あれは神社から始まった。
なにか撮れないだろうかと漠然と山の方へと歩いて行くと、その途中で「日吉神社」と記された石造の鳥居が見えた。境内に屹立(きつりつ)する樹木のせいだろう、鳥居の奥が、そこだけ皐月の晴天に似合わず薄暗かった。妖しさすら覚えるその薄闇に惹かれて鳥居をくぐると…
馬がいた。
狗(いぬ)もいた。
龍もいた。
そこが、小さくファンタジーな動物園に、思えた…
ちなみに自分の干支である「未(ひつじ)」は、残念ながら、いなかった…
自分は、思わずため息をついた。
しかし、吐息の先で目にした、薄闇の奥で陽のもとに立つ一本の小さな石柱が…
神々しく見えた…
そこには確かな希望があった…
露出をマイナスに補正して、遠くの明るい被写体にフォーカスすると、手前の方だけ上手く暗くなってくれることを、自分は、学んだ…
神社は、語らぬ賢者だと、思い知った…
そして自分は、このNHKのドキュメンタリー番組のような語り口に… 疲れた…
とまあ…
遊歩道へ向かう途中に神社があったので、ここでも何か撮れないかと、数撃ちゃ当たるの甘~い考えで、バシャバシャと撮りまくっておりました。
そこから住宅地を抜け、坂を登って遊歩道に出たわけですが、その甘~い考えは、基本的に変わりませんので、あしからず。
いえ、これも練習です。
遊歩道から遠くを望むと山が見えます。
この土地が改めて…
田舎だと思いました
それがいいんですけどね。
遊歩道は傍らに用水があり、遊歩道そのものがそれをなぞるように作らています。
そのため小さな橋がいくつかあった
必然的に水の流れを目にし、必然的にそういった写真ばかりを撮ることに。
個人的に用水の湾曲している箇所が好み
寄って野草(名前はわかりません)にもフォーカス
さらに寄って…
寄り過ぎた…
水の流れに逆らう形、つまり川でいうと川上の方へ向かってレンズを向け、ファインダーを覗いていると、不思議とその迫り来る水の流れに引き込まれそうになった。
寄れば寄るほど流れが力強く見えるのだ。
こうして流れに逆らうように用水を追いかけていると、そのうち…
浄水場に迷い込んだ
いえ、「迷い込んだ」は嘘です。
眼下にそれらしきものを見つけて、興味本位で向かってました。
それにしても庭園がキレイな浄水場でした
門の前に立ち、敷地の外から中の庭園を眺めていると、ちょうど遠くに案内人の方がいて、
「中に入っていいですよ」と招いてくれた。
どうやら年末年始以外、基本的に開いていて、いつでも見学できるようだ。
中に入って寄ってみると「角」が美しかった
曲線も好みだが、角度次第では「角」もいい。
噴水もあった
パワーゲイザーと言って通じる人は格ゲーマーだ。
東屋もあった
毒キノコのような見た目だが、一節ではその傘が噴水の水よけにもなったとか。
このそびえ立つ植物は何なんでしょうか…?
見ようによっては天狗のお面にも見える…
涼める場所もあり
想像以上に綺麗な場所だった。
案内人、動く
こう、庭園を撮っていると、先ほど自分を庭園へて招き入れてくれた案内の人が話しかけてきた。
それまで、先に見学していた別の方にずっと説明していたようだったが、その人がどうやら帰ったようだった。
その案内人の方は60歳は過ぎているであろうお爺さんだった。
案内人とすぐにわかったのは、そう書かれたゼッケンのようなものをつけていたからだ。
話しかけられたと思うと、案内人の方は庭園ではなく浄水場、中でもろ過の説明を始めた。
この末浄水場には「緩速系」と「急速系」2系統のろ過装置があるそうで、「緩速系」は県内でも珍しいものらしい。
これがその「緩速ろ過施設」
急速ろ過は凝集剤を使ってゴミを塊(「フロック」という)にして沈殿池に沈めるのだが、緩速ろ過では凝集剤を使わずにゴミや砂を沈殿池に沈めていくそうだ。
両方とも沈殿池から「ろ過池」に水を移してろ過させるのだが、緩速ろ過ではゆっくり時間をかけてろ過していくらしい。
急速系だと8時間くらいで済むが、緩速系だと一日半かかるのだとか。
ろ過池の表面に溜まった汚砂は人力で削りとって積み上げていくとのこと
かなり大変そうだ。
しかも、この緩速系施設、国の登録有形文化財に登録されています。
看板にもこのとおり
おまけに、施設内の庭園を含めると国指定名勝とされています。
やはり看板にしっかりと
勉強になりました…
ちなみに、緩速系と急速系とではどちらの水が美味しいですかとその案内人に訊ねたところ、
「緩速ろ過の方だと思っている」
と答えてくれました。
さて、植物を撮りに入ったはずなのに、あれよあれよと簡易でマンツーマンの浄水場のお勉強会のようになってしまった。
こういう話を聞くことは個人的に大好きなので問題ないが、この予期しなかった展開には、「迷い込んだ」との表現で正解だと思った。