエの殻25000個で装飾された家のようだ。
なお、公開時間内なら中にも入れる。この情報はラポルトすずのインフォメーションのお姉さんからも聞いていた。いまの時間では入れないとわかっていてもそれでも来たくなって足を運んでいる。
2番だ
公開終了時間で受付には誰もいないが、鑑賞パスポート用のスタンプはこの黄色の案内に吊るされているのでいつでも押せる。
中には入れないので、今回は外からの鑑賞となる。
もう見えていると思うが、建物の壁面にサザエの殻が埋め込まれているのだ。
これがサザエハウスだ(磯野家ではない)
人が写ってしまっている。実は公開時間が終了しているのに自分と同じように見に来てスタンプを押している人が何人もいた。みな、考えることは同じだ。
別の角度から
サザエが壁一面びっしりと隙間なく埋め込まれているというわけではなく、柄のように使用されている。
その分、このハウスがサザエによって少しずつ侵食されているようにも見える。
サザエがいっぱいだ
まだ生きているようにも見えてくる。生きたサザエが壁にへばりついていると想像するとちょっとホラーだ。
いや…
というか…
かなりホラーだ
このように見る人によっては生理的に受け付けないであろう装飾のされ方もしていた。
自分以外のお客さんの中には、こういう「いっぱいいる系」が苦手な人(男)がいたようで、かなり気色悪がっていた。そしてそれをからかう恋人であろう人(女)がいて、やり取りを見ていた自分としては可笑しかった。
これは自分の持論だが、ホラーって案外笑えるものですよ。
中には入れないので窓から様子を覗き込もうとした
どうにかして見えないだろうかとあれこれ角度を変えて窓を覗き込んでいたのだが、写真のように中がどうなっているのか、なんとなくイメージはできるもののハッキリとはわからなかった。
中の確認は再び芸術祭に足を運んだ時の宿題にしたい。
改めて海をバックにハウス全体を撮る
公開時間外であったのでたしかに中に入ることはできなかったが、夕方に訪れた分、日没間際の赤く色づいた空をバックにこのサザエハウスを撮ることが出来た。
その点は時間外でなければ難しいことなので、そこを考えると来た甲斐があったと思っている。
奥能登国際芸術祭の作品の中には、このように公開時間外でも味わい深く鑑賞できる作品がいくつもあることを感じていただければ自分としても幸いだ。
3番 深澤孝史「神話の続き」
続いては3番だ
こちらは海岸沿いというか、写真の崖を階段で下りて海岸に出たところに作品がある。
こちらもセルフでスタンプを押せる
3番の作品名は「神話の続き」だ。が、作品にはもう一つ名前があった。
その名は「環波神社」(かんなみじんじゃ)である。ここ、神社になっているようなのだ。
眼下に鳥居が見えた
拝殿はないようだ。
崖の上には神社の由来が書かれた看板もあり、それによると海境(「うなさか」=水平線の向こう)自体が本殿になるそうだ。
降りる
おりなければ始まらないので降りた。
人が一人通れるくらいの幅の階段だった。
階段を降りたところで参拝方法
鳥居の前で一礼してくぐって、海に向かって二礼二拍手一礼。
一般的な神社のそれと同じだ。
「神話の続き」こと環波神社だ
磯辺にあるからか鳥居も凸凹としている。
何で出来ているかと言えば…
漂流物でできている
漂着廃棄物だ。
この環波神社は海と漂着物を信仰する神社なのだそうだ。
海境(水平線の向こう)自体が本殿なら、漂着廃棄物そのものが御神体だ。
この漂着物、白く塗ったものだと思っていたら白い漂着廃棄物だけを選んで使っているそうだ。
鳥居の扁額(へんがく)も漂流物
漁業や農業用に使うプラスチックのカゴだ。
これは上手いなと思う。
しめ縄も…延縄(はえなわ)だろうか
端から端まで漂着物だ。
そんな鳥居の前で一礼してくぐって本殿へ向かう。
本殿だ
本当にきちんと二礼二拍手一礼をしてきた。
日が沈み始めていたときだったので、空のピンクがキレイだった。
こちらもまた、夕暮れ時だからこそ見れる景色だろう。
昼間は昼間で空が青くて気持ちのいい空であったと思うが、漂着廃棄物から人類の黄昏を想うなら、この夕暮れ時がもっとも合うような気もしてくる。この時間にやってきた自分としてはそう思いたい。
37番 アレクサンドル・コンスタンチーノフ「珠洲海道五十三次」
環波神社こと3番から少し歩くと広域展示されている37番の作品もあった。
37番はすべてで4つあるようで、自分にとってはこれで4つめ、つまり最後の37番となる。
最後の37番
こちらも鑑賞パスポート用のスタンプはこの黄色の案内に吊るされている。
誰かがそのスタンプを案内の白地に試し押している。
スタンプって上下どっちかわからないときがあるので、気持ちはわからないでもない。
最後は笹波口のバス停だった
今更だが、37番はすべてバス停をアルミパイプで覆った作品であった。
その姿
この笹波口バス停のものはアルミパイプの使い方が素直であった。
等間隔に横に走るボーダーデザインだ。
植物のモチーフというか植物
4つの中でもここだけは植物が巻かれていた。
振り返ってみると、同じようにアルミパイプを使って一見同じようなデザインをしていながらどれも微妙に違う作品だった。
この作品は、奥能登国際芸術祭が終了するとすべて撤去されるのだろうか?
古くなったバス停がせっかくモダンになって目立つようになったのだ、終わったらまた元の姿というのも少し寂しい気もする。
取り外すにしても、何か名残のようなものをそれぞれのバス停に残していってくれないだろうかと、ふと思う。一年後、数年後に珠洲市に訪れた時に「奥能登国際芸術祭2017」をあの頃まわったんだと懐かしむことができるのではと、そう思うのだ。
感想
以上、第二日目の公開時間終了後に見にいった大谷エリアの作品たちだ。
どれも夕日と相性のいい展示であったので、正直この時間に行けて良かったと思っている。
珠洲市は禄剛埼から西の方角の北側でなければ海へと沈んでいく夕日が見れない。
この日最後にこの北側の作品が残っていたことが、自分としても運が良かった。もしあのとき炙りBarを見に引き返していなかったら、昼間のうちに見終えてしまっていたかもしれないのだ。
まったく計算せずにすべて思いつきで行動した結果であったので、これも運命みたいなものなのだろうと思う。
「のんびり」っていうのは運命に無理に抗わないってことなのかもしれない。今回のエリアで、ふとそんなことも考えた。
3番の駐車場にて(少し斜めになったが)
少し待つと空がいい色になってきたのでシャッターを切った写真だ。
同じように夕日の写真を撮っていたご年配の方と少し話しながら待って撮った。
その方から名刺ももらうと、フォトライブラリーという職種の人で、肩書には「石川県観光スペシャルガイド」と書かれてあった。羽咋の人でもあり、秋祭りの「獅子殺し」の話も聞けたので有意義だった。
のんびりまわると、こういう出会いもある。
第二日目にてスタンプを押せたスポットは今回記した大谷エリアの2番、3番、37番で最後だった。そのため、自分の心の中ではこの3番の駐車場をセーブポイントとした。
まだすべてをまわりきっていないので、第三日目があるならここから再開したい。
ただ、第二日目の記事もう一回ある。
次回は、「宿題」というかおまけというか、夜に立ち寄ったスポットがあるので、それらを簡単にまとめたいと思う。