初心の趣

カメラ初心者の石川県人が同県を中心に地方の変わった魅力を紹介しています

能登立国1300年の記念印付き御朱印を求めて妙成寺を歩く

今年は能登立国1300年だそうで、それに合わせて羽咋市の妙成寺と輪島市總持寺祖院では御朱印に1300年の記念印も押して貰えるそうだ。

その話を聞いてこの機会に妙成寺に一度行ってみたいと思ったので足を運んでみた。

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羽咋市にある妙成寺へ初めていく

のと里山海道を走っていると羽咋市内で目にする「妙成寺まで〇〇km」という案内。

同じ羽咋市では気多大社はよく行くのに妙成寺には一度も行ったことがなかった。

能登立国1300年にあわせ御朱印に記念印が押されるというニュースは良いきっかけであり、御朱印目当てというライトな気持ちで一度お参りしに行くことを決めた。

本当は冬に行こうと考えていたのだが、大雪のせいでなかなか遠出ができず、雪がほとんど溶けてしまった3月に入ってから行ってきたのだった。

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金榮山 妙成寺だ

羽咋市滝谷町にある。

日蓮宗のお寺で、日蓮宗の北陸本山なんだとか。

五重塔で有名なところだ。

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顔を上げると早くも見える五重塔

この写真は駐車場から撮っている。

妙成寺の境内に入るには拝観料として大人一人500円かかるので、ここからだと無料で五重塔をおがめるわけだ。

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坂を登った先に受付がある

拝観料をここでおさめ、また御朱印の受付もここでしてもらえる。

御朱印を書いてもらうのに時間がかかるので、入る時に御朱印帳を手渡すことで先に拝観することが可能だ。

帰り際に御朱印を受け取ることが出来るというわけだ。

 

妙成寺を歩く

御朱印が目的というライトな気持ちで拝観しに来たわけであるが、いざ境内を回ってみると、天気がいいのと静謐なのとで気がつけばじっくりしっかり、謹んでお参りしていた。

こう謹んでお参りすることを「奉拝」(ほうはい)と言う。

じっくりしっかり謹んで写真にも収めてきたので、順に紹介したい。

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受付前を通り過ぎた後の広場

池のある庭園のようになっている。

正面左にはニ王門が見え、その背後に五重塔があり、その角(相輪)も見えている。

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天気がいいと水の動きがきれい

まだ雪吊りも残る春前だったが、参拝者が少ないとのんびり眺めていられるところであった。

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水といえば広場すぐ左手に「浄行堂」がある

受付でもらったリーフレットの、順路が描かれた地図によると最初に立ち寄るのがここだ。

中には浄行菩薩像もいた。

古来よりこの菩薩に水を注いでたわしでこすって願いをかけていたそうだ。

自分はとりあえず手水のように手を清め、合掌してきた。

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小銭も清めてきた

境内には各スポットごとにこのように浄財箱が設置されている。

それを目にする度、小銭を入れてしまっていた。といっても1円とか5円とか、多くて10円とかほんと小銭であるが。

こうして気持ちも財布の中も一度清めたところで二王門をくぐった。

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こちらが二王門

二王が安置されているからそう呼ばれているが、いわゆる「楼門」だ。

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二王が

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おりました

仁王像を見るとGANTZを思い出してしまう。

今にも動きそうなこれらは寛永二年(1625年)に造立されたものらしい。

口を開けている一体目が阿形(あがた)、口を閉じている二体目が吽形(うんがた)だ。

阿形が金剛像、吽形が那羅金剛像というそうだ。

これら仁王に睨まれながら門の中より五重塔も拝める。

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ど~んと五重塔

門の内側からだとこうして下から見上げるように五重塔がいる。

さすがにでかく、目にした瞬間圧倒されるものがあった。

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近くには日像(にちぞう)聖人の像

妙成寺は日蓮の弟子にあたる日像が開山、その日像によって改宗した満蔵法印(日乗聖人)が第二祖として建立されたのだそうだ。

こちらの像も今にも動き出しそうで、夜だと肝試しが苦手な人にはちょっと怖いかもしれない。

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お墓も普通にある

二王門をくぐって左手に開山堂というものがあり、その周りには普通にお墓が並んでいる。

こちらも肝試しとして夜に来ると苦手な人には駄目だろうが(そもそも夜に入れるか不明)、昼間に天気のいい日に来ると木漏れ日がきれいだったりする。

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すぐ側の經堂

格闘ゲームのステージにありそうな古寺のような堂だ。

この中に北陸地方最古の法華経版木があるらしい。

外から中を窺うとなんか人形が見えたけど。

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改めて五重塔

順路のとおり進んでくると、ここで改めて五重塔の真下にやって来る。

前田家御用大工の「坂上越後守嘉明」を棟梁とした元和四年(1618年)建立されたものだそうで、北陸では唯一の木像の五重塔だそうだ。

その屋根がまた特徴的で「栩葺きの屋根」(とちぶきのやね)だ。これは五重塔としては全国でも唯一とのこと。

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ちなみに栩葺きの屋根とはこんなもの

御朱印帳を預けた受付(法喜堂と書かれた建物)にこの模型が置かれている。

瓦ではないのだ。栩葺きの他には本堂などに使用されている「杮葺の屋根」(こけらぶきのやね)の模型も置かれていた。

そんな屋根を持つ五重塔の総高は34.18メートル(露盤下迄の高さは27.27メートル)ある。

足元から見上げるとやっぱり高く、上の方がどうなっているのか角度の問題で見えないのでその屋根も見づらい。というか見えない。

全体を見て楽しむなら遠くからのほうが良いのだろうが、近ければ近いで近いからこそ見れるものもある。

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扉の装飾もその一つ

なんだろうか、物語のワンシーンのようなものが彫られていた。

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別の扉にはこんなものも彫られていた

右下のものが逆さ狛犬のように見えたのは自分が狛犬好きだからだろうか?

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順路の案内板

五重塔の次は、受付から見ると境内の一番右奥に位置する「丈六堂」だ。

釈迦牟尼仏を奉安してあることから釈迦堂とも呼ばれている。

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こちらが丈六堂

屋根を見ると瓦がない。こちらは杮葺(こけらぶき)だ。

丈六堂は一丈六尺(約4.8メートル)の釈迦牟尼仏がいることからそう呼ばれている。

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中の釈迦牟尼仏を撮影

両脇には多聞天毘沙門天)と持国天と思われる像がいるんだけど、釈迦牟尼仏はそれらより倍近くでかくてキレイにフレーム内に収まってくれない。

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釈迦牟尼仏だけ撮影

やはりデカい。

圧倒されるものがあったのでひとまず合掌だ。

自分は仏を前に合掌する時いつも「色即是空」と心の中で唱えてしまう。

宗派によっては間違っているのかも知れないけど、合掌しててもマイペースなので許していただきたい。

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個人的に毘沙門天が好きなのでそれだけ撮影

釈迦より毘沙門天が好き、といった構図だ。

おそらく罰当たりなことをしているのだろうが、それも許してもらいたい。

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バチがあたってこうならないように気をつけたい

毘沙門天の足元で踏みつけられている邪鬼だ。

マッスル・インフェルノよりエグい技だ、なんて思ってしまうのだから自分は釈迦に叱られそうだ。

ちなみにこの釈迦堂の傍らには…

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閻魔堂もある

ひっそりとある。

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中には閻魔さまもいる

なんか可愛らしいなと思った自分…裁かれそうだ。

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その浄財箱には狛犬がいた

二体、ちょこんといた。

ますます可愛いと思う… 地獄行きだけは勘弁していただきたい。

それにしても寺の境内に狛犬だ。

珍しいなと思っていたら…

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順路を進むと鳥居もあった

社は「三十番神堂」と呼ばれるもので、内陣に日本の国神三十体を祭祀しているそうだ。国指定重要文化財でもある。

この正面に三十番神堂の拝殿もあり、そこから見たこの堂舎の景色がまた撮り甲斐あった。

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拝殿より撮影

昇殿は出来ないのでその一歩手前より撮っている。

奥が窓のようになっているので、このように三十番神堂の鳥居と堂舎を、壁にかけた4Kテレビの様に眺めることが出来た。

カメラが上手い人ならもっとキレイに撮れると思われる。

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こちらは妙成寺の本堂

加賀藩三代藩主前田利常公の帰依によって前田家御用大工坂上又三郎を棟梁として建立されたものだそうだ。

妙成寺の建物のほとんどは加賀藩前田家初代から五代に亘って造営されたもので、特に利常公は生母である寿福院の菩提所としてこの本堂、さらに祖師堂、五重塔などを建立している。

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そんなもので香炉にも前田家の家紋

加賀梅鉢が中央に描かれている。もちろんこの香炉以外でもこの家紋をいくつも見かけた。

今回能登立国1300年を記念した御朱印を輪島の總持寺祖院と一緒に企画したのも共に前田家とゆかりのある寺であるからだ。

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個人的にはこの香炉の上の狛犬に惹かれる

一体しかいないがこの凛々しい表情、たくましい体つきがCOOLだ。

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お参り前に鐘も鳴らす

鐘なのか銅鑼なのかよくわからないが鳴らした。

夕暮れ時に遠くから聞こえる町中の寺の梵鐘の響きのように音が優しかった。

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中にも加賀梅鉢がうかがえる

中央にいる像は寿福院だろうか?

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こちらは祖師堂

本堂と渡り廊下で繋がっている祖師堂だ。

中には日蓮大菩薩の尊像が安置されている。

上部の欄間の緑色を使ったデザインがちょっと日光東照宮っぽい。

前田利常の正室徳川家康の孫にあたる珠姫なので、その縁だろうか。

ちなみに本堂もこの祖師堂も国指定重要文化財だ。

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さらに境内には庭園もある

石川県文化財でもある名勝庭園だ。

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中に入っていくと書院も見える

この書院に許可なく上がる事はできないが、この縁側から眺める五重塔が情緒ある。

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庭からの五重塔

庭の雪吊りたちとツンツンツンですな。

自分が撮るとこんな写真になってしまった。

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さらに境内を歩くと日時計もある

西欧中世、スペイン製だそうだ。

見づらいけれど11時は回っている。

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最後に庫裡にも立ち寄る

こちらは妙成寺の中でも最古の建物で、前田家の外護以前より存在していたそうだ。

こちらも許可なく上がることはできないが、中に置かれている衝立の佇まいが静謐であった。

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「龍」の文字

越後の龍・上杉謙信を思い出したのは自分だけだろうか?(自分がただ単に上杉謙信好きであるだけだが)

そういえば謙信も能登を治めていた頃がありましたな。

まあ実際の処、どうして「龍」なのか自分にはよくわからない。

わからないけれど、とても胸に残る一字であった。

 

寺の駅で白玉ぜんざいを食べる

境内前には寺の駅なる売店もあり、そこで軽食やお茶を頂いて一服することも出来る。

この妙成寺では甘酒が有名らしいのだが、白玉ぜんざいも知られているという。

なんでも作家の五木寛之氏がBSテレビの『百寺巡礼』で紹介したそうだ。

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こちらが寺の駅「寿福」

駐車場のすぐとなりにある。

前田利常の母が法華経を強く信仰され、妙成寺の伽羅の整備にも尽力されたのだとか。

寿福はその寿福院の名からとっているそうだ。

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あまり関係ないけどカウンターにはリアルな狸の置物があった

剥製だろうか? リアルすぎなので撮らせてもらった。

メニューを見るとうどんやおむすびなどもあった。甘酒やコーヒー、お抹茶セットや宝達葛湯なんてものもある。

アルコールが入っていない甘酒にも惹かれたけど…

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自分は白玉ぜんざいを頼んだ

塩昆布付きで500円だ。

名物よりもスイーツを選んでしまった。

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いただきます

白玉、やわらかい。

口の中でやさしく溶けるような食感だ。

甘さもきつくなく、口の中でふわっと広がる。

ときどき塩昆布を口にするとその甘味が一瞬際立つので面白い。

美味でした。

 

能登立国1300年記念の御朱印

最後に肝心の御朱印の写真も上げたい。

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こちらがその御朱印

すんごい達筆だ。

中央に書かれてあるのは寺の名前ではなく久遠実成のお題目だ。

『南妙法蓮華経』と書かれてあるのだ。

このあたりが神社の御朱印と違う。

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こちらが能登立国千三百年の記念印

五重塔も描かれている。

画になる建物だ。

寺の駅の店の方々(おばちゃんたち)が親切で、カメラを持っている自分にこの妙成寺で行われるカメラのイベントをいろいろ教えてくれ、地元のカメラマン、カメラ愛好家が撮った写真なども見せてくれたのだが、それらを見ているとこの妙成寺は五重塔を筆頭にフォトジェニックな場所なんだなと思えてきた。

季節によって花も咲くし祭りもある。夜に撮影された五重塔もキレイだった。(ちゃんと許可が必要だと思うけど、夜にも境内に入れるみたい)

御朱印目当てでこの度足を運んだので、まるで御朱印をスタンプラリーか何かと軽く見ているように思われるかも知れない。

それでも御朱印によって妙成寺というものを知り、フォトジェニックを含めこの寺の魅力を少しでも理解できたことを考えるとその「御朱印目当て」というのもまんざら悪いことではないような気もしてきた。

正直を言うと、ちゃんと写経とかしないといけないのかなとも考えていた。受付で御朱印を頼む際に、そういう注文もなく300円を払うだけで(もちろんお参りはしている)もらえたことを鑑みると、お寺側としても許容していることなのだろう。

御朱印や記念印が足を運ぶ「きっかけ」になっていることは確かなのだ。

自分としても、また季節が変わった頃にお参りに来たい、写真を撮りに来たいと思った。

こんな調子で、同じく能登立国1300年の記念印がある輪島の總持寺祖院にも足を運ぶだろう。

寺の御朱印をナメるなと叱られるかもしれないが、それもまた仏の慈悲で許してもらいたい。